リーダーズが聞きました!
結婚への焦り、どうしたらいいですか?
右:山﨑紗菜さん(28歳・事務職)
CLASSY.のライターとしても活動。自分の結婚願望が、自分からの切実な欲求なのか世間に翻弄されているのかわからず、あれこれ悩み中。
左:髙橋英礼奈さん(26歳・メディア関係)
結婚・出産する友人が増える一方、仕事と子育てを両立しているロールモデルが身近になかなか見つからず、将来の働き方に不安を感じる。
自分の真実の想いに気づくために気持ちの分解をしてみよう
紗菜:30歳までに結婚したほうがいいのかなと漠然と考えてはいるけれど、それが本当に自分の願望なのか、周りの目を気にしているだけなのかわからなくなることがあります。相手の気持ちも大切にしたいし、お互い納得いくタイミングで結婚したい。でもそれが30歳までに叶わなかったらどうしよう…と、20代後半になってから不安になることが増えちゃって。
阪井:そもそも“なぜ30歳までに結婚したいのか”といくつかの心情が絡まっている気持ちの分解をしてみるといいですね。
ジェラシー:そうですね。自分の気持ちを深掘りしつつ、いろんな幸せの形を持った人たちの実例も深掘りしていくといいと思います。自分にとっては何が幸せなのか、どんな人生を歩みたいのか気づきやすくなります。一般的ではない夫婦形態の人、シングルでも楽しそうな人とか、いろんな事例を集めてみてください。
紗菜:私この2年くらいで気持ちの分解はするようになったんですけど、「私の何がいけないんだろう…」と悪いところ探しの分解をしちゃってました。
ジェラシー:「彼がプロポーズしてくれないのはなぜ?」とか、他人が主体の分解になると辛くなっちゃう。「なんで今結婚したほうがいいのかな」「私にはどんな武器があるかな」「結婚しなかったら私はどういう生き方ができるかな」と、自分を主体にしてポジティブに考えてみてください!
紗菜:まわりが結婚し始めて、自分がまだ交際段階なのが恥ずかしく思えることがあるんです。たとえば、デートの写真をSNSにアップするのってもう幼いのかなとか、誰かの結婚報告のポストに比べたら軽く見えるのかなとか。結婚がすべてじゃないとわかってるけど、次のステージに進まなきゃと焦ってしまうんですよね。
阪井:「結婚してないといけない」という強迫観念から解放されることができればよいのでしょうね。結婚関連の意識調査や世界の結婚観を見てみるのもいいと思います。結婚しても幸せじゃない人はたくさんいるし、女性は結婚したほうが幸福度が下がるという研究結果もある。日本だけで生きていると結婚という形をとらないと困ることがたくさんあると思われがちだけど、世界を見れば家族の形もいまやさまざま。結婚と子どもを持つことがイコールではないし、ヨーロッパ圏では子どもの過半数が未婚者から生まれる国も多くあります。さらに日本の結婚観も移ろいます。極端な話、明治以前は離婚・再婚が当たり前。「結婚は一生に一度」のものではなかった。これだけ変化すると知れば、将来、日本もヨーロッパのように人の戸籍のあり方を気にしない結婚観になっている可能性も想像できます。今多くの人が他人の目を気にしてますけど、これも日本特有だと思えば少し気が楽になるかもしれませんね。
キャリアと結婚の両立は難しい?「30歳までに」と節目も気にしちゃう
英礼奈:キャリアを重ねていく中で結婚や出産について考えることが増えました。仕事と家庭、どちらも大切にしたいけど、それを叶えるには簡単でない現実もあると感じます。特に管理職のロールモデルが独身の女性ばかりだと「この道を進むなら家庭を持つことは難しいのかな」と自分の将来に迷いが生じてしまって。どうしても結婚したいわけじゃないけれど、しなければしないで周囲の目も気になるし、「30歳までに」と無意識に焦る気持ちもあって、何を優先すべきか正直すごく悩んでいます。
ジェラシー:私が新入社員の頃、10歳くらい上の先輩に「昔の女性は、仕事か家庭か片方に専念していればよかったけど、今は仕事・結婚・子どもと三拍子そろってる人が目立つから大変よね」と言われて、胸にズシンときたのを覚えています。そういう価値観をインストールしてしまうと、私も3つ全部手に入れて攻略したい!とスタンプラリーみたいな感覚に陥ってしまう…。現代は特に、その欲求が肥大化している気がします。
阪井:出世して理解のあるパートナーがいて可愛い子供もいて…と「よりよい結婚」を求めるせいで、結婚への道がハードになっていますよね。とはいえ、3つすべて望む人には手の届く社会であるべきだと思うんですけれど。
ジェラシー:そうですよね。でも実際には1つあるだけでいいし、3つ手に入れるにしてもアラサーのうちに揃えなくたっていい。ロールモデルがいなくても自分で道を切り開けばいいんです。
英礼奈:確かに、いつ何に集中するかは人それぞれでいいですよね。結婚後に将来の可能性の一つとして卵子凍結を選んだ知人もいるので、今の時代はいろんな道があるなと感じています。
ジェラシー:そうですね。仲間の事例を自分の心にストックし続けてみてください。友達だけじゃなくて、知り合いの知り合いとか、いろんな人を。うるさいおじさんおばさんが何か言ってるなと思うこともあるかもしれないけど(笑)、私の同世代にはこんな仲間がいるんだ、と広い視野と選択肢を持っておくと、自分なりの悩みの解決策も見つかると思いますよ。
阪井:それと、結婚の歴史や海外の現状を知識として入れておくのも呪縛から逃れる手段として勧めたいです。社会を俯瞰して見る目ができると、いろんな場面で助けになりますよ。
英礼奈:心の健康を保つためにもなりそうですね。身近な圧に負けなくてもいいんだなと、お二人のお話に背中を押していただけました。
いろんな観点から考えられるように知識を蓄えておくと役に立つ。事例収集は「エンタメ」からでもOK!
阪井:普段の生活の中だと身近な常識に囚われがちですが、いろんな観点で見たら“こんな呪縛に囚われる必要はなかった”“今当たり前だと思われてることって実はいい加減でしょうもない”と気づけて、楽になれるんじゃないかと(笑)。
ジェラシー:改めて、「結婚」の二文字に踊らされてるなってハッとしますよね。
阪井:そうですね。ただ世間の風潮や他人の言説に惑わされないように…と言うのは簡単なんですけど、個人の努力で頑張れという話で終わらない社会にしていきたいですよね。現代は正解がひとつしかないと考えられがちだし、エラーを許さない傾向。でもみんなが「いろんな形があってもいい」と考えられれば、呪縛からも逃れられるはず。自分や人を許すような気持ちで社会を考えていけると、自分にとってもいい未来選択をしていけるのかなと思います。あとは、悩みに関連するエンタメに触れるのも手軽でおすすめです(下枠参照)。何らかの形で知識を蓄えてみてください。きっとみなさんを救ってくれると思います。
今日の対談で、気持ちが楽になった!
「事例のストックを増やす活動が大事という話がすごく共感できて、これからはひとりで思い悩まず、たくさんの人の話を聞き続けたいと思いました。社会学的観点から考えてみるという発想はなかったので、阪井先生の『結婚の社会学』も絶対に読んでみます!」From ERENA
「毎日SNSを見て、他人の生活を目にする機会が当たり前にあるので、自分の見られ方も気にしてたんだなって改めて思いました。ダメな自己分析をして自己嫌悪に陥ることも多かったのですが、もっとプラス思考に考え、自分の幸せを追求してみたいと思います。」From SANA
教えてくれたのは…
社会学者・阪井裕一郎先生
慶應義塾大学文学部准教授。専門は家族社会学。著書に『事実婚と夫婦別姓の社会学』(白澤社)ほか多数。
コラムニストジェラシーくるみさん
東京大学卒業後、会社員と兼業で執筆。著書に『そろそろいい歳というけれど』『私たちのままならない幸せ』(主婦の友社)など。
見れば呪縛から自由になれる「エンタメリスト」
◼︎ジェラシーさん選
ドラマ『西園寺さんは家事をしない』(TBS)
2024年放送のドラマで同タイトルの漫画原作。独身女性が父子家庭と「疑似家族」を始めるコメディ。家族のあり方、男女の役割などを見つめ直せる、現代的な話。
◼︎阪井先生選
ドラマ『団地のふたり』(NHK)
ギャラクシー賞2024年10月度月間賞受賞。小説原作。50代独身女性2人の友情物語。自分らしい幸せとは何か、こんな生き方もいいなと、思いを巡らせるのに良い作品。
◼︎阪井先生選
ドラマ『貞淑なお仕事』(Netflix)
韓国ドラマ。4人の女性がアダルトグッズの販売事業をはじめ、社会的地位とお金を手にして、生き方や物事の捉え方が変わっていく様は必見。
◼︎ジェラシーさん選
小説『たぶん私たち一生最強』(新潮社)
小林早代子著。高校時代からの女友達4人が織りなす自由と決断の物語。人生の選択を迫られる20代、私たちはどんな幸せを追求するのか。CLASSY.世代にドンピシャ。
撮影/佐藤航嗣(UM)〈人物〉、河野 望〈静物〉 取材/野田春香 編集/越知恭子 再構成/Bravoworks,Inc.
※CLASSY.2025年6月号「「30歳までに結婚」の呪縛から自由になりたい!」より。
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。
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