この度CLASSY.ONLINEに連載させてもらうことになった吉田と申します。素性の知れない者が書いている連載を読むのは不安かと思い、第一回となる今回は軽く自己紹介をさせていただこうと思いました。普段はトリプルファイヤーというバンドで活動する傍ら、文章などを書いて暮らしています。たまにテレビ番組に出演した際にはダメ人間的キャラクターとして扱われがちです。実際はそこまでダメなわけでもないと思っているのですが、ダメな印象ありきで仕事をいただくことも割とよくあります。
先日打合せの際に参考資料として頂いた『CLASSY.』をペラペラとめくってみたところ、おデコを出してパリッとした女性モデルが多く写っていました。昼はよく知らないですが丸の内的なオフィスで働き、夜は神泉あたりのビストロに行ったりする、洗練された大人の女性に多く読まれていることが推測されます。普段私がよく行くお店(松屋・日高屋・相席居酒屋)にあまり現れないタイプの読者が多いように見受けられました。なぜそのようなシュッとした女性ファッション誌から私に依頼が来たのかは不明ですが、正直言って私は『CLASSY.』を読んでいるような女性から好かれたいと思っているので、喜んでコラムを書かせていただくことにしたのです。
バンドマンというと、付き合ってはいけないいわゆる3B男(バンドマン・バーテンダー・美容師)として括られる印象で、洗練された女性からは何となく危険人物だと思われやすいのではないかと危惧しています。しかし私はそのようなチャラついた典型的バンドマンとは違うので嫌わないでください。
以前とあるフェスに出演した際、出演者を呼んでトークするコーナーがありました。そこで芸人から「やっぱりバンドマンやから女遊びしまくってるんでしょ?」と尋ねられ返答に窮していると、「いや、どう見ても遊んでる系のバンドマンちゃうやろ!」とツッコミが入り、ドッと笑いが起きました。その時はなぜだか少しショックを受けてしまいましたが、そんなボケが成立するくらい、私は客観的に見て誠実な男だということでしょう。そのような大人の男の目線から、恋愛論や男のホンネを語っていく文章を綴り、洗練された女性をハッとさせたり賛同を集めていきたいと考えました。
とりあえず今回書くテーマの取っ掛かりを掴もうと、頂いた『CLASSY.』を開き「シンプル服に魔法をかける‟新・ブランドバッグ”名鑑」「CLASSY.Closetで揃える真夏の必須アイテム11選」「大人の夏メークは‟シャーベットカラー”に限る」なる記事を読んでみましたが、残念ながら全く頭に入って来ませんでした。やはり、自分ごときが『CLASSY.』で何か物申すのは無理だったのか…そう諦めかけていた時、唯一自分に関係のある記事を発見したのです。
気づくと私は10月号の「調味料にこだわれば、ご飯が劇的に美味しくなる!」を熟読していました。
「大人の夏メークは”シャーベットカラー”に限る」のかどうかは私にはわかりませんが、「調味料にこだわれば、ご飯が劇的に美味しくなる」というのは経験的に実感できます。焼肉やサラダを食べていると、これはタレやドレッシングが美味いから美味いだけなんじゃないかと思うことがよくありますが、料理全般において、調味料が料理の味の半分程度を占めていると言っても過言ではないのではないでしょうか。そう考えれば、私は今まで調味料にこだわってこなさすぎたのかもしれません。現在家にある調味料の多くは、最寄りのコンビニの1コーナーで買った、コンビニの安価なプライベートブランドのものです。最寄りのコンビニには麺つゆも砂糖も塩も一種類しか置いてないので、こだわるどころかまず選択肢がありません。「コンビニのプライベートブランドのものは意外とその辺の高い奴よりしっかりしている」といういつかネットの記事で聞きかじった情報を心の頼りにしていましたが、実際のところは、ただ家から遠いスーパーに行くのが面倒なだけでした。成城石井やカルディに売っているような高い調味料を買いたい。そうすればご飯が劇的に美味しくなり、QOLが上がり、性格が明るくなって収入も増えるのではないか。
一つ不安があるとすれば、果たして自炊を習慣として継続していけるのかということです。コロナで家からあまり出なくなった今年の春、数年ぶりに調味料を買い込んで自炊を始めました。肉を炒めたり、野菜を煮込んだりしていると無駄な想念が消えていくようで、体も健康になった気がして、自炊最高、と思ったものですが、あれから半年ほどが過ぎて自炊の頻度は次第に週1回、月1回と減っていきました。適当に保管していた米には得体のしれない虫が湧きました。米を研ぐ時に洗い流していましたがそれも面倒になり、今ではできるだけ視界に入れないように生活しています。塩はカチカチになって大さじとか小さじですくえなくなり終盤は表面を爪で削り取るようにして使っていました。開封後要冷蔵の麺つゆを常温で置いておいたらヤバい臭いがし始め、全て麺つゆトラップ(麺つゆに洗剤を入れてコバエを取る)として処理しました。大量のコバエが取れましたが、自炊を継続できる管理能力があればコバエが大量に発生するような事態にもならなかったでしょう。
高い調味料を買ったところで腐らせてしまうだけではないのか。しかし逆に考えることもできます。今までは安い調味料を使っていたせいで、心のどこかに「最悪ダメになってもいいや」という甘えがあったのかもしれません。ギターが上手くなりたいなら、無理をしてもいいギターを買え、という話がありますが料理でも同じです。いい調味料を買って自分にプレッシャーをかけることによって、自炊を継続していけるのでしょう。夜風も涼しくなり、虫も発生しにくくなってきたこの時期。改めて自炊を始めるには絶好の時期だと言えます。
『CLASSY.』を読んでそんなことを学んでいるのは自分だけかもしれません。今後はファッションや恋愛の情報にもアンテナを張り、多様なコラムを展開していきたいと思いますので今後ともよろしくお願いします。
PROFILE
吉田靖直 よしだ やすなお
1987年4月9日生まれ。香川県出身。バンド「トリプルファイヤー」ボーカル。音楽活動の他、映画やドラマ、舞台、大喜利イベント等にも出演。コラム執筆も。
トリプルファイヤー公式ウェブサイト:https://triplefirefirefire.tumblr.com/
『散歩の達人』https://san-tatsu.jp/magazine/triple_fire/
『クイック・ジャパン ウェブ』https://qjweb.jp/contributor/19262/
イラスト/谷端実