春になると、CMをはじめさまざまなところでおなじみの曲とともに、「そうだ京都、行こう」のフレーズを目にします。桜の時期は、やっぱり京都だよな…と思いつつ、先日ひと足先に、3月12日、13日と2日間に渡り京都へ遠征してきたのでその模様を少しだけお伝えします。
今回の目的は「京都・和食の祭典2023」
「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されて10年!振り返りと、これからについて語るフォーラム
「京都・和食の祭典2023」というフォーラムに参加させていただきました。和食がユネスコ無形文化遺産に登録されて、早10年。今回はその歩みを振り返りつつ、これからについて語り合うという内容でした。
登壇されたのは、京都の言わずと知れた料亭「菊乃井」の3代目主人である村田吉弘さん、京都のみならず、多くの飲食店に昆布を卸している、奥井海生堂4代目主人の奥井隆さん、名水で有名な伏見「月の桂」蔵元・14代目当主の増田德兵衞さん、京都・花背の名旅館「美山荘」出身、NHKをはじめとするテレビなどでも活躍される料理研究家の大原千鶴さん。
実に豪華なメンバーが、2部構成で「和食の素晴らしさ、そして危惧している未来」について語り合いました。途中、関係者からのビデオメッセージなどもあり、ユーモラスな発言の数々で会場は時折笑いも巻き起こりつつ和やかに進行。和食の定義である「四季の情感を料理に映す、素材の持ち味を大事にする、栄養バランスが優れている、国民の生活と密接に関わる」なども紹介され、世界無形文化遺産に登録された理由のひとつとなったのが「元旦に、国民がみなお雑煮を食べている」といったエピソードには思わず納得でした。
和食のみならず、世界の食料自給率に関する問題や、料理人の修行に伴う「働き方改革」についても話が及び、和食の域を超えた、大変考えさせられることの多いセミナーでした。
実際に「たん熊北店 本店」にて京都の和食を堪能
「最近の和食は崩しすぎている」「料亭の敷居を高くしているのは皆さん」の言葉の意味
続いて、実際に京都の和食に触れる機会も。今回は「たん熊北店 本店」にお邪魔しました。
さきほどのセミナー中で、特に印象に残った言葉が2つありました。まずは「最近の和食は崩しすぎている」ということ。素材を生かす、が和食の本来あるべき状態ですが、いろんな料理の作り方が混ざり、わからなくなってしまっているということ。
「たん熊北店 本店」でいただいた料理はどれも素材の美味しさを感じられる料理で、「和食ってこういうものだよな」とホッとする味でした。四季の食材をいかした料理は、どれも美味しく、目で見ても楽しめるものばかり。
こちらは、実際に「たん熊北店 本店」で出てきたひと皿。3月のひな祭りにちなんで、可愛い器で登場しました。料理は味だけではなく、その場の空気感を含めてのものだと改めて認識。この後もお造り、焼き物からご飯、最後は和菓子まで…。お腹も心も大満足のコースでした。
そして、お食事をいただきながら思い出したのは「料亭の敷居を高くしているのは皆さん」という「菊乃井」3代目主人である村田吉弘さんの話。たしかに、なんだか料亭って「大人のもの」とずっと思いながら、もういい年の大人になってしまった私。結納だったり、本当に人生の特別なイベントではないと行ったことがなかったのですが、もっと気軽に肩の力を抜いて和食を、料亭を楽しみたいと感じた一夜でした。
京都の和食とは?魅力をさらに深掘りする2日目へ
翌日は朝食は朝粥で有名な「瓢亭」へ。江戸時代から続く、料亭の信頼が厚い野菜づくりのこだわりと信念がスゴすぎる「石割農園」や、そこで採れた野菜を使った「リストランテDIVO-DIVA」で昼食を。さらには老舗和菓子店「甘春堂」では実際に練り切りなどの和菓子づくりを体験することができ、京都の食を楽しめる、大満足の1日となりました。
おわりに「和食との付き合い方」
でも「和食は実はタイパがよいもの」なのかもしれない
和食は一見、空気感が素敵な料亭で食べたり、丁寧に作る和菓子だったりと「手の込んだもの」が多いようにも思えます。ですが、セミナーの中で大原千鶴さんがおっしゃっていた「和食は本来、日常の中で簡単にささっとすぐ作れるもので、それでいて出汁の味にほっこりできて満足度が高い。タイパ(タイムパフォーマンス)がいい料理なんです」との言葉もありました。和食の本質からズレていなければ、いろんな和食があっていいのではないか、と。
確かに、忙しくてドタバタした日も、なんだかお味噌汁を夜中に飲むとホッとしたり…。体にいいことをしている気がして心も安心するような気がします。普通の和食、たまにはいい和食。これからも和食と向き合って行きたいと思える2日間でした。
構成/CLASSY.ONLINE編集室