結婚に出産、キャリアだって築きたい…人生の選択が多いCLASSY.世代。正解がわからないからこそ、指針が欲しいもの。特に気になる分野の有識者の方に、この先10年、世の中はどう変わっていくのか、どう行動すべきかを伺いました。
今の日本は「法律婚」が得。制度が変わらない限り結婚率も下がり続けます
筒井淳也さん(立命館大学産業社会学部教授)
──結婚の形が多様化している今。法律婚と事実婚どちらがいいですか?
安定した関係で信頼でき、価値観も大体同じならどちらでも大丈夫。夫婦別姓希望なら、事実婚もいいでしょう。社会保険や不倫をした時の慰謝料もほぼ同じ。ただ、相手が亡くなった時、財産の相続権はなく、共同親権も事実婚では得られません。事実婚では、親子関係は母親のみで父親は認知の域に留まります。海外では事実婚が多く見えますが、それは法律婚や離婚がはるかに大変だから。イギリス・フランスでは、結婚前に告知を出す、離婚の際には裁判を通じて子供の養育について細かな調整を行うなど煩雑な手続きが必要。フランスでは離婚時に父親との接触頻度などを、裁判所で決めます。一方、日本ではどちらも比較的容易で、協議離婚も口約束的。事実婚でも法律婚と大差ありませんが、問題は子供の親権を持つ側が亡くなった時。親権を切り替えるなど複雑な手続きが必要です。日本で事実婚を選ぶなら、親権や相続の面倒を引き受ける覚悟を持つこと。この現状から、最初は事実婚でも後に法律婚にするケースも考えられます。
──日本では結婚率・出生率が過去最低。今後どうなっていきますか?
そもそも〝結婚〟をする人自体が少なくなっている日本。このままだとさらに結婚率・出生率は下がるでしょう。今は若者の興味が恋愛以外にも分散していることも要因。一番の要因はキャリアです。仕事も家庭も完璧に手に入れるのはまだハードルが高い。つまり、女性の出世のスピードが上がり、より余裕ができれば、結婚率も上がるはず。そのため、社会の新陳代謝を上げ、現行制度や法律が変わることが第一歩。今の30~40代がパイオニアであり、新しい結婚の価値観への過渡期なのです。
──そもそも〝結婚〟は必要ですか?
海外では結婚というより、〝パートナー〟がいることが重要。病気などいざという時にこの人のためなら自分を犠牲にしてもいいという〝相互依存できる存在〟です。血縁関係はもちろん、恋愛関係はそうなりやすい。友人は自立同士の関係性なので限界があり、血縁であっても兄弟姉妹は関係が薄い場合が多いです。支援制度が手厚くない日本では、生涯パートナーなしでいるのは厳しい。今後は結婚に限らず、性別問わず、〝パートナー〟を持つこと自体が重要になっていくのではないでしょうか。
教えてくれたのは…筒井淳也さん
家族社会学、女性労働などを研究。『結婚と家族のこれから~共働き社会の限界~』『数字のセンスを磨く』(ともに光文社)など著書多数。
撮影/イ ガンヒョン〈人物〉、五十嵐 洋〈静物〉 取材/棚田トモコ 編集/鈴木日向 再構成/Bravoworks,Inc.
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