瀧内公美さん「教員免許を取ろうとしていたとき、本当にしたい仕事に気がつきました」【特別インタビュー】

AmazonのCMから数々の映画やドラマ、大河ドラマまで――。その姿を目にしない日はないほど活躍中の、瀧内公美さん。どの作品でもその世界観に気持ちよく染まっている仕事ぶりにさぞかし職人肌な俳優さんかと思いきや、取材中は自分の発言に自分で大笑いしたりと、とてもチャーミング。様々な経験を経て得た、ウェルビーイングな仕事論を語ってくれました。

教員免許を取ろうとしていたとき、本当にしたい仕事に気が付きました

役者になると決意したのは大学時

役者になると決意したのは大学時代。教育実習の通勤途中で、映画の撮影現場に出くわして、エキストラで参加したことがきっかけです。その映画が中学生の頃に好きだった作品の実写化でもあったので「エキストラ、募集してますか?」と自らスタッフさんに声をかけて参加しました。幼い頃から映画好きの母と頻繁に映画館に通っていました。ずっと映画の世界に憧れていたもののきっかけがなく…でも大学卒業間際に直接触れる機会が訪れて「この世界に入ってみたい」という気持ちが強くなって。

エキストラで撮影に参加した帰りにオーディション雑誌を買って、1ページ目に掲載されていた事務所に応募しました。学費も払ってもらって上京したので、親には大変申し訳なかったです…。事務所に所属後は、オーディションを受けては現場に行き、周りを観察してその場で学ぶ日々。初心者からのスタートだったので業界用語も分からず、戸惑ってばかりいました。芝居や映像研究の学校に通っていれば、もっと理解できることがあっただろうな、と今は思いますが、当時は毎日が刺激的で楽しさと戸惑いの繰り返し。教育実習中は毎朝同じ時間に起きて、スーツを着て学校に行っていましたが、現場への服は、自前で衣装をお願いされない限りどんなものでもOK。毎日行く場所も時間も違うし、作品によってスタッフさんも変わる。ある程度の自由があり、いろんな現場を行き来して仕事するほうが、自分には合っていると思いました。

この仕事を始めた当初は、憧れていた世界に自分がいるなんて不思議な感覚でしたね。スクリーンで見ていた人たちが目の前にいたり、自分が監督に意見を伝えているのも、なんだか変だなと思ったり。憧れだった作品の世界観の一端を担っている自分を不思議に感じることは、今でもたまにあります。

「私はこう思うけどね…」と枕詞を付けすぎて何言ってるか分からなくなるときがある

作品ごとにキャストやスタッフの方が変わるので、毎回刺激と学びをいただきます。私はこれまで、自主映画で主軸を担う機会が多かったのですが、長時間現場に身を置ける環境が、役者としての幹を大きくしてくれる感覚がありました。テレビドラマを始めてからは胆力がつきました。ドラマは同じシーンを何度も撮るので、何回演じても同じテイクができるように、演技プランを考える必要があるし、ブレない芝居が求められる。長い期間同じ題材を公演する舞台は、みんなでディスカッションしながら稽古することで〝次々と発見する〞面白さがある。それぞれの現場や作品で身につくスキルや学びは異なりますが、すべての経験が自分を作ってきてくれたと思っています。

私がこの世界に入った頃は、いい意味で体育会系なところもあり、様々なことを教えてもらえる時代でした。最初の現場では、カメラレンズのサイズから教えていただいたことも。「このサイズだと、人物はこのくらいに映るよ」と説明してもらったことで、レンズによって立ち位置や表現方法を自分なりに考えられたのは、面白かったしありがたかったです。「モニターを見ると粗探しばかりして、自分だけで完結する芝居をしてしまう。芝居は相手とのリアクションが大事だから、モニターを見るのはやめなさい」とう教えも、今に繋がっています。

でも…昔は教えてくださる方がたくさんいましたが、最近は教えるということ自体が減ってきているように感じます。教え方次第では、ありがた迷惑やコンプラ違反になってしまうこともあるから。私自身も下の世代に聞かれたら答える程度にしています。この世界は個性が売りで正解がないし、誰かの教えに従ってしまうと個性を潰しかねないから余計に難しい。相手によって感じ方も違うので、声掛けの仕方に戸惑うことも多々あります。「私はこう思うけど」とか「でも、個人差があるからね」とか、やたら枕詞が多くなって、結局何を言いたいのか分からない人になっている気がします(笑)。

瀧内公美さん
1989年生まれ。富山県出身。2012年から本格的に女優活動を開始。2014年には、映画「グレイトフルデッド」で主演デビュー。2019年、映画「火口のふたり」では、柄本佑と主演を務め、第93回キネマ旬報主演女優賞を受賞。その後も映画、ドラマ、舞台、CMと幅広く活躍。1月期日本テレビ「新空港占拠」に出演。NHK大河ドラマ「光る君へ」では、藤原道長の妻・源明子を演じる。

【衣装】シャツ¥24,200(シングス ザット マター)右手リング¥6,600左手リング¥4,950(ともにロニ)

撮影/土山大輔〈TRON〉 ヘア/YUUK〈w〉  メーク/DongBing Tou スタイリング/大石幸平 取材/坂本結香  再構成/Bravoworks.Inc

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表紙モデル:山本美月

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