何となく、漢字の印象だけで「おそらく、こういう意味だ」と、曖昧に覚えている言葉はありませんか? しかし漢字は、正しく読めるだけではなく、意味も正確に把握し、きちんとし使いこなせるのが理想ですよね。
そこで今回は、“意味とともに覚えたい漢字”をピックアップしてご紹介します。ぜひこの機会に正しい読み方と意味を併せて覚えましょう!
1.「業腹」
「とても腹がたつこと」や「しゃくに触ること」を「業腹」と言います。日常会話ではほとんど登場しない言葉ですが、昔の日本文学ではよく使われていました。
「ちょっとムカつく」というような軽い怒りではなく、今にもはらわたが煮えくり返るような強い怒りを表す言葉です。この言葉を迷わず読めたら、きっと周囲に知的な印象を与えられることでしょう。
そんな「業腹」の正しい読み方は……
「ごうはら」です。
「ごうはら」は、「業」の音読み「ごう」と、「腹」の訓読み「はら」を組み合わせた、いわゆる「重箱読み(上の字を音読み×下の字を訓読みすること)」の熟語。
「業腹」のほかにも、重箱読みをする言葉には「縁組(えんぐみ)」「軍手(ぐんて)」などがありますよ。
2.「反故」
「反故」は、主にビジネスシーンで使われることの多い言葉です。たとえば「契約を反故にする」「約束を反故にする」など、「なかったことにする」「約束を取り消す」といった意味で使われます。
「反故」は、あまりポジティブなイメージで使われる言葉ではありません。できれば「反故にされる」ことも「反故にする」こともないほうが望ましいですね。
そんな「反故」の正しい読み方は……
「ほご」です。
本来、「反故」は「ほんこ」と読まれていましたが、その後「ほうご(ほうぐ)」となり、現在の「ほご」という読み方になったそうですよ。
3.「痴れ者」
「痴れ者」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 「痴れ者」とは「馬鹿者」や「愚か者」を意味する言葉です。
そもそも「痴れる」とは「何かに心を奪われる」という意味があります。そのため、上記以外に「一つの物事に打ち込んでいる人」などといった意味もあるのです。
「ちれもの」ではありませんよ。「痴れ者」の正しい読み方は……
「しれもの」と読みます。
「痴」を「し」と読めるかどうかがポイントです。ちなみに「痴れる」は、「酔い痴れる(よいしれる/ある物事に心を奪われ、うっとりとする)」という言葉にも使われています。
4.「世迷言」
「世迷言」は「世迷い言」とも表記される言葉で、「言っても仕方のない愚痴」「取るに足らない不満」という意味があります。
たとえば「世迷言を並べる」というように使われますよ。
「世迷言」だと「よめいげん」、「世迷い事」と書かれていると、「よまよいごと」と間違えてしまいがちですが、正しくは……
「よまいごと」が正解です。
ちなみに「よまいごと」の「よまう」には「愚痴をこぼす」という意味があります。つまり、「世迷言」の「世迷」は、「よまう」に漢字を当てはめた、いわゆる当て字なのですね。
5.「閲する」
「提出された文書を閲する」、あるいは「歳月が閲する」といったように、「見て確かめる」「年月や時間が経つ」ことを「閲する」と言います。
「閲する」と書いて「えっする」とも読みますが、今回はもう一つ、別の読み方にチャレンジしてみましょう。
「えっする」以外のもう一つの読み方とは……?
「けみする」です。
「閲覧(えつらん)」「検閲(けんえつ)」などの言葉があることから、「えっする」のほうが出てきがちですが、「けみする」という読み方も覚えておくと良いでしょう。
意味とともに覚えたい言葉、5問中いくつ正解できたでしょうか? 「読み方と意味、両方とも知っていた」という言葉もあれば、「読み方は知っていたけれど、意味までは知らなかった」という言葉もあったかもしれません。
もし今回ご紹介した中で、読み方や意味、あるいはその両方を知らなかった言葉があれば、ぜひこの機会に正しく覚えておきましょうね。
参考文献
加納喜光『読めそうで読めない漢字Q&A―もう間違わない!実例集 』講談社
文/大内千明 画像/Shutterstock(Stokkete、YP_Studio、Kues、fizkes、Somchai Siriwanarangson)