「生」と書いて「なま」、「しょう」、「うむ」、「ふ」など……。一つの漢字に対して、いくつもの読み方があるケースは少なくありません。
そのため、漢字自体は簡単そうに見えても、珍しい読み方をするため読めなかった……なんてこともあるでしょう。
この記事では、そうした“簡単そうなのに読めない漢字”をピックアップしてご紹介。簡単そうだからと言って、油断は禁物ですよ。
1.「虐げる」
「むごい扱いをすること」「相手を苦しめたり、悩ませたりすること」を「虐げる」と言います。
たとえば「捕虜を虐げる」といったように使われる言葉ですが、送り仮名の「げる」から「さまたげる」、「自虐(じぎゃく)」の「ぎゃく」という読み方から「ぎゃくげる」などと読んでしまうのは誤りです。
そんな「虐げる」の正しい読み方は……
「しいたげる」です。
ちなみに「虐げる」と似た意味を持つ言葉に「苛める(いじめる)」があります。「虐げる」と併せて「苛める」の読み方も覚えておくと良いでしょう。
2.「返戻」
「返す」「戻す」と書いて「返戻」。「返戻」とは、漢字のとおり「借りたものを返すこと」や「返却」を意味する言葉です。
「返戻」は、よく「返戻金」「借りた書類を返戻する」などといった使われ方をします。特にお金を扱う仕事に就いている人は業務上、何気なくこの漢字を目にしているはずです。
そんな「返戻」の正しい読み方は……
「へんれい」です。よく「戻る(もどる)」「戻す(もどす)」などと読まれることがありますが、「もど(る)」や「もど(す)」は「戻」の訓読みで、音読みは「れい」。音読みも忘れずに覚えておきましょう。
3.「戦く」
「戦く」とは「恐怖で震えること」を意味する言葉です。「せんく」ではありませんよ。
たとえば、あまりの怖さに体が震えることを「恐怖に戦く」と表現することがあります。ちなみに「戦く」を「慄く」と表記する場合も。「慄く」でも「戦く」と読み方・意味は同じです。
そんな「戦く」の正しい読み方は……
「おののく」です。「戦く」単体でも十分に恐怖が伝わる言葉ですが、さらに「戦く」を強調した表現として「震え戦く(ふるえおののく)」などがあります。
4.「俤」
「幼い頃の俤が残っている」「母親の俤がある」など、「記憶に残っている顔の印象」や「(誰かに似た)顔つきや顔の様子」のことを「俤」と言います。
ちなみに「俤」は、人と、その弟が似ていることからできた漢字。ある人に弟の「俤」を感じたのでしょうね。
そんな「俤」の正しい読み方は……
「おもかげ」です。同じ読み方・同じ意味で「面影」という漢字もあり、普段は「面影」を使う方が多いでしょう。また、「面影」という漢字であれば、迷わず読めると言う人も少なくないはずです。
簡単そうなのに読めない漢字、あなたはいくつ読めましたか? 聞いたことがある、あるいは日常会話で使うことがあるような言葉でも、漢字表記になるとまるで別の言葉のように見えてしまうかもしれません。
もし今回読めなかった漢字があれば、改めて正しい読み方を覚えておくようにしましょう。
参考文献
一校舎漢字研究会〔編〕『きっと誰かに教えたくなる読めるようで読めない漢字2500』永岡書店
文/大内千明 画像/Shutterstock(fizkes、Rawpixel.com、Cookie Studio、Motortion Films)