旅行も帰省も戻ってきた冬!せっかくの時間を本と映画でより濃いものにしませんか?昔、修学旅行で行ったところでも、よく行く旅行先でも新たな発見がある、そんな本と映画を専門家のお二人に選んでいただきました。
<専門家が選ぶ!>旅したくなるBOOKリスト“9選”
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『京都の平熱――哲学者の都市案内』(鷲田清一/講談社学術文庫)
「京都生まれ京都育ちの哲学者と一緒に、京都中心部を回る市バス206番に乗って、平熱の街に分け入ってみる京都案内&エッセイ本。観光地で妙に疲れてしまうことがあります。好きで来ているのに勝手な話ですが疲れるものはしょうがない。そんな時、バスはどこか自動的な乗り物で、あそこへ行こうとかここへ行こうという意思がないのが心地いい。そんな心地よさと、京都の街のハレもケも身に染みて感じられるような一冊」
『旅する練習』(乗代雄介/講談社)
「中学入学を前にしたサッカー少女と小説家の叔父が、徒歩で我孫子〜鹿島を旅する物語。少女はボールを蹴りながら、叔父は目にする風景を書きながら、ひたすらに歩いていく。二人にはルールがあり〝歩く、書く、蹴る〟、この習慣を維持すること。非日常の中で小さな日常を作りながら旅をすると、世界とちゃんとつながれる気がする。小説家の何げない風景の描写が美しい一冊」
『パリ南西東北』(ブレーズ・サンドラール/月曜社)
「パリ市庁舎前のキスの写真で知られるフォトグラファー、ロベール・ドアノー。彼の2番目の写真集の序文として書かれたのがこの本。詩人の目で捉えるパリ郊外はモノクロ写真の影よりも暗い。まるで世界を憎んでいるような文章に少し戸惑う。それなのに時折、街の人への親しげな眼差しを感じる。旅先でその土地と馴染めないような気がしたらこの詩人のように、目の前の人と向き合ってみたい。独自の価値観が広がるルポルタージュです」
『首里の馬』(高山羽根子/新潮文庫)
「旅先で最初に嬉しく思うのは、電車でも飛行機でも降りた時にすぐ分かるほど〝空気が違う〟ということ。この本は沖縄を舞台にしたSF小説。最初のページですぐに感じられる沖縄の空気。頻繁に訪れる台風と、それが形づくる低くて平たい形の家々の景色。物語のはじまりにはいつも、違う空気の中に飛び込んでいくような感覚があり、この本でも旅に出たいという気持ちを強く掻き立てられるはず。沖縄の空気を吸いに行こう!」
『歩くこと、または飼いならされずに詩的な人生を生きる術』(トマス・エスペダル/河出書房新社)
「人生を主体的に歩くことについての哲学紀行で、ウェールズ〜ドイツの景色を感じながら生き方について考えさせられる本。直感に従って道を選び歩みを進めると、その先に何があるかが次第に分かってくる。自分で決めて自分で動くことの心地よさがシンプルに理解できる。自分を見失いそうになったら、目的地を定めず歩いてみるのがいいのかも知れない。書いた人物のためらいや、歩くことで思考が整っていくのを感じられます」
『富士屋ホテルの営繕さん建築の守り人』(LIXILギャラリー企画委員会/トゥーヴァージンズ)
「旅の楽しみがホテルにある人へ。とりわけクラシックホテルは、ロビーのソファに腰掛け、内装をぼんやり眺めているだけで満たされる。僕のお気に入りは箱根・宮ノ下の『富士屋ホテル』。和洋混交で、今がいつなのか、どこの国にいるのかも分からなくなる雰囲気に惹かれる。その質感を保つのが営繕さんと呼ばれる建築物の修繕を行うスタッフ。この質感を維持するために日々手を掛けている人のことを想像してみるのもおもしろい」
『あかねさす柘榴の都』(福浪優子/KADOKAWA)
「スペイン語で〝柘榴〟を意味するアンダルシアの古都グラナダで見つける、新しい人生を描いた漫画。両親を失った少年は日本を離れスペイン人の叔母と暮らす。食べること、歩くこと、話すことで、初めての土地に少しずつ、体ごと馴染んでいく。グラナダの空気と色彩、匂いが伝わってくる物語。たぶん本当は、誰もがどこにだって行けるし、どこでだって生きられる。旅はいつもあり得たかもしれない別の生き方を想像させてくれます」
【本を選んでくれたのは・・・】
■有地和毅さん
プランナー/ブックディレクター。旅と散歩、食と音楽を偏愛。本と出会うための本屋「文喫 六本木」をはじめ、本と文化と人の関係をリデザインする場、もの、ことづくりに携わる。
撮影/清藤直樹 取材・文/野田春香 再構成/Bravoworks.Inc
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