1月14、15日に、「大学入試センター試験」から名前を変えて3回目となる「共通テスト」が実施されました。今、この記事を読んでいる方の中には、すでに新聞やネットで実際の問題をご覧になった方も多いことでしょう。国語の試験では、四つの大問のうち、第1問の「評論文」の中で、漢字の「読み書き」が問われます。もちろん、マーク式の試験のため、実際に読み書きさせるのではなく、選択肢から選びます。
ということで今回は、「共通テスト」に出題された問題を紹介します。
1.「作品のボウトウ」
実際の共通テスト設問は、「傍線部のカタカナを漢字にした際に使う漢字が含まれるものを、同じくカタカナで書かれた選択肢から選ぶ」というスタイルですが、まずは、本文中の漢字がわからなければいけません。それがわかった受験生は、次に選択肢を吟味します。
「流行性カンボウ」「今朝はネボウした」「過去をボウキャクする」「経費がボウチョウする」と並びました。
さて、どれと同じ漢字なのか、おわかりですか?
まず、本文の漢字は「冒頭」。次に選択肢は、「感冒」「寝坊」「忘却」「膨張(脹)」でした。選択肢の正解となった「感冒」は、いわゆる「風邪(かぜ)」のことですが、実際に書かせると、「寒冒」の誤答を多く見かけます。また、「冒」と「昌」が区別できない人もいます。「日」の下は「目」です。間違えないでください。
2.「心のキンセン」
前問より難易度が上がります。この言葉が本文中にありますが、「心のキンセン」でイメージがわかない受験生にはこの設問は難しいでしょう。
選択肢は、「ヒキンな例」「フキンで拭く」「モッキンの演奏」「財政をキンシュクする」と並びました。
さて、どれと同じ漢字なのか、おわかりですか?
「キンセン」とは、本来はその字の通り、「琴(こと)の糸」ですが、「物事に感動して共鳴する心情」を表し、多くは「琴線に触れる」の形で使われます。これさえわかれば、選択肢の中で一番やさしい「木琴の演奏」はすぐに選べます(まるで小学校の問題です)。正解以外は、「卑近」「布巾」「緊縮」ですが、このうち受験生がイメージできないのは、「卑近」でしょう。自分がわからない熟語の場合、苦しまぎれにそれを選んでしまう受験生が多いと予想しますが、どうだったでしょうか?
3.「ウトんじられる世界」
漢字連載では、再三指摘していることですが、音読み漢字(主に熟語)より訓読み漢字のほうが難しい。それは、音読みと違って、しっかり漢字の意味までわかっていないと読み書きができないからです。
文中に「ウトんじられる」とあります。その訓読みです。そして、この言葉自体、受験生にはなじみが薄いと思います。
さらに、選択肢では、訓読みではなく音読みの言葉が並びました。「裁判所にテイソ」「地域のカソ化」「ソシナを進呈」「漢学のソヨウ」です。さて、おわかりですか?
「ウトんじる」とは、「親しくないようにする=嫌って遠ざける」ことです。「ウトんじられる」はその「受身(うけみ)形」。熟語で言えば「疎外」です。ここまでわかれば「疎」を使うものを選べます。選択肢には、受験生にはみじみが薄い言葉が並びましたが、それぞれ「提訴」「過疎」「粗品」「素養」と書きます(「粗品」は某お笑い芸人から連想できる?)。
ここで、「ウトんじる」がすぐわからなかった受験生にも、「ウト=ソ」であるというヒントが提示されたことにもなります。ここから消去法で正解を導けた人もいることでしょう。正解「過疎」は、「過密」の対義語で、「極度にまばらであること=人口が非常に少ないこと」の意味です。
いかかでしたか? 約50万人の受験生がこのような漢字問題に取り組みました。では、今回はこのへんで。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)