意外と読めない漢字シリーズ、今回は「畳語(ジョウゴ)」を紹介します。「畳語」とは、「同じ単語、または語根を重ねて一語としたもの」で、「知らず知らず」「泣く泣く」の類です。「人人(人々)」「木木(木々)」のように漢字一字を重ねたもから、読みにくいと思われるものを集めてみました。
なお、「人々」「木々」などで使われる「々」は、前の漢字の繰り返すことを表わす「記号」で、「同の字点」とか「ノマ点」などと呼ばれます。漢字ではないのでそのものの読み方はありません。これを使う場合と、漢字をそのまま繰り返す場合とありますので、その両方を示してあります。
1.「交交(交々)」
最初は「交交(交々)」です。「交」の字は、常用漢字表では、「コウ/まじわる・まじえる・まじる・まざる・まぜる・かう・かわす」の音訓が示されています。それでは、「交交」の場合の読みは何でしょうか。ヒントとなる例文は、「悲喜交交至る」。これで、いかがでしょうか?
正解は「こもごも」です。読むことができれば、「つぎつぎに。かわるがわる」という意味は簡単ですね。
2.「然然(然々)」
次は「然然(然々)」です。「然」の字は、常用漢字表では、「ゼン・ネン」の音読みが示されています。「然然」は、この表にはない訓読みで読んでください。ヒントとなる例文は、「理由を然然と述べる」。これでいかがでしょうか?
正解は「しかじか」で、「具体的に述べたり、文章を繰り返したりすることを省略する」時に使います。学生時代の古典の授業で、「然り(しかり)」という語を覚えた記憶はありますか?「そうである」という意味ですが、「然(しか)」の中に「そのように」と、あるものを指し示します。同じような語である「斯く斯く(かくかく)」と組み合わせて、「かくかくしかじか」使うことも多いですね。
3.「努努(努々)」
最後は難問の「努努(努々)」です。「常用漢字表では、「ド/つとめる」の音訓が示されています。「努努」は「つとめる」以外の訓読みで読んでください。ヒントとなる例文は、「努努忘れてはいけない」。これでいかがでしょうか?
正解は「ゆめゆめ」です。例文のように、「禁止」表現が次に来る場合には、「決して・断じて」という意味になり、「努努思わなかった」のように、「打消」表現が次に来る場合は、「少しも・全く」の意味を持ちます。もともと「努(ゆめ)」という語にこの意味があり、二回繰り返すことで、その強調表現となります。なお、この語の由来は諸説あるようですが、そのひとつに「忌目(ゆめ)」という語があり、「謹んでよく見よ」と注意を促す際に使われたというのがあります。いずれにしても、「どど」とは読まないでください。
実際には、「こもごも」「しかじか」「ゆめゆめ」と、ひらがなで書くこと多い「表外読み」の言葉ですが、漢字で書かれたものに遭遇した時にも、さらっと読みたい3語でした。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「古語林」(大修館書店)
・「漢字源」(角川書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)