1月15日に、「大学入試センター試験」から名前を変えて2回目となる「共通テスト」が実施されました。この記事を読んでいるのは、漢字に興味を持っている方が多いので、新聞やネットで問題を見た方もいるでしょう。
試験では、漢字問題は大問の第1問のいわゆる評論文と呼ばれる文章の中で問われますが、マークシートの試験のため、該当するものを選択肢から選ぶというスタイルです。漢字自体は、基本すべて常用漢字内の常識的なものばかりですが、さすがに大学入試の問題文中で使用される用語だけに、なじみの薄いものもあり、意味までも理解できていないと正解を選べないものも含まれます。
そこで今週は、「共通テスト」問題をアレンジして皆さんに出題します。
1.「生粋」
実際の共通テスト設問は、「本文中の傍線部のカタカナを漢字にした際に使う漢字が含まれるものを、同じくカタカナで書かれた選択肢から選ぶ」というスタイル。傍線部「変身をトげる」(正解は「遂」)の選択肢として、この「生粋」がありました。「生粋の江戸っ子」のように使うのがヒントです。さて、何て読みますか?
「ショウスイ」「なまいき」と読んだ人はいませんか。正解は「キッスイ」でした。つまり、この「生粋」は選んではいけない選択肢でした。しかし、傍線部「遂げる」がわかった受験生が、「遂」を求めて、つい選んでしまう選択肢かもしれませんね。
漢字「生」は、音読みも訓読みも含めて、多くの読みを持つ漢字の代表ですが、「生糸(きいと)」のように「き」と読む場合は、「混じり気(け)がない」という意味を持ちます。この「生粋」は、「きスイ」が「きっスイ」と発音変化した(促音「っ」が入り込んだ)ものです。意味は「混じりけが全くないことこと」です。 なお、書き取りの際に、「粋」を字形が似ている「枠(わく)」を書いてしまいがちなので注意しましょう。
2.「完遂」
先ほど取り上げた、「変身をトげる」(正解は「遂」)の正解となる選択肢(もちろん、「完遂」はカタカナ表記ですが)がこれです。「計画を完遂する」のように使います。さて、何て読みますか?
正解は「カンスイ」でした。実際、この「完遂」は「カンつい」と誤読してしまう人が多い言葉です。間違えるのは、「遂」には「遂(つい)」という訓読みがあるので、音読みの「スイ」を「つい」と勘違いしてしまうのでしょう。したがって、「完遂」を「カンスイ」と読めない受験生は、正解できなかったかもしれません。意味は「完全に成し遂(と)げること」です。なお、「遂」を含む熟語で、よく使われる「遂行」(○スイコウ ×ツイコウ)でも同じ間違いが起きやすいので気をつけてください。
3.「緩衝」
共通テストでは、問題文中の傍線部「心がキズついた」(正解は「傷」)の選択肢として、この「緩衝」を含む選択肢がありました。「箱に緩衝材を詰める」のように使います。何て読みますか?
正解は「カンショウ」です。共通テストの設問では、傍線部の「キズ(傷)」が簡単なせいか、選択肢がこの「カンショウ(緩衝)」を含め、すべて「カンショウ」で統一され、「勧奨」「鑑賞」「感傷」と並びました。正解は「感傷」ですが、この「緩衝」と「勧奨」あたりが手ごわいですね。なお、選択肢の文にある「緩衝材」とは、あの「プチプチ」に代表される「物品を衝撃から守る素材」のこと。「あれには癒(いや)される……」という人も多いのでは。
受験生の皆さんも、ここは気持ちをがらっと切り替えて、次の試験に向かってくださいね。では、今回はこのへんで。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)