一問のクイズが導くのは、驚きの真実とそれぞれの人生。映画『君のクイズ』で描かれるのは、絶対王者・三島とすべてを記憶する男・本庄が向き合う、静かで熱い頭脳戦です。公私ともに親交があり、“倫くん”“りゅう”と呼び合う関係でもある中村倫也さんと神木隆之介さん。そんな二人だからこそ生まれた距離感や空気感とは。役づくりの裏側から記憶との向き合い方まで、言葉の端々ににじむ信頼関係と表現へのこだわりを紐解きます。
“天才”ではなく一人の人間として本庄を見せたかった
――まず、お二人が演じた役についてお聞きします。中村さんは“クイズ界の絶対王者”三島玲央、神木さんは“世界を頭の中に保存した男”本庄絆を演じられましたが、それぞれどのような点を意識されましたか?
中村:三島については、なぜ彼がここまでクイズに人生を捧げるようになったのか、その背景にある物語を大切にしました。一見すると感情が読み取りづらく、とっつきにくい人物ですが、そこに至るまでには当然、さまざま紆余曲折があったはずで。その部分は本庄との対峙においても重要な鍵になると考えました。
クイズプレイヤーとしての顔と、ふと力の抜けた人間らしい一面。その両方を踏まえながら、三島の本当の顔をどこまで的確に表現できるかを意識していました。情報過多にならないよう無駄な所作を削ぎ落としつつ、にじませていくようなイメージです。また、クイズプレイヤーの役づくりとしては、一問ごとに思考のプロセスや細かい所作が伴うので、それら一つひとつを自分の中で説明できるレベルまできちんと落とし込み、細部まで作り込むことも大切にしました。
神木:僕が意識したのは、本庄絆という人物を単なる“天才”としてではなく、一人の人間としてどう見せるかということです。世間からは圧倒的な天才クイズプレイヤーに見えているけれど、実際にはクイズにひたむきに向き合っている一人の人間でしかない。その結果として、膨大な知識量や勝ち続ける姿が天才と呼ばれているだけなんだと思います。
映画をご覧いただければ伝わると思いますが、本庄自身は特に天才らしく振る舞っているわけではないのに、周囲からはそう見えてしまう。その微妙なバランスを探りながら演じていました。それもまた本庄が背負っているものだと思うので、丁寧に演じたいと思いました。
りゅうに任せておけば大丈夫という安心感がありました
――今回、お二人はクイズを通して対峙するライバル関係を演じられましたが、役づくりで意識したことや、撮影中の雰囲気について教えてください。
中村:三島は、自分のスタイルを貫けば負けないというタイプのクイズプレイヤーなんです。なので序盤は、本庄がどう出てくるのか、どんな揺さぶりをかけてくるのか、それに対して三島がどう反応していくのか、という関係性を意識していました。物語の核でもある「問題が一文字も読まれないうちに正解する」という問いを突きつけられてからは、それまでどこか認めきれていなかった本庄に対する見方が少しずつ変わっていく。その前後での変化は、佇まいや物腰といった部分で丁寧に表現したいと思っていました。
撮影もありがたいことに序盤のシーンから順に進んでいったので、意識的に作るというより、自然と三島の変化を追っていけた感覚がありますね。あとは、りゅうに任せておけば大丈夫だろうという安心感もありました(笑)。僕自身はどちらかというと受け手として、物語の中心に立ちながら、しっかり振り回してもらったという印象です。
神木:僕は、もともと倫くんへの信頼感があるので、それをそのまま役にも重ねていました。作中でも本庄は三島に強くこだわっていて、「三島さん、答えてください」と名指しする場面があります。それはきっと、本庄の中に三島に対する共鳴や期待があるからだと思うんです。ただ、その期待を超えて、この人と向き合うと魂が震えるような感覚もあって。クイズプレイヤーとして「負けたくない」という気持ちももちろんあるんですけど、それ以上に「答えたい」「正解したい」という純粋な欲求で動いている。いわば、同じ方向を見ている“同志”のような存在なんじゃないかなと感じていました。
だから、単なるライバルという言葉では収まらない、それを超越した存在。そんな三島を演じているのが兄ちゃん(倫くん)なので、その気持ちを全面的に活かしながら、画面にははっきり出てなくても、「本庄は三島のことをどこか信頼しているんだな」と感じてもらえるようなニュアンスを意識して演じていました。
クイズは知識だけじゃない。技術も含めて、まさに“脳のアスリート”
――お二人はこれまでクイズ番組に出演された経験もあると思いますが、クイズは得意ですか? また、今回クイズプレイヤーを演じて、見方に変化はありましたか。
中村:見方はかなり変わりましたね。以前は「なんでこんなスピードで答えられるんだろう」と不思議に思っていましたけど、実際には膨大な努力や経験、戦略の積み重ねがあって成立しているものなんだと実感しました。知識だけでなく、押すタイミングや駆け引きといった技術も含めて、まさに“脳のアスリート”だなと感じました。クイズが得意かどうかでいうと難しいですね。バラエティのクイズ番組と競技クイズは別物なので。ただ、イントロクイズはわりと自信があります(笑)。
神木:僕もクイズは好きですが、得意かと言われると自信はないですね。番組に出ても不正解のほうが多いですし、やっぱり緊張してしまうので。ただ、今回の作品を通してクイズプレイヤーの見方は大きく変わりました。これまでは気軽に見ていましたが、今は一人ひとりが自分のすべてを懸けて解答席に立っているんだと感じて。ムロツヨシさんが演じた坂田の「クイズの解答に人生が出る」という言葉どおり、その人の生きざままで含めて見る面白さがあると気づきました。今後は、そういう部分も意識して楽しみたいと思います。
結局、覚えるってなると反復しかないんです
――今回の役は“記憶”も重要な要素になっていましたが、お二人は普段どのようにセリフや情報を覚えていますか?
中村:もう、本当に地味な作業ですよ。ひたすら読むか、ブツブツ言うか。それしかないですね。
神木:僕も口に出して覚えることが多いです。頭で覚えるときもあれば、口の動きが慣れるかどうかみたいな。
中村:結局、考えなくても出てくる状態にしないとダメなんですよね。
神木:そうそう。途中で動きが加わったりすると、考える余裕がなくなって一瞬で飛びますよね。
中村:だからオートで言えるところまで持っていかないと。最初は考えながら読んで、そこから口や体、リズムに落とし込んでいく感じです。で、最終的には、そのセリフで相手に何を伝えたいのか、どう動かしたいのかっていう意図をちゃんと持つことが大事だと思っています。
神木:あとは、流れで覚えると入りやすいですよね。物語としてつながっていると覚えやすいけど、単語だけになると急に難しくなる。
中村:文章のリズムとか相性もあるし。
神木:ありますね。倫くんはすっと言えるのに、僕は全然入ってこない、みたいなこともあります(笑)。結局、覚えるってなると反復しかないんですよね。何かを学ぶときは、流れや背景を一緒に覚えるほうが入りやすいなと感じます。
Profile
中村倫也
1986年12月24日生まれ、東京都出身。2005年に俳優デビュー後、舞台・ドラマ・映画と幅広く活躍。NHK連続テレビ小説『半分、青い。』で注目を集め、その後『凪のお暇』『美食探偵 明智五郎』『ハヤブサ消防団』『DREAM STAGE』などで主演を務める。映画では『屍人荘の殺人』『人数の町』『ハケンアニメ!』などの話題作に出演し、確かな演技力で高い評価を得ている。ナレーションや声優としても活動の幅を広げている。
神木隆之介
1993年5月19日生まれ、埼玉県出身。2歳で芸能界入りし、子役時代から数々の作品に出演。映画では『桐島、部活やめるってよ』『バクマン。』『3月のライオン』『ゴジラ-1.0』などで幅広い役柄に挑戦。アニメ映画『君の名は。』では声優としても高い評価を受けた。近年はNHK連続テレビ小説『らんまん』や『海に眠るダイヤモンド』で主演を務めるなど、映像作品を中心に活躍を続けている。主演映画『ゴジラ-0.0』が2026年11月3日公開。
Information
映画『君のクイズ』
5月15日より全国東宝系にて公開。直木賞作家・小川哲の同名ベストセラー小説を実写化した知的エンターテインメント作品。絶対王者・三島玲央(中村倫也)は、生放送のクイズ番組「Q-1グランプリ」決勝戦で、対戦相手の本庄絆(神木隆之介)が問題を1文字も聞かずに正解したことに疑念を抱く。やがてやらせ疑惑が浮上するなか、三島は「なぜ0文字で答えられたのか」という謎に挑み、その真相に迫っていく。
[中村さん分]シャツ¥28,600パンツ¥23,100(ともにマツオインターナショナル カスタマーサービス)[神木さん分]ジャケット¥80,300パンツ¥64,900(ともにUJOH/M)
【SHOP LIST】 マツオインターナショナル カスタマーサービス 0120-29-1951 /UJOH/M 03-6721-0406
撮影/望月宏樹 スタイリング/松本ユウスケ(anahoc)[中村さん分]、吉本知嗣[神木さん分] ヘアメーク/Emiy(Three Gateee LLC.)[中村さん分]、大野彰宏(ENISHI)[神木さん分] 取材/服部広子 編集/越知恭子
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