今年もあっという間に年末。お出かけの予定は決まっていますか?今回は、ぜひ年末年始に映画館で見て欲しい映画を紹介します。どれもこの時期に、ぴったりの作品たちなので年末年始のお出かけに困ったら、ぜひ映画館で素敵な時間を過ごしてください。
1. 『PERFECT DAYS』
12/22公開
新年を迎える前に日常にちらばっている幸せに気づく
2024年開催予定の米アカデミー賞において、各国から出品される国際長編映画賞の日本代表になったのが、この『PERFECT DAYS』。最初に言いますが、幸せが何かを見つけるにおいてあまりにもこの映画は素晴らしすぎました!
東京・押上で暮らし、渋谷区のトイレを清掃する。トイレ清掃員の男性の何気ない日常を描いたこの映画は世界3大映画祭のひとつ、フランスのカンヌ国際映画祭で、俳優の役所広司さんが最優秀男優賞を受賞。日本人の俳優が最優秀男優賞を受賞するのは19年ぶり2人目の快挙となり、話題になりました(※「誰も知らない」における柳楽優弥さん以来の快挙)。
毎日を消費するように生きるのではなく、毎日と対峙して、日々を慈しむ“平山さん”の存在に気付かされることがたくさん。平山さんがどれだけ何気ない日常を愛しているかが、あらゆるところに描かれていています。例えば木漏れ日、影が踊るように揺れる様子。目を凝らしていなければ通り過ぎていくような時間を、取りこぼさないように生きる姿を見ていると、日常の解像度が上がります。“今日”がもっと色づくような感覚を味わうことができるのが、この映画のポイント。スマホばかり見ていたらどれだけ気づけない景色があるかを思い出させてくれる。スマホ断食の前にもおすすめかもしれません。街歩きに新しい楽しみ方をもたらしくれる作品でした。
また役所広司さんは表情筋の種類が人類最多なのではと思うくらい、多様な表情を見せてくれています。一人で過ごす時間を大切にしている主人公なので、お一人の描写が多く、ほとんどセリフを発さないので、とにかく顔で語るので注目!表情だけで泣かせにかかってくる本物の名演です。
ドイツの映画監督ヴィム・ヴェンダースが撮った東京を舞台にした作品は、音楽が素敵で、下町と洋楽がこんなにも相性がよいなんてはじめて知りました。知っていた景色が新しい顔を見せてくれたようでもあり、きっともっと東京が好きになる一作です。
2.『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』
12/22公開
完成度の高いホラーは最高のデートムービー
ホラー映画って面白いけれど、なんとなく自分ごと化できない作品が多くありませんか?
今年アメリカ最大のインディペンデント映画祭のサンダンス映画祭で上映されるや否や大きな話題を呼び、スティーブン・スピルバーグ、スティーブン・キングらが絶賛した話題作『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』。SNSで流行する手の形をした謎のオブジェと握手して、90秒間だけ霊を自分に招き入れる降霊術を題材にした「90秒憑依チャレンジ」にのめり込んだことから思わぬ事態に陥っていく女子高生を描きます。いわゆる「こっくりさん、トイレの花子さん」など学生時代に友達とノリで試したことのあるような、度胸試しの行く末を追っていく作品。ティーンホラーですが、妙に懐かしいムズ痒さが効いてくるのがうまいです。主人公が母親の死を経験していることもあり、誰しも理解できる痛みを描くことで、より一層のめり込んでしまう作品になっているのもポイント!
『ミッドサマー』『へレディタリー/継承』を超えて、全米でA24ホラー史上最高興収を記録したことでも「どんな作品なのだ?」と注目されている一作です。ちなみに映画『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』の監督を務めるのは、今作が初監督作品となる双子のYouTuberダニー&マイケル・フィリッポウ。670万人以上のフォロワーを誇る気鋭のYouTube監督なんですね。
創意工夫に飛んだ映像とあれよあれよと進んでいくのはお手の物でした。95分間一気に見せ込んでいきます。よくできた作品なので、吊り橋効果を狙いつつ、年末年始のデートムービーとしてはイチオシしたい!
3.『コンクリート・ユートピア』
1/5公開
新年こそ気持ちをひきしめる、価値観を新しくする作品
韓国の映画賞・大鐘賞映画祭で6冠を受賞した圧倒的な見応えのパニック映画です。大地震に見舞われたソウルの街が一瞬にして廃墟と化した世界を舞台に、唯一崩壊しなかったマンションへと集まる生存者たちの人間模様を描いきます。シンプルに都市破壊されてく映像が完成度が高くて恐ろしいですし、廃墟となった街並みも不気味なだけでなくそのビジュアルも圧巻!映画はセット・CG・メーク・衣装が細部まで拘られていて、退廃した世界を作り込んでいるのがすごい。舞台の中心となるマンションも実際の建築物に準ずるものを建てたそう!食料も底を尽きる中、たった一つの建物に集まる民衆はどうなるのか。圧倒的な没入感ゆえに「この状況に陥ったら、あなたならどうする…?」と、鑑賞後に確実に話し合いたくなる映画で、一緒に観た人の価値観を深く知ることもできそう。
『梨泰院クラス』などで日本での人気を確実なものにしたパク・ソジュンですが、イケメンすぎて顔にどうしても目がいきがちですが、本当にお芝居がうまいですね。瞳の輝きを失っていく様子がリアリティ強く、物語の緊迫感に拍車をかけてくれます。
そしてイ・ビョンホンは、序盤から終盤にかけて変化をしていく男を演じる上手さが光っていて、魅力的な俳優さんですが、まさに人間の複雑な変化を見せてくれました。未曾有の危機の中でぶっ壊れていく男を不気味に、でもカリスマ性たっぷりに演じています!『非常宣言』『白頭山大噴火』にも出演していましたが、パニック映画俳優頂点の座を極めた存在。元祖・韓流四天王のイ・ビョンホンと、いまトップクラスの人気を誇るパク・ソジュン、新旧イケメンの夢の共演でもあります。
いかがでしたか?「年末年始にこそ見てほしい映画ソムリエイチオシ作品たち」を映画ソムリエ・東紗友美がお届けしました。
映画との出会いは一期一会。タイミングを意識した映画選びを。素敵な年末を過ごせますように。
今回の記事「大人女子のための映画塾」を執筆したのは…
東 紗友美(ひがし さゆみ)
’86年、東京都生まれ。映画ソムリエ。元広告代理店勤務。日経新聞電子版他連載多数。映画コラムの執筆他、テレビやラジオに出演。また不定期でTSUTAYAのコーナー展開。映画関連イベントにゲスト登壇するなど多岐に活躍。
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Instagram:@higashisayumi