鈴木愛理さんインタビュー「『人に求められること』が『自分のやりたいこと』でいい」

2022年は連続ドラマ初主演もこなし、歌に演技に、いつも以上に飛躍の年だった鈴木愛理さん。春には29歳になりますが、「アイドルが憧れるアイドル」としてスタートした愛理さんの20代はどんなものだったのでしょうか。輝かしいキャリアを持っていながら謙虚でいつもポジティブな彼女の「今まで」と「これから」について、お話を伺いました。

アイドルは卒業して終わりじゃない。後輩の道しるべになりたい

10代からハロプロのアイドルグ

10代からハロプロのアイドルグループ℃-uteのメンバーとして活動し、20代の始まりは背伸びしたい気持ちでスタートしたのを覚えています。大人になりたくて前髪を伸ばして、21歳は人生の中で唯一ワンレンにしていた時期でした。22歳で大学卒業、23歳で℃-uteが解散して、それまで続けてきた学業とアイドル活動が同時にひと段落したことは、かなり大きい転機でした。8歳からこの世界に入ったので、23歳の後半は、15年ぶりに“立ち止まる”という選択をした時期。表立った活動をしていなかったので、「世間から忘れられちゃうんじゃないかな」と不安もありましたが、母親が倒れたことで実家に戻り、家族と過ごす中で自分を見つめ直せた期間でもありました。
アイドル時代はずっと、自分の意見を言うことはわがままだと思っていたんです。いただいたお仕事をこなす段階でいかに自分らしさを出すかがアイドルとしてプロフェッショナルだと捉えていたし、それを追求していました。でもソロになった途端に「愛理は何が歌いたいの?」「どんなライブがしたいの?」と自分の意見を求められる機会が増えて。やりたいことが具体的には思い浮かばなくて、そんな自分に絶望的な気持ちになったことも。実家で過ごした時間は、「どうして歌が好きなのか」と自分に問いかけて、原点に戻るきっかけになりました。自分の中から生み出す作業に慣れるまで苦労しましたが、曲、写真集、グッズをゼロから作る過程に携わる中で、今では伝えたいことも熱量も大きくなっています。私の発言がすべてだから、予想していたものが違う結果になっても自分の責任。今は発信するものに覚悟とこだわりを持って向き合っています。
28歳になり、アイドルの世界の後輩はどんどん増えていますが、昔から先輩風を吹かせるのは苦手で、先日もモーニング娘。’22のライブを観に行った際に、メンバーたちが挨拶してくれたのも照れ臭くて。ひとりで後輩の団体に立ち向かうのが恥ずかしい(笑) ハロプロ時代、後輩との接し方で意識していたのは、変化に気づいて褒めること。私自身、“ポジティブの伝道師”とか言いながら、褒められないとネガティブに考えて自信がなくなるタイプで。特に自分と同じようなタイプの後輩は気にかけて、「今日のライブのあの部分が良かったよ!」などと声をかけるようにしていました。ハロプロを卒業してソロアーティストになるメンバーはまだあまり多くないので、自分の活動が後輩たちにとってひとつの道しるべになれたらいいな、という思いも原動力になっています。私もまだまだ勉強中ですが、アイドルを卒業してそこで終わりじゃないよ、ということを証明していきたいです。

自分の気持ちに正直に、心身ともにヘルシーでいることが今の人生のテーマ

コロナ禍で自分と向き合う時間が
ジャケット¥21,780(リズレイ/キュアリス)ニット¥5,390スカート¥9,350(ともにザ ショップ ティーケー/ワールド プレスインフォメーション)ネックレス¥20,900<テンプル オブ ザ サン>靴¥29,700<ソル サナ>(ともにJACK of ALL TRADES press room)バングル¥19,800(イン ムード/フォーティーン ショールーム)

コロナ禍で自分と向き合う時間が持てて、自分の気持ちに嘘をつかず、心も体も健康でいること、が人生のテーマになりました。歌にもその日の感情や体調が乗るし、良くも悪くも偽りの発言が伝わってしまうことは、ソロになってから強く実感したこと。「愛理ちゃんの歌に元気をもらっています!」というファンの方の言葉をいただいて、一緒に人生を歩んでくれている方たちの存在を感じ取る度に、「もっとみんなの役に立ちたい!」という想いが強くなる。自分がヘルシーでいないと人にパワーを与えられないから、自分に正直に、心身ともに健康に過ごすことを大切にしています。

23歳でソロになり、やりたいことを模索する中で、人に求められること=自分のやりたいこと、という気づきがありました。人に求められることをやるのは自我がないのではと思われがちですが、そうではなくて「誰かの喜ぶ顔が見たい」という自我を叶えるためのプロセスのひとつ。私の場合、自分のためよりも、誰かの幸せや笑顔のための方が頑張れる。そこに自分らしさを見出せたことも、20代で得た大きな変化です。そして、どんな意見も一旦受け入れ、いい成分はエネルギーにして、ネガティブな声は流せるようになったのも、年齢を重ねて得意になったことのひとつ。今は、SNSのボタンひとつで自分の評価が目に見える時代。周りには「人と比べちゃダメだよ」と言っておきながら、自分はつい比べちゃうんですよね。子どもの頃から比べられる世界にいたし、ペンライトの数で自分のファンの量が分かる環境に身を置いていたから、「気にしい」な部分もあるのですが…。SNSはすぐに反応をキャッチできてありがたい部分もあるけど、逆も然りで。インスタもツイッターも始めたばかりの頃よりは固執しなくなりました。デジタルデトックスはなかなかできないから、地球レベルでSNS禁止DAYを月1くらいでやって欲しい(笑) 。時には距離を置きながら、上手く付き合っていかなきゃと思っています。

11月に発売した写真集『nectar』の帯にも書いたのですが、私は「将来こうありたい」と考えるよりも、想像もしていない未来があるほうが面白いし、好き。20代は、ソロ活動だけじゃなく、モデル、「クラシックTV」や「オーイシマサヨシ×鈴木愛理のアニソン神曲カバーでしょdeショー‼」のMCなど、たくさんの新たなお仕事に出合えました。振り返ると想像もしていなかったお仕事ほど長く続いているんですよね。元々滑舌が悪いから、話すお仕事はできないと思い込んでいました。でもソロになりラジオを始めたり、「クラシックTV」のナビゲーターを務める中で、徐々に自信がつき、引き出しも増えてきました。誰かのために頑張ることで自分らしく生きられるから、これから迎える30代も、向上心を持って新しい挑戦をし続けたい。いただいたチャンスを掴めるように土台作りはきちんとして、想像を超えた波が来たときに、楽しく乗れる自分でいたいです。

PROFILE

鈴木愛理
1994年千葉生まれ、28歳。8歳でハロープロジェクト・キッズオーディションに合格、2005年にアイドルグループ℃-uteのメンバーとしてデビュー。「アイドルが憧れるアイドル」として絶大な人気を博す。2017年にハロー!プロジェクトを卒業し、翌年ソロデビュー。歌手としてのみならず、モデルや女優業など幅広く活躍中。

【問い合わせ先】
キュアリス 06‐6243ー1235 / ワールド プレスインフォメーション 03-6851-4604 / JACK of ALL TRADES press room 03-3401-5001 / フォーティーン ショールーム 03-5772-1304

撮影/木村 敦 モデル/鈴木愛理 ヘアメーク/MAKI スタイリング/三好 彩 取材/坂本結香 構成/永吉徳子(CLASSY.ONLINE編集室)

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最新号 202405月号

3月28日発売/
表紙モデル:山本美月

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