堀田茜さん「エコだと思っていることがエコじゃないことも」環境活動家・露木しいなさんに聞いてみたら…

堀田茜が「30代になってなんだか気になる…」と感じるタイムリーな話題を、今会いたい識者に直接聞きに行く連載13回目。この話、ほったらかしにしなくて良かったと思える日が必ず来るはず!

エコだと思っていることがエコじゃないこともあって何から始めればいいのかわからなくなります…

今回のゲストは...露木しいなさん

【今月の茜のモヤモヤ案件】 こ

【今月の茜のモヤモヤ案件】
ここ数年SDGsの話題をよく耳にする中で自分でも何かできることがあれば取り組みたいと思い続けていますが些細なことしかできないもどかしさがあります。オシャレが好きな私たちだからこそできることや、したほうがいいことはありますか?

「日本ではまだ馴染みの薄い環境活動家。具体的にどんな活動をしていますか?」(茜)

茜:環境活動家という肩書き、この数年で世間にも浸透しつつあるなと思いますが、露木さんが環境活動家になった経緯をお伺いしたいです。

露木:私は高校が「世界一エコな学校」と呼ばれるバリ島のグリーンスクールだったんです。英語が学びたくて留学先を探していたときに母が勧めてくれたんですけど、ジャングルの中に学校があって、建物は竹でできていて、電力は太陽光と水力、給食はバナナの葉をお皿として使うような環境です。社会問題や環境について学ぶ授業が多く、解決のために何ができるかを考え学び、行動・実行することを身につけました。その中で私は環境汚染問題や気候変動に興味を持ち、今地球が晒されている問題を日本でも伝えたいと思ったので日本の大学に入学しました。でも「大学を卒業してから活動していては遅い。学校は待ってくれるけど気候変動は待ってくれない」と思って、学校は1年で休学。現在に至ります。気候変動の問題を伝えなきゃと行動しているうちに、友達から「しいなのやってることって環境活動家だよね」と言われてそう名乗ることに。なので、環境活動家になりたかったわけではなくて。

茜:なりたかったわけではないというのは、自分の意志の赴くままに動いていたらそうなっていたという感覚ですか?

露木:そうです。人って何かしないと生きていけないじゃないですか(笑)。母が自然が好きで、たまたま環境問題を学ぶ状況で育ててもらったから結果として今があるだけなので、高い志があったわけじゃないんです。

茜:オーガニックコスメのプロデュースもされていますよね。これも環境活動家の一環ですか?

露木:はい。私は妹がいるんですけど肌が弱くて、自然派をうたった口紅でもかぶれてしまったんですね。それなら妹が使える口紅を作ってあげたいと口紅の研究をはじめたのがきっかけです。でも、すでにあるものを作っても意味がないし、環境の面でも無駄な生産になるので、オーガニックコスメの世界基準であるコスモス認証を取得した口紅を作ることにしました。15歳から研究をはじめて販売を開始できたのは2023年なので、6年かかりました。でもどうせ作るならそのくらい時間をかけて、環境課題をクリアできるようなものにしたかった。

茜:妹さんひとりのために何かをはじめる行動力もすごいですが、口紅ひとつにも環境課題を感じることに驚いてしまいました。

露木:人間にやさしいものが環境にやさしいわけじゃないんですよね。森林伐採して育てるパームオイルを使ったり、動物実験が必要だったり、リサイクルされない化粧品の容器を使ったりすることって、人間は安心かもしれないけど環境には良くない。

茜:でもそれらすべてをクリアできるものを作れたってことですか⁉

露木:リップのテクスチャー本体はそうですね。でもすべてをクリアするのは難しくて、口紅をセットする土台にはどうしてもプラスチックを使わなければならなくて。なので、入れ物をアルミケースにして、中身だけ入れ替えができるようにしたことと、使い切れるサイズで作ったのは大きなこだわりです。

茜:という話を聞くと、なぜ世の中のすべてのものがそうならないのかと思ってしまうのですが…。

露木:私は消費をおさえることが大事だと思っているので、すでに売っているものは作らない。私しか作れないものだからこそやる意味があると思っていて、ただそうだっただけなんですよ。たとえば大きな化粧品会社が、数あるブランドの中でひとつだけエコを意識したブランドを作ったとしたら、他のブランドが悪に見えちゃうじゃないですか。でもエコじゃないから悪いということではないし、消費者のニーズに応えるためにはエコでは叶わない物事もたくさんあるんですよね。私も環境活動家でありながら100%エコじゃなきゃいけないとは思わないし難しいとも思っています。だからこそ、できる範囲でエコの観点の選択肢も取り入れてもらえたらいいですね。

環境活動家 露木しいなさん
2001年横浜生まれ。「Green School Bali」卒業生。帰国後慶應義塾大学環境情報学部に入学するも、気候変動の問題を重んじ1年で休学。環境活動家として全国の中学高校で講演会をスタートさせる。肌が弱い妹のためにコスモス認証の取れたコスメティックブランド「SHIINA organic」を立ち上げる。クラウドファウンディングで1100万円・支援者1500人以上を集め、現在3色のリップスティックを販売。2月末には新作展開予定。Instagram@shiina.co

ジレ¥23,100パンツ¥18,700(ともにanuans)ニット¥14,300(ルーニィ)
※露木しいなさんの衣装は私物です。

撮影/杉本大希 スタイリング/阿部絵莉香 取材/野田春香 再構成/Bravoworks.Inc

Feature

Magazine

最新号 202501月号

11月28日発売/
表紙モデル:堀田茜

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