たとえば「さまつ(些末、瑣末)」のように、一つの言葉に対して複数の漢字が当てられているケースは意外と少なくありません。この場合、漢字は異なるものの、言葉の意味自体はまったく同じです。
今回は、そうした“同じ意味を持つもう一つの漢字”をまとめてみました。普段から慣れ親しんでいる言葉でも、漢字が変わると読み方を間違えやすいもの。あなたはいくつ読めるでしょうか?
1.「首途」
思わず「くびと」と読み間違えてしまいがちな「首途」。卒業や新生活がスタートする時期に、よく耳にする言葉です。
「首途」とは「旅などに出るために、自分の家を出発すること」を意味します。よく「首途を祝う」などと用いられていて、きっとあなたも一度は聞いたことがあるはずです。
そんな「首途」の正しい読み方は……
「かどで」です。「かどで」のことを「門出」とも書きます。おそらく「門出」の方が見慣れているかもしれませんね。
2.「曲尺」
金属製のものさしのことを「曲尺」と言います。主に大工仕事などに使用されていて、実際に見たことがあるという人もいるのではないでしょうか。
「曲尺」よりも「矩尺」という表記の方が馴染みがあるかもしれませんね。そんな「曲尺」の正しい読み方は……
「かねじゃく」と読みます。また、「かねじゃく(曲尺・矩尺)」のほかにも「指金(さしがね)」「まがりがね」などと呼ばれる場合もありますよ。
3.「椿事」
「椿事」と書くと、何だかロマンチックな印象を受ける人もいるかもしれません。しかし実際には「思いがけない出来事」という意味があります。思いがけない、とても“レア”な出来事といえば?
「椿事」の正しい読み方は……
「ちんじ」です。「前代未聞の椿事」といったように、「珍事」と同じ意味で用いられますが、表記としては「椿事」の方が上品な印象になります。
4.「乾分」
「乾分」単体だと「かんぶん」などと読んでしまいがちですが、「乾分」とは「親の手下のこと」を言います。
「親分」と言えば、その手下は? もうお分かりでしょうか。「乾分」の正しい読み方は……
「こぶん」と読みます。「乾分」は、「子分」と同じ意味の言葉なのです。「乾く」という漢字からはなかなかイメージしづらいかもしれませんね。
普段からその漢字を見慣れていると、なかなか「同じ意味を持つもう一つの漢字がある」と言われても、しっくりこないかもしれません。
しかし、どちらの漢字も誤りではないため、あまり見慣れていない方の漢字が用いられる場合もあるでしょう。
同じ意味を持つもう一つの漢字を知っていれば、そうした時にも「これはあの漢字と同じ意味だな」とすぐに理解することができます。また、周囲にも知的な印象を与えられることでしょう。
合わせて読みたい「間違いやすい漢字」
「続柄」=「ぞくがら」?「熟す」=「じゅくす」?読めそうでも間違いやすい漢字5選
「出納」=「しゅつのう」?「言質」=「げんしつ」?実は読み間違えの多い漢字5選
「吹聴」=「すいちょう」?「論う」=「ろんう」?実はみんなが読み間違えている漢字5選
参考文献/日本語倶楽部〔編〕『読めないと恥ずかしい漢字 完全制覇本』河出書房新社
文/大内千明 画像/Shutterstock(Brian A Jackson、AndreasNilssonSweden、Roman Samborskyi、Olesia Bilkei)、PIXTA(ピクスタ)(タカコ.)