白く透き通るような肌と華奢な手脚--それ以上に印象に残ったのが、その美しい言葉遣い。気取らずかつ丁寧な話し方と客観的な視点は、著作と通じるものがあるように思いました。
悪しきものは絶ち、いいと思えるものを仲間や後輩に残していきたい
幸運な人というより、幸福な人でありたい
本屋さんで目に飛び込んできた谷川俊太郎さんの『幸せについて』に、「幸運は神頼み、幸福は自分頼みなんだよね」という一節があり、本当にその通りだなと心を打たれました。「幸運」って言葉の中に「運」の一文字があるように、自分で何かをするより願っていることの方が多くて、それよりも自ら得たもので幸せでいる方が満たされる。「幸運」と「幸福」は、同じカテゴライズにされるワードではあるけれど、自分で自分を幸せにできる「幸福」な人でありたいなと思っています。
年齢を重ねて経験できることが多くなり、失敗も成功もする中で、多少なりとも人に助言を求められるシーンが増えてきました。そういうときに「私が●歳の頃はこうだったよ」と自分の経験だけを語って終わるのではなく、相手に親身に寄り添って対話ができる人でありたい。自分が目上の方に相談をさせていただいたときに、手を差し伸べてもらえたことがうれしかったから、私も困っていたり助けを求めている人に応えられる人でいたい。自分がしてもらったことを仲間や後輩にお返ししたいし、悪しきものは絶って、いいと思えるものを残していきたいです。感覚が自分の年齢で固まると視野が狭くなるから、心の年齢感は幅広く、新しい意見も取り入れて、柔軟な考えを持って発信できる人でいることも心掛けています。実際に30歳になってみて、意外と子どものままだなと感じているのですが、そのことにがっかりせず前向きに捉えています。年相応の大人らしさは身につけつつ、心はずっとみずみずしさを持ち続けていきたいです。
心が無になれるパン作りはリフレッシュ法のひとつ
混ぜたり、泡立てたり、捏ねたりと、目の前のことに集中して心が無になれるので、リフレッシュしたい日はパンを焼きます。もやっとした気持ちやイライラをボールの中に詰め込んで捏ねて、焼いて、食べて、自分で完結させるのも私流。根がオタクなのでハマるとそのことばかり気になって、最近はSNSでパンネタをリサーチしたり、気になるパン屋さん巡りにもハマっています。
日常生活の中で書き溜めたメモがストーリーのアイディアに
初めて小説を書くにあたり、たくさんの小説やエッセイを読んで、好きな文体や自分が書きたい事柄を模索しました。執筆業を始めてからは、日常生活で経験したことや人と話したこと、自分が感じたことを書き留めるようにしていて、登場人物やストーリーに反映しています。小説第2作目となる『累々』は連作短編集。『累々』¥1,540(集英社)
PROFILE
松井玲奈さん
1991年生まれ。愛知県豊橋市出身。役者・作家。2008年芸能界デビュー。役者としてNHK連続テレビ小説「まんぷく」「エール」に出演など、テレビ・映画・舞台と幅広く活躍中。2019年「カモフラージュ」で小説家デビュー。現在「小説TRIPPER」(朝日新聞出版)でエッセイを連載中。2022年秋公開予定、島本理生原作の映画「よだかの片想い」では、主演を務める。
撮影/YUJI TAKEUCHI〈BALLPARK〉 ヘアメーク/白石久美子 スタイリング/船橋翔大〈DRAGONFRUIT〉 再構成/Bravoworks.Inc