おうち時間も増えた昨今、映画デートを自宅で楽しむカップルが増えましたよね。今回の【大人女子のための映画塾】では、カップルで観るのはあまりお勧めしない名作を、映画ソムリエであるライターがナビゲートします。どの作品もAmazonで視聴可能です。ロマンチックなラブロマンスを想像させるパッケージに、くれぐれも要注意してくださいね。
1.ブルーバレンタイン
後味の悪さでは、“もはや鬼畜ぶりピカイチ”の傑作
なぜタイトルにバレンタインなんて入っているのでしょうか?ひと組のカップルが運命的に出会い、ラブラブ絶頂期を迎え結婚するまでと、彼らの冷え切った現在をミルフィーユ構造で交互に描くという、“もはや鬼畜ぶりピカイチ”の傑作です。結婚7年目の夫婦の関係は冷え切っていて、とにかく言い争いが多く、ほとんどのシーンで喧嘩。興醒めで目を覆いたくなります。以前、某映画サイトの後味の悪い映画特集に選出されていますし、事件は一切起きないのにトラウマ映画とも名高いです。
しかしながら、とてつもなく勉強になる学びが隠れています。「男は女に変わらないことを願い、結婚する。女は男に変わって欲しいと願って結婚する」この映画から伝わるのは、相入れない男女の性質。女は現実的で男性の方がロマンチストなんですよね。これを充分に理解しておくことで、大事なものを見失わずに済むかもしれません。名作なので、お1人でどうぞ。
2.愛アムール
家族にいつか起こる介護の問題だからこそリアルで重い気持ちに
愛する人の死を見届けることは終わりなのでしょうか?それとも、ひとつの愛の完成系なのでしょうか?やはり、こちらも重い傑作です。カンヌ国際映画祭で最高賞にあたるパルムドールを受賞した、フランスの老夫婦が介護や病と向き合います。愛、アムール。どこぞやの歌謡曲にありそうなタイトルの作品ですが、本作は気軽に観れるものではなく、観るには覚悟を要します。誰にも訪れる老いや死がテーマでこの問題はいずれ、家族に、そして自分にも起こるだからこそ、リアルに想像を巡らせるだけで重い気持ちに。しかも介護の描写がうんざりするほどリアル。パリのアパルトマンが舞台ですが、キュートな老夫婦のキッチュなライフスタイルのお話ではありません。
「衝撃のラスト」とは、ミステリーやサスペンス映画におなじみのうたい文句ですが、本作も該当します。かつては凛としていた女性だったのに、現在は完全に介護を受ける女性となり我が子を誰かもわからなくなっていく妻アンヌを演じたエマニュエル・リヴァは、史上最年長でアカデミー賞主演女優賞にもノミネートされました。
3.レボリューショナリーロード
結婚生活の暗部をかき集めた、デート映画に選んだカップルを奈落の底に突き落とす
公開時、タイタニックのケイト・ウィンスレットとレオナルド・ディカプリオの11年ぶり再共演という安心感から、デートムービーに選んでしまったアベックたちを、奈落の底に突き落としたことで有名なレボリューショナリーロード。現実と理想の狭間でもがくカップルの運命を、アメリカンドリームの終わりと共に綴るラブ・ストーリー。いわば、結婚生活の暗部をかき集めたような作品なので将来を考えているカップルを見るとあまりにも重いです。
特におすすめしないのは、自分は一般人とは違った特別な存在だ、と考えているどことなくアーティスティックはカップル。「俺たちは普通の人たちとは違うんだ」と思い込んでいる人間の、浅はかさと不気味さが浮き彫りにされていて、そんな人間自体が俗物のように目に写ります。でも男女が長続きするには、ある程度の割り切りが必要だと学べる側面も。
監督のサム・メンデスは『アメリカン・ビューティー』という映画でオスカーを受賞していますが、こちらの作品も後味は要注意!
4.ミッドサマー
2人の好みが「メルヘンな世界にエログロ」がOKならば超おすすめ!
どこまでも絵画的で美しくメルヘンな風景の続く北欧の村にカップルを含む友人たちメンバーで訪れた学生たち。そこには色とりどりの花が咲き誇り、明るく歌い踊る村人たちはとても親切で!まるで、ここは天国?と感激するやいなや、実はそこは地獄!人が…残酷な姿で死んでいきます。しかも、悪趣味な飾られ方をしていたり。R-15指定ですが、個人的にはR-18指定の方が良いと思います…。
この映画のシーズンは夏至(昼が最も長い季節)。なので常に画面が明るいのですが、よくあるホラー映画と言えば、真っ暗な場所が多いですよね。ですが本作は「明るく、よく見えてしまうほうが怖い」という新概念を植えつけてくれました。よく見える方が怖い…とは、すっぴんの肌とどこか似てた概念でよく分かります…。メルヘン世界にエログロという合わせ技にぎょっとしつつも「これを好き!」と声を大にして男女共に言えるのであれば、最高の愛称のカップルかもしれません。勇気があれば、この映画をリトマス試験紙のように使ってみるのもありかも!?
5.愛の渦
カップルにはちょっと強烈!気まずさを与える「女子会用映画」
午前0時~5時。参加料金は男:20,000円、女:1,000円、カップル5,000円。都会の一室で営まれる乱交パーティに参加する男女10人。この一夜限りのために集まった初対面の男女は、相手を変えながら、やり方を変えながら、体を重ねることで本能が浮き彫りになっていきます。主演の池松さんも門脇さんもタオル1枚か裸かという非日常な空間の中で約2週間の撮影に臨んだそう。役者魂に拍手!
ほぼ濡れ場で成り立った稀有な作品で確かにエロいけれど、どんな人間にも必ず備わっている”本音と建前”が垣間みえていつの間にか目が離せなくなります!裸の男女のやりとりが終始続くので、見ている方まで独特な緊張感を味わえるのが新鮮な作品ですが、やっぱりデート映画では気まずいです。
しかしこういうタイプの作品は屈折した形で話題になりがちですが、人間の欲望でや感情のうごめきをうまく切り取っていて、濡れ場よりも会話劇に本質があると理解してから、とにかく見応えのある作品だと気付けました。カップルには強烈なので女子会映画として、推したい所存です。
いかがでしたでしょうか?「今話題のカップルで見てはいけないAmazon作品」を、映画ソムリエこと東紗友美がお届けしました。自粛期間に、ぜひおひとり様で、こっそりとチェックしてみてください。
この記事を執筆したのは
東 紗友美(ひがし さゆみ)
’86年、東京都生まれ。映画ソムリエ。元広告代理店勤務。日経新聞電子版他連載多数。映画コラムの執筆他、テレビやラジオに出演。また不定期でTSUTAYAのコーナー展開。映画関連イベントにゲスト登壇するなど多岐に活躍。
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Instagram:@higashisayumi