サイバーエージェント専務執行役員・石田裕子さん「30代は、もっと自己投資しておけばよかった」【素敵な40代が、30代にしておけばよかったこと】

今の自分より、少し上の世代の素敵なひと。そんな人に「こんなとき、どうしましたか?」と聞きたくなるときがあります。30代は、人生のいろいろな選択肢があるからこそ、迷うとき。先輩たちがCLASSY.世代のために、失敗も葛藤も包み隠さず教えてくれました。

“キャリアを継続するには自分らしくあり続けること”

サイバーエージェント専務執行役員・石田裕子さん「30代は、もっと自己投資しておけばよかった」【素敵な40代が、30代にしておけばよかったこと】

30代は、もっと自己投資しておけばよかった

30代でやっておけばよかったことを一言で言うなら、自己投資。知識、経験、美容、健康といろいろな投資があるけれど、自己投資のバリエーションをもっと作っておけばよかった。スポーツしたり旅行したり、お酒を飲んだり、自分なりのリフレッシュ法はあったけれど、いわゆる趣味に没頭する時間は持てていなかったですね。正直、仕事と育児と家事で余裕がなくて、プライベートでは新しいことへの挑戦があまりできなかったなと思います。
実際、仕事的にここぞという時期に妊娠や出産が重なり、30代は激動の毎日でした。でも、私個人としてはポジティブに捉えていて。ライフステージが変化するタイミングはなかなかコントロールできないもの。そして出産して自分の生活がガラッと変わるまでは、想像しても分からない部分が多いですよね。状況次第で見えてくる景色も選択肢も異なるだろうから、逆に悩みすぎないようにしていました。もちろん、予期せぬことに対してとことん考えたほうが落ち着くタイプの人は、いろいろなパターンを想像しておいていいと思うんです。私の場合は変化の激しいIT業界に身を置いていることもあり、先々のことを考えすぎても 仕方ないな、と。キャリアや妊娠、出産のタイミングを綿密に計画していなかったのですが、振り返ると逆にそれがよかったのかなとも思っています。

失敗したとしても、どんなチャンスも断らない

未来のキャリアを見据えて心掛けていたのは、与えられた役割やチャンスをまずは受けること。苦手分野だったり、状況的に厳しいことも多々ありましたが、断らずに挑戦してきました。一見プラスに働かなそうなことでも、その経験を積むことで視野が広がったり、次の仕事やネットワークに繋がる。余裕のないときでも、与えられたチャンスを逃さないスタンスで向き合ってきました。
嘘っぽく聞こえるかもしれないけれど、一度も転職を考えたことはありません。入社以来、広告営業からメディアプロデューサー、子会社の社長、人事と数年単位で大きな変化を繰り返し、社内で転職をしている感覚があったのも理由。誰しも、仕事に慣れてきたり、できるようになってきたと感じる場面はあると思いますが、私の場合はそう思う前にまた新しい壁が立ちはだかり、挑戦し続けられたので、転職を考える機会もありませんでした。
長期的に見ると、与えられた機会や役割を自分の損得で考えずに、とにかく全力で向き合ってきたことは、今に繋がっていると思います。新しいオファーをもらったときに「今の仕事を続けたほうが評価が高そうだな」とか「自分の人生にプラスかもな」と考えることももちろん大事。でも私は自分個人の損得だけではなくて、会社がより成長していくためには何を選択すべきなのかという視点で考えるようにしています。それがチャンスをいただくことに繋がったのかもしれない。もちろん成功だけでなく、大失敗もしてきました。代表を務めた子会社は、大きな損失を出して閉じたので、左遷されてもおかしくないほどの失敗です。ですが、そこから何を学び次に生かすかを考え、愚直に実践してきました。常に挑戦→失敗→学ぶ→次に繋げる。失敗から学ばないと失敗経験に意味がなくなる。失敗を許容できる文化を作り、次の挑戦者を増やさないと革新は起こらないと思っています。

何のための仕事なのか、自分で意味付けをしていく

たとえ同じ部署・同じ業務をしていたとしても、自分の中でチャレンジ枠を作ること。ただタスクを消化するのではなく、「違うアプローチをしたら結果が変わるかな?」と仮説検証を繰り返していく。そうやって自分の中にちょっとした変化を意識していくと、仕事が面白くなるし、成長実感も得られると思います。自分らしくあり続けることもキャリアを継続する上で大事です。私も産休から復帰後は時間の制約もあり、全部が中途半端なんじゃないかと感じることもありました。保育園で「今日寝返りしましたよ」と言われると、寝返りを初めて見たのは私じゃなかったんだって、それだけで涙が出てきたり……。
その中で意識していたのは、何よりもまず自分らしくたのしむことです。自分がたのしくないと「何のためにやっているんだろう」という思いに至ってしまうから、仕事でも常にたのしい状態を作ることは心掛けていました。自分を見失って、仕事をただの義務として捉えだすと、すべてがつまらなくなる。「この仕事何のためにやっているんだっけ?」、「どうすればみんながハッピーになるんだっけ?」と原点に立ち返る視点を忘れないことが大切。仕事も育児も家事も、自分で意味付けをしていく。大変なことも多いけれど、〝たのしくやる〞が最低ラインで外せない軸です。

【石田 裕子さんの30代キャリア年表】

30歳:29歳の第一子出産前から、営業統括に就任
31歳:Amebaプロデューサーとして、スマホサービスの立ち上げに携わる
32歳:1社目の子会社代表取締役社長に就任。第二子出産
33歳:2社目の子会社代表取締役社長に就任
35歳:執行役員に就任
39歳:専務執行役員就任

石田 裕子さん 1981年生ま
2015年、株式会社Woman&Crowdの代表取締役社長を務めていた34歳の頃。仕事と子育ての両立を目指して、〝自分らしくたのしく働く〞を心掛けて奮闘していました。

石田 裕子さん
1981年生まれ。青森県出身。サイバーエージェント専務執行役員。慶應義塾大学を卒業後、2004年新卒入社。広告事業部門で営業局長・営業統括に就任後、Amebaプロデューサーを経て、2013年、2014年に2社の100%子会社代表取締役社長に就任。2016年より執行役員、2020年より専務執行役員、人事管轄採用戦略本部長も兼任する。

撮影/水野美隆 ヘアメーク/小松胡桃(ROI)取材/坂本結香 再構成/Bravoworks.Inc

Feature

Magazine

最新号 202405月号

3月28日発売/
表紙モデル:山本美月

Pickup