コロナ自粛により旅行にも行けなくなってしまい、日本地図帳を買い求めて、「仮想旅」をしています。そこで改めて気づいたことは、地名の読みは難しい(だから、おもしろい)ということです。現在、日本全国の市町村は1,718ありますが、このうち市は792あります。最も市の数が多い埼玉県の40から、最も少ない鳥取県の4までばらつきもありますが、地元の人なら難なく読めても、そこに縁のない人にとっては、「……?」という市名もあると思います。
そこで、全国を「北海道・東北」「関東」「中部」「関西」「中国・四国」「九州」のブロックに分けて、各都道府県から、読みにくいと思われる市名を一つずつ取り上げます。普段の生活では自分にかかわりがない場所であっても、今後、ビジネスや旅行などでかかわる可能性はあります。そんな機会が到来した時に、さらっと読めると素敵ですよ。第1回は、「北海道・東北」ブロックからの出題です。
1.「留萌市」(北海道)
正解は「るもい市」です。北海道北西部の日本海に面した市で、水産加工が基幹です。ここに限らず、北海道の地名は札幌をはじめとして、アイヌ語由来のものが多く、読みも一筋縄ではゆかぬものが多いですよね。留萌は、アイヌ語の「ルルモッペ(汐が奥深く入る川)」から。
2.「八戸市」(青森県)
正解は「はちのへ市」です。太平洋に臨む青森県南東部に位置し、三陸北端の重要な漁港です。岩手県から青森県にかけては「一~九」の漢数字に「戸(へ)」が付く地名が連続していますが、かつての「糠部郡(ぬかのぶぐん)」と呼ばれていたこの地域地名が残ったと考えられているそうです。
3.「八幡平市」(岩手県)
正解は「はちまんたい市」です。岩手県北西部の市で、南部に岩手山があり、農業・観光業が基幹です。青森・秋田・岩手の三県にまたがる「十和田八幡平国立公園」を知っていれば読めそうですが、「はちまん」「やわた」か、「たい」「たいら」「へい」か。ちょっと迷いませんか。
4.「登米市」(宮城県)
正解は「とめ市」です。宮城県の北東部に位置する市で、市北部は岩手県と接しています。平成17年に合併によって誕生した市ですが、この合併町村の一つ「登米町」は、実は「とめ」ではなく「とよま」と読むそうです。
5.「男鹿市」(秋田県)
正解は「おが市」です。秋田県西部に位置し、日本海に突出する男鹿半島のほぼ全域を占める市です。この市名のもとである「男鹿半島」自体を、「おが」でなく「おじか」と間違いやすいのですが、宮城県に「牡鹿(おじか)半島」というのがあるので、ここと混同しやすいのではないかと思います。秋田県と言えば、「ナマハゲ」が有名ですが、その本拠地(?)は、ここ男鹿市です。
6.「寒河江市」(山形県)
正解は「さがえ市」です。山形県のほぼ中央に位置し、県庁所在地の山形市からは20キロメートル圏内。最上川と寒河江川が市を包むように流れ、豊かな自然環境に恵まれた市です。「寒河江」の名は、移住者の元の居住地「寒川」「相模」との関連が指摘されているそうですが、日本一の「さくらんぼ栽培」地としても知られます。
7.「伊達市」(福島県)
正解は「だて市」です。福島県北東部に位置し、県庁所在地の福島市の東側にあたります。平成18年に合併により誕生した日本に二つある同一市名の一つ(もう一つは東京都と広島県にある「府中市」)で、北海道にも「伊達市」がありますが、どちらも戦国武将の伊達政宗で知られる「伊達氏」に由来します。ちなみに、「伊達」は、本来「いだて」と読まれていたものが、「い」音の脱落により「だて」と読まれるようになったということです。
いかがでしたか?今回の「北海道・東北」ブロックは、すべて常用漢字の範囲内でしたが、ほとんどが「表外読み」ですので、地理や歴史の予備知識がないと、そう簡単には読めなかったかもしれません。なお、各問の解説文作成にあたっては、該当各市のHPも閲覧させていただきました。次回は「関東」ブロックです。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「旅に出たくなる地図 日本」(帝国書院)
文/田舎教師 構成/CLASSY.ONLINE編集室