瀧内公美さん「人に合わせるのは負けじゃなくて勝ち。自分の考えだけで勝負していたら行き止まる」【特別インタビュー】

AmazonのCMから数々の映画やドラマ、大河ドラマまで――。その姿を目にしない日はないほど活躍中の、瀧内公美さん。どの作品でもその世界観に気持ちよく染まっている仕事ぶりにさぞかし職人肌な俳優さんかと思いきや、取材中は自分の発言に自分で大笑いしたりと、とてもチャーミング。様々な経験を経て得た、ウェルビーイングな仕事論を語ってくれました。

【INDEX】自分も周りも幸せにするウェルビー女子な生き方、教えてもらいました

自分の考えだけで仕事していたら、行き詰まる。だから人に合わせるのは、負けじゃなくて勝ち。

あの人いいな、と思ってなれるわけじゃないから

仕事がなかった時期も経験してい

仕事がなかった時期も経験しているので、仕事は簡単にいただけるものではないと考えています。この仕事が決まるまでに、事務所と先方が何度も話し合いをしていたり、誰かが頭を下げているかもしれない。そういう役割を担ってくれている人たちや、仕事が決まるまでの背景も意識できる人でありたいと思っています。いろんな人の関わりがあって成立している仕事でもあるから、周りと比べることはないです。「あの人、いいな」と思っても、なれるわけじゃない。隣の芝生は青く見えるけれど、その人にもその人なりの悩みがあるかもしれないですよね。人のことを考えている余裕があるなら、自分の悩みに向き合いたい。周りはそう簡単に変えられないけれど、自分のことは変えられるし、コントロールできると思うから。

人に合わせるが勝ち、と思っています

20代の頃はすぐカッとなって、自分の意見を主張して揉めたこともありましたが、今振り返ると未熟でしたね。やっぱり伝え方が下手だったと思います。当時、揉めた人に今すぐ謝りに行きたい(笑)。キャリアを重ねて周りの意見を柔軟に受け入れられるようになったし、怒ることもなくなりました。例えば昔は、「ここに立った方が絵になる」という場合でも、「私はこの位置じゃないとできません」と言い張っちゃうようなことがありましたが、今は言われた場所でもできることがあると思える。なんなら喜んでやらせていただきたい。経験値を積んだからこそ、いろんな人がいることが分かったし、相手に合わせる大事さも実感しました。それ1本で勝負するのではなくて、別の方法でも戦える手数を用意しておく。自分ができているかどうかは別にして、そう気づいたことで考え方はすごく広がりました。

だから、人に合わせるのは負けじゃなくて勝ち。自分の考えだけで勝負していたら行き止まると思うんです。人に合わせて相手の意見を取り入れれば、結果的に自分の意見も通りやすくなるんじゃないかな。それぞれが頑なにならずにお互いの意見を受け入れられたら、もしかしたら予期せぬ方向に飛べるかもしれない。それは、毎回違う方と現場をともにする醍醐味でもあります。普段から、先輩たちの立ち居振舞いを見て、いいなと思うところや自分にない部分は、全部吸収してマネしています。

最近で言うと、原田泰造さん。カメラが回っていなくても、「今日、楽しいな」ってずっと笑顔なんです。撮影でお借りしたカフェの店員さんが私たちにコーヒー豆をプレゼントしてくださったときも「僕、コーヒー大好きなの。うれしい!またお店に来れたら来たいなぁ」とやり取りされていて、本当に素敵だな、と。私もこういうことが言える人になりたいから、見習おうと思いました。いいところはどんどん盗んでいきたいので、現場ではすごく周りを見ています。観察しすぎて安藤玉恵さんには、「人のこと見すぎ、怖い」と言われたことも(笑)。作品はみんなで作り上げるもの。だから現場では「あの人、そろそろ撮影始めたいだろうな」とか「私が誰かを待たせていないかな」と、周りの空気を読んだり、意識することも大切にしています。

約3年前からハマっているヨガで

約3年前からハマっているヨガで心身ともにヘルシーに
ボイストレーナーの先生に薦められて3年前から始めたヨガ。舞台に立つ機会が増えてきたこともあり、身体のために何かしたくて始めたのですが、心と身体、呼吸が繋がっていく感覚が好きで、毎日のルーティンワークになっています。自律神経が整うので、メンタルヘルスにも効果的。あとは、自分に嘘をつかない、無理をしないこともウェルビーイングに生きるために大事にしています。

瀧内公美さん
1989年生まれ。富山県出身。2012年から本格的に女優活動を開始。2014年には、映画「グレイトフルデッド」で主演デビュー。2019年、映画「火口のふたり」では、柄本佑と主演を務め、第93回キネマ旬報主演女優賞を受賞。その後も映画、ドラマ、舞台、CMと幅広く活躍。1月期日本テレビ「新空港占拠」に出演。NHK大河ドラマ「光る君へ」では、藤原道長の妻・源明子を演じる。

【衣装】シャツ¥24,200スカート¥24,200(ともにシングス ザット マター)右手リング¥6,600左手リング¥4,950(ともにロニ)シューズ¥31,900(ヨシトデオランジュ/ニューロンドン)

撮影/土山大輔〈TRON〉 ヘア/YUUK〈w〉  メーク/DongBing Tou スタイリング/大石幸平 取材/坂本結香  再構成/Bravoworks.Inc

Magazine

最新号 202412月号

10月28日発売/
表紙モデル:山本美月

Pickup