ミュージカル界の貴公子的存在で映像作品でも多数、主演を務めている古川雄大さん。2月には大きな鼻にコンプレックスを持つ主人公でおなじみの『シラノ・ド・ベルジュラック』を現代的に脚色した舞台に主演。ご本人のイメージからはかけ離れたような役柄に思える、10年ぶりのストレートプレイ主演作にかける思いをお聞きします!
―国内外の錚々たる名優が再演を重ね、映画化もされている『シラノ・ド・ベルジュラック』に主演。さらに古川さんにとってストレートプレイでは10年ぶりの主演作となります。
ずっとやりたいと思っていたストレートプレイで、しかも主演に恵まれたことにとても感謝しています。いろいろな方のこの作品への想いを聞いていると「こういう考え方もあるのか」「こんな深い意味もあったんだ」など、新しい発見をすることばかりです。今日から立ち稽古が始まったのですが(取材時)、本を読んでいても毎日新しい魅力が見つかるくらい、深い内容になっています。「もっとこの作品を知らないと!」と気負ってしまうこともありますが、日々ワクワクしながら楽しく稽古に臨んでいます。
―“現代的に脚色されたマーティン・クリンプ版『シラノ・ド・ベルジュラック』”ということですが、初めて脚本を読んだ時の感想は?
初めて読んだ時に思わず口から出た言葉は「マジか?!」です(笑)。「とんでもない作品に出会ってしまった!」って。作品から感じた新しさは「何も説明がないこと」です。特別な衣装も着ない、小道具もない、その状況を説明しない。シラノの一番の特徴である鼻を付けないこともとても斬新です。身振りや手振りもある程度そぎ落とした中で、言葉だけで伝えていくということが今までにない新しさだと思います。それが最大の難しさでもあります。これを克服する演技力を身につけるために、今は稽古を頑張るのみです!
―今回のシラノは鼻を付けないということですが、外見にコンプレックスがあるシラノを「舞台の王子様」というイメージの古川さんが演じるのがとても新鮮です。
「僕が、あのシラノを?!」とはまったく思わなかったです。今回は鼻は付けませんが、シラノがコンプレックスを持っている設定は変わりありません。そして僕もシラノのようにコンプレックスを持っています。なのでシラノの気持ちがよくわかるんです。だからこそ僕がこの作品をやる意味があるんだろうな、巡り合ったんだろうなと運命的なものを感じているくらいです。コンプレックスは作品のテーマでもあり、コンプレックスからくる弱さ、コンプレックスとどう向き合って生きるかなどが織り込まれています。多くの方が多かれ少なかれコンプレックスを持っていますよね。作品にはコンプレックスが人生を左右する場面がたくさんあるので、共感しながら観ていただけるだろうなと思っています。
―最後に、この作品にかける意気込みを教えて下さい。
10年ぶりのストレートプレイでの主演で、言葉のみで伝えないといけないことの難しさを強く感じています。そんな中で演出の谷賢一さんがいろいろなプランを試させてくれるんです。たくさん試した中で答えを見つけるという過程はとても刺激的で楽しいです。たくさん試して、そしてそぎ落として。これを繰り返してゴールに向かって行くんだと思います。このような環境を与えてもらえるのはとてもありがたいことなので、これからもちぢこまらずに思い切りやらせていただこうと思っています! でも、本番はどうなるかわからないです(笑)。作品のポイントはお客様が決めることですし、誰に感情移入するかもお客様次第。毎日、お客様や共演者との闘いになるんだろうなって。そして、自分とどう向き合うか。一番は自分との闘いなんだと思います。お客様には、たくさんのことを試して生まれたシラノと舞台上で闘っている僕の姿を観ていただきたいです。僕は、お客様がシラノという舞台をどう感じるのか楽しみにしています!
古川雄大
‘87年生まれ。’07年俳優デビュー。ミュージカル『黒執事』『ロミオ&ジュリエット』『モーツァルト!』などでタイトルロールを、テレビドラマでは『女の戦争~バチェラー殺人事件~』『私の正しいお兄ちゃん』で主演を務める。今回は満を持して10年振りのストレートプレイ主演に挑む。
シラノ・ド・ベルジュラック
17世紀フランスに実在した詩人にして剣豪のシラノを主人公にした戯曲。大きな鼻にコンプレックスを持ちながらも一人の女性を愛し続けた愛の物語に現代的な脚色がなされ、前代未聞の『シラノ・ド・ベルジュラック』が誕生。●東京公演2月7日(月)~20日(日)東京芸術劇場 プレイハウス/大阪公演2月25日(金)~27日(日)COOL JAPAN OSAKA TTホールhttps://www.cyrano.jp/
撮影/IKKI FUKUDA 取材/よしだなお 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)