11月10日公開の映画『正欲』に主演している稲垣吾郎さんへのスペシャル・インタビュー。後編ではその独特の存在感が長年、幅広い層から支持されている稲垣さんが実践している〝ウェルビーイングなこと〟についてお話していただきました。
――仕事への向き合い方やプライベートの過ごし方など、稲垣さんがメンタル面で意識している〝ウェルビーイングなこと〟はありますか?
僕はずっとそういうふうに生きてきたというか、もともとそうだから、自分のためにあるような言葉に感じてしまう(笑)。僕は、自分の好きなものや自分が美しいと思う人や物に対する直感力は非常に鋭いと自分でも思っていて、そういったものに囲まれて生きていればストレスフリーでいられるし、そういう習性の生き物ですね。芸能の仕事って普通の会社員の方とは違って、はみ出た感じも個性だったりするから。面白がってもらえることで許されるような異端児ですから(笑)。だから僕の言ってることなんて説得力はないんです。でも表現者ってそういうものだし。もちろん現場での協調性は必要ですし、「この人、ちょっと苦手だな」ってこともあるかもしれないけど、それを排除することはできないよね。
今は、本当にいい環境で仕事もプライベートも生活できているなって思います。それも気負うことなく。「ウェルビーイングなマインドを作らなきゃ!」って気負うのも変な話だし。まずは無理なく気負いなく、自分の好きなものを大事にできる環境を整えることだよね。人や物など他者から受けるものの影響ってどうしても大きいから、常に生活のなかでそういう環境を整えておかなきゃいけない。そういう努力というか、そういうものへの探求は苦ではないじゃない? 僕はそうやって自由に生きてる気がします。また、こだわりすぎるのもよくなくて。僕がよく言ってることなんですけど、こだわりも大切だけど、「こうじゃなきゃいけない、こうしなきゃいけない」ってこだわりすぎると自分を縛りつけることになっちゃう。僕って結構こだわりが強いように思われていて、もちろん譲れないものはあるけれど、「これも食べてみようかな」とか「この人とも会ってみようかな」っていうのはよくある。でないと凝り固まっちゃうからね。凝り固まるって老化の原因だから(笑)。自分の趣味嗜好って、年齢とともに確固たるものができあがってくるじゃない? そうするとガチガチに自分を決めつけちゃって、自分はこれしかやらないってふうに可能性を狭めちゃうから。面白いものって他にもあるからね。こだわりは持っていたいし、持ってもいるけど、柔軟性も必要だなと思う大人になったのかな。
――フィジカル面では、健康管理や体力をキープするために実践していることはありますか?
僕は、一番大切なのは早寝早起きだと思ってる。睡眠が大事ですね。僕は夜は9時か10時に寝ちゃって朝6時に起きる。これがすごく調子がいい。以前と比べて、すごく変わったことかもしれません。ときに遅い撮影とかはあるけれど、今は夜遅くまで仕事をしなくなったし、舞台なんて規則正しいし。昔は深夜まで収録とかあったけれど、芸能界も働き方が変わってきてますから。僕は早寝早起きが心も体も健康でいられる大切なポイントだと思ってますね。朝早く起きればいろんなことができる。食事も朝食べて深夜は食べなくなるから、食生活も変わってくる。朝散歩したり走ったりするのも好きだし、太陽の光を浴びるのも健康的ですよね。それを当たり前のように気持ちよくやってます。世の中、夜遅くまで起きてる人って多くないですか? まずタイムスケジュールから見直さないと、何も始まらない気がします。いくら体にいいものを食べても、いくらいい化粧品を使っても、いくらいいエステサロンに行っても――。本当に早寝早起きが基本。あとは、自分を縛りつけすぎないことかな。ストイックな人にも憧れるんですけどね、そこまではできないんだよな(笑)。
稲垣吾郎
‘73年12月8日生まれ 東京都出身●’91年に歌手デビューし、’17年に「新しい地図」を立ち上げる。数々の映画やドラマ、舞台に活躍し、‘10年『十三人の刺客』と’19年『半世界』では複数の映画賞を受賞。近年の主な出演作はNHK連続テレビ小説『スカーレット』、主演映画『ばるぼら』『窓辺にて』、主演舞台『サンソン -ルイ16世の首を刎ねた男-』『恋のすべて』『多重露光』など。
『正欲』
朝井リョウによるベストセラー小説の映画化。息子が不登校になった検事の啓喜。とある性的指向を持つことを隠して暮らす販売員・夏月。夏月と秘密を共有する佳道。誰にも心を開かない大学生・大也。自分の気持ちに戸惑う八重子。無関係に見えたそれぞれの人生が、ある事件をきっかけに交差する…。主人公の啓喜を稲垣さんが演じる。他の出演/新垣結衣 磯村勇斗 佐藤寛太 東野絢香ほか 監督/岸 善幸 原作/朝井リョウ『正欲』(新潮文庫刊)●11月10日(金)公開
撮影/平井敬冶 ヘアメーク/金田順子 スタイリング/黒澤彰乃 取材・文/駿河良美 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)