成田凌「“何もしない”が役づくりの鍵でした」主演作『くれなずめ』を振り返る

誰もが経験をしている、学生時代の何気ない日常。大それた事件もないのに、毎日が楽しかったあの頃。そんな青春を変わらずにいてほしいと願っても、そんなことが叶うはずもなく、人は大人になっていく…。映画『くれなずめ』は、大切な時間を共にすごした6人の仲間たちが、友人の結婚式の余興のために5年ぶりに集まったことをきっかけに、他愛もない思い出に浸りながら「友の死」という真実にぶつかる物語。本作で主人公の吉尾を演じる成田凌さんに、映画のみどころを教えて頂きました!

「他愛もない時間こそ愛おしい」と思わせてくれた脚本

『くれなずめ』を手掛けた松居監

『くれなずめ』を手掛けた松居監督は「もともと仕事をしたいと思っていた方にお声がけした」とおっしゃっていたのですが、映画のオファーを引き受けた決め手はなんだったのでしょうか?

「今回が松居さんとの初めてのお仕事だったんです。事務所通してオファーをいただいて、台本を読んですぐ、『お受けしたい』とお返事しました。当時松居さんが舞台をやっていたので、それを観に行って、上演後に挨拶をさせていただいたときに、『ぜひやらせてください』と。その時が初対面ですね。まず第一に松居さんと仕事をしたかったっていうのがあって、オファーをいただいた時点ですでに前向きに考えていたんですが、事前にいただいた脚本を読んでみたら、すごく面白くて。やるしかないな、と」

脚本のどういった部分に惹かれたのでしょうか?

「劇中には印象的な台詞もたくさんあるんですが、一番は、脚本に描かれている学生時代のどうしようもない、他愛もなさすぎる時間がすごく愛おしく思えた点ですね。どうでもいい時間こそ、どうでもよくない、みたいな。大事じゃないところこそ、大事なんだって思える脚本だったんです。

こういう作品って意外と危険で。あまりにも内輪っぽい笑いになってしまっていると、観ている人が寒くなってしまうんですよね。でも『くれなずめ』は違っていて。一回脚本を読んだだけで、作品をすごく愛おしく思えたんです。そういう内輪っぽさがありつつも、何気ないシーンをすごく大切に描けるなと想像ができたんです。そういう芝居がすごく好きだし、僕がやりたいこと。脚本を読んだ時点で演じるのがすごく楽しみでしたし、完成した映画は好きなシーンがいっぱい集まった仕上がりになりました」

ハマケンさんにはすごく助けてもらいました。

特に好きなシーンを上げるとする

特に好きなシーンを上げるとするなら、どこでしょう?

「難しいですけれど……今ぽんっと浮かんだのは、一番最後のエンドロールで、俺以外の5人がただただ歩いているシーンが好きですね。あれこそこの映画の主題というか、あのシーンも吉尾がいるときといない時で、同じセリフを言っていて。「タクシーで行く?」「いやぁ、5人だから、2・3で」。吉尾がいるはず場所に吉尾はいない、まるで天国からみんなを見ているような気分っていうのは、吉尾を演じた俺だからこそ感じられる気持ちがあって。「あぁ、俺がいない5人ってこんな感じなんだ」としみじみ思わされるあの感じ、好きでしたね」

共演された5人の役者の方々とは、どのように内輪感のある雰囲気を作ったのでしょうか?

「何か特別なことをしたわけではないですが、ただただ仲良し集団みたいな雰囲気が出来上がってましたね。撮影に入る前から楽しかったです。自然に昔からの友達のような関係性が作れたと思います。みんな本当に優しいんですが、特にハマケンさん(浜野謙太さん)にはたくさん助けてもらいました。あのメンバーの中で僕が一番年下で、ハマケンさんが一番年上なんです。その状況で、どんなときでも面白く変えてくれる。先輩がそんな風に接してくださると、すごくやりやすくて。撮影が終わった頃にはみんなそれぞれの恥部をある程度バラしてしまったような、このメンバーのあいだに恥ずかしいことなんてないなって思えるような関係性が築けました」

“何もしない”役づくりから見えてきた作品の意味

成田さん自身の役づくりはどのよ

成田さん自身の役づくりはどのように行ったのでしょう?

「この役に対しては“役づくりも何もないな”と考えて、周りの人たちに任せる部分が大きかったですね。友人の記憶の中の人なので、みんなにお任せしますって感じですかね。6人でいるときの吉尾と、それぞれの友人と対峙している時の吉尾はまた違うし、それでいいし。人って誰から見ても同じというわけではなくて、ある人から見ればはっきり主張する人で、別の人から見れば流されやすい人だったりするわけで。みんなそういう面があると思うんですよね。その時吉尾が一緒にいる人が感じる吉尾になればよかったので、俺が役づくりをしてしまうのは余計というか……作品の見え方が変わってしまう気がして、できる限り“何もしない”を意識していました」

“変わってしまうこと”は仕方ない

映画のタイトル『くれなずめ』は

映画のタイトル『くれなずめ』は日が暮れそうでなかなか暮れないでいる状態を表す“暮れなずむ”を変化させ、命令形にした造語。成田さん自身が、変わらないで欲しいと感じるのはどんな時でしょうか?

「僕は、どうせ変わってしまうということを受け入れてるという感じというか(笑)。例えば『俺たちずっと仲良しでいような!』と言っていても、必ずどちらかが先に死んでしまうじゃないですか。それを分かった上で、『ずっと仲良しでいよう!』って言っていたい、という感じです。

今回の映画で、絶対に未来には“死”があるということを学びました。変わりたくないなと思っていても、自分たちをとりまく環境は変わっていってしまう。いろんな“くれなずめ”があるけれど、いつかは変わってしまう、それは仕方ない。いつかは受け入れなければいけないものを、5人はどう受け入れることにしたのか。この映画が描きだす、5人の答え、彼らなりの答え、ひとつの答えを見届けてもらいたいです」

朝早くから夜まで取材続きだった


朝早くから夜まで取材続きだったにもかかわらず、疲れた顔ひとつ見せずスマートな対応を見せてくれた成田さん。ひとつひとつの言葉を大切に、映画について語る姿が印象的でした(取材スタッフ一同、より一層ファンに!)。4月24日(土)公開予定の後編では、休日の過ごし方やリフレッシュ方法などよりプライベートなトピックに迫ります!

成田凌

1993年11月22日生まれ。埼玉県出身。2013年に「MEN’S NON-NO」専属モデルとしてデビュー。『窮鼠はチーズの夢を見る』で日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。連続テレビ小説『おちょやん』出演中。公開中に『まともじゃないのは君も一緒』『ホムンクルス』などがある。

映画『くれなずめ』 「アズミ・

映画『くれなずめ』
「アズミ・ハルコは行方不明」「君が君で君だ」の松居大悟監督が、自身の体験を基に描いたオリジナルの舞台劇を映画化。高校時代に帰宅部でつるんでいた6人の仲間たちが、友人の結婚披露宴で余興をするため5年ぶりに集まった。恥ずかしい余興を披露した後、彼らは披露宴と二次会の間の妙に長い時間を持て余しながら、高校時代の思い出を振り返る。自分たちは今も友だちで、これからもずっとその関係は変わらないと信じる彼らだったが……。

近日公開予定
kurenazume.com

フォトギャラリー(全画像を見る5枚)

———————-

シャツ¥57,860 パンツ¥65,560/ともにナヌーシュカ(ヒラオインク tel. 03-5771-8809) その他/スタイリスト私物

撮影/永峰拓也 ヘアメーク/須賀元子(星野事務所) スタイリング/伊藤省吾(sitor) 取材/川端宏実 編集/宮島彰子(CLASSY.ONLINE編集室)

Feature

Magazine

最新号 202406月号

4月26日発売/
表紙モデル:山本美月

Pickup