【アーティストfoxcoさん独占イタンビュー】「今までの集大成がここに詰まっている」と話す、展覧会や人生観について深掘り

先日、初の空間も含めたインスタレーションの展覧会を東京にて行ったfoxcoさんがCLASSY.に初登場! 会社員を経験したのち、イラストレーターへと転身。今やアーティストとしてワールドワイドに活躍する彼女に展覧会やこれまでのお仕事、結婚観についてなどお伺いしてきました。

「今回の展覧会は今までの私の集大成」

――まずは今回東京で行われた展覧会「The Longest Night」について教えてください

今回の「The Longest Night」はロンドンの冬とfoxcoを代表する「おばけいぬ」というキャラクターがメインになっています。おばけいぬは今は一緒にいない存在ですが、ガーディアンのようにそばで私たちを守ってくれている存在のキャラクター。見どころはたくさんあるのですが、渡英を経て学んだアニメーションも登場しますし、初めてインスタレーションにも取り組んだので、まさに今までの私の集大成とも言える空間になっています。

――集大成ということで、イラストだけでなく空間づくりもたくさんこだわったかと思います。特にどんなところがポイントになりますか?

夜の空間はぜひ見ていただきたいところです。光るおばけいぬのスタチューがいるのですが、夜になるにつれて光が灯り、幻想的な空間になります。私だけでなくチームのみんなで試行錯誤して何度も何度もテストしてこの幻想的な空間を作ることができました。空間を作るということをしたことがなかったので、SPIRALさんの高い天井をどう上手く活かすかなどとても考えました。

――イラストレーターとして個人で活動されることも多かったと思いますが、今回はチームで制作されたんですね

人と作ることの楽しさは渡英をきっかけに学んだことのひとつです。今までは平面だけの世界を一人で表現してきたのですが、チームで作ることによってできなかったことができるようになって、できることの幅や可能性が大きく広がったと思います。私だけではなくいろんな方々のおかげでこの空間ができ、最初完成を見たときは嬉しい気持ちというか、とっても感慨深かったです。世界に没入してもらえる空間をみんなで作れた喜びは忘れられません。

――チームで動くのは今までとは違った活動になると思いますが、気をつけていることなどはありますか?

当たり前のことですが、お礼をしっかり伝えることです。これが一番大切だと思っています。自分のために、チームのために動いてくださっていたり、考えたりしてくれているのでちょっとしたことでも感謝することは忘れないように心がけています。

会社員から転身してフリーランスへ、そして渡英

――会社員から転身してフリーランスになったかと思いますが、後悔はありませんか?

幸い今の所は後悔していないです。会社員として働いている頃、とあるブランドのクリスマスキャンペーンを見て、心が温かくなる瞬間がありました。そこから自分もこの温かさを渡す側になりたいと思い、フリーになろうと決心しました。ただ、フリーになると言っても自分の中では基準を決めていました。

――どんな基準を決めていたのでしょうか?

30歳になったときに、当時在籍していた会社でそのまま働いていたとしたら稼げる年収以下だったら、会社員に戻ると決めて独立しました。その目標というかわかりやすい数字があることによって、不安にならずに済みますし、「もしダメだったら会社員に戻ればいいや」という気持ちだったので、むしろ無理なく自分なりに頑張れたと思います。

――実際に会社員を経験し、独立、そして渡英という経歴ですが決断は難しくなかったですか?

むしろ会社員を経験していてよかったと思うことがたくさんありますし、渡英もこのタイミングでよかったと思っています。会社員を経験しているからこそ、ビジネスマナーや教養もある程度つけることができましたし、相手への依頼方法やニーズの引き出し方、コミュニケーションなどに困ることが少なかったです。これは本当に会社員として働いていたからこそのスキルだなと思います。あとは、大人になってからの渡英の方がゴールが明確だと思います。もちろん学生時代に留学するのも素敵な経験だと思うのですが、今行くからこそ現実味のある考え方になるんです。実際ロンドン留学に来ている同世代の方や大人の方など知り合うと、目的がはっきりしているんですよね。「〇〇をしたいから留学に来た」と言って、必要なスキルを学びに来ている人が多いです。私もまさにアニメーションを学びに来た人間だったので。限られた時間でいかにそのスキルを習得して自分のものにするか、どう活かせるかなど考えながら学べるのはとてもよかったです。

――渡英してアニメーション以外に学んだことや気づきは他にありますか?

イギリスの教育の文化です。出来上がったものの美しさだけでなくイギリスではその過程を大事にします。今までは出来上がったものの完成系だけでアウトプットしか考えていなかったのでとても勉強になりました。もうひとつはあげるなら、いろんな国の文化も知ることができました。ニューヨークのようにいろんな国の人が集まるロンドンでは、ラマダンがあったり、各国の文化のお祝いごとをしているシーンをよく見かけたりすることが多かったです。それは日本にいたら知らなかったこと、体験できなかったことだったので新鮮でした。

――異国の地で新しいことを学ぶのはとても大変なこともあると思います。行き詰まったり、ストレス発散や心地よく過ごすためにしていたことなどはありますか?

絵を描くことについては正直行き詰ることとかはないです。ただ、辛いときはチームに相談します。チームになると喜びも倍になるし、辛さは一緒にストレス発散もできるので心の負担も軽くなりました。あとは息抜きに、散歩やロンドンにいるときはバレエやオペラ、オーケストラなど鑑賞へ行っていました。当日券で安く観ることができるので、非日常を気軽に味わっていました。あとは旅行も好きです。

――気軽に特別な空間へ足を運べるのは海外ならではでとてもいいですね。ではお仕事のモチベーションはどのように保たれていますか?

自分が今回のイラストはどんなふうに落とし込もうかとプランする時間が毎回楽しいです。なのでモチベーションが下がることはあまりなくて、そのプランを考えているときが一番のモチベーションかもしれません。

「結婚願望がない」、結婚観について初語り

――今は世界を股にかけて活動されているfoxcoさんですが、「結婚」についてどんなふうにお考えでしょうか?

実は、子供の頃からいつかは結婚したいという願望も持ったことがないです。そして、今もそれは変わってません。いい人がいたら一緒にいたいと思いますが、それが結婚という形ではないかもしれないし、そうかもしれないし、わかりません。あまり深く考えたことがないですが、お互いを尊重しあえて、現状に満足している人よりも一緒に少しずつ高めあえる人がいいなと思います。

foxcoさんって?

1990年6月25日生まれ、東京都出身。“foxco(フォクスコ)”という名前でアーティストして活動。高校時代をカナダ、大学1年間をパリ第一大学(ソルボンヌ)芸術学部で過ごし、イラストを描き始める。その後外資系IT企業にて広告運用のコンサルをしながら、2016年の冬にイラストレーターの仕事をスタート。その後、2017年6月に独立。個展はもちろんのこと、ファッション誌のイラストワークやブランドとのコラボレーションなど多くのフィールドで活躍。2022年にロンドン芸術大学大学院へアニメーションを学ぶために渡英し、2024年に卒業。現在はロンドンを拠点に世界で活躍するアーティストに。

「The Longest Night」とは

1月8日〜19日の期間限定で東京・青山のスパイラルガーデンにて行われた、focxcoさん自身では初となるインスタレーションを含む展覧会。メインの手法であったイラストレーションやペインティングに加え、アニメーションやインスタレーションなどの新たな表現をここで披露。また、イギリス・ロンドンでの生活を通して広がった価値観やインスピレーションをもとに、新たな可能性や世界観を表現することができたまさに自身最大規模かつ、集大成のような空間が広がります。また、1月24日〜26日の3日間ではこの展覧会のために制作されたグッズを京都・新風館にてPOP UP販売も。大人気の複製原画や、ライティングスタチューも販売中。そのほかグッズはオンラインでも購入が可能。

foxco公式オンラインショップ:foxcoshop.com
販売期間:2025年1月8日(水)11:00 -2月2日(日)23:59
The Longest Nightポップアップ
会場:新風館 (〒604-8185京都市中京区車屋町245番地2)内
期間:2025年1月24日(金)-26日(日)

撮影/飯塚康平 取材/石津愛子 構成/大島滉平

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表紙モデル:宮本茉由

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