堀田茜が「30代になってなんだか気になる…」と感じるタイムリーな話題を、今会いたい識者に直接聞きに行く連載16回目。この話、ほったらかしにしなくて良かったと思える日が必ず来るはず!
親が元気なうちから介護の話をすると嫌がられちゃう。でもいつか来る日のために備えておきたい
今月のゲストは…芸人・エッセイスト にしおかすみこさん
【今月の茜のモヤモヤ案件】
親の介護やお別れのときに備えて、親が元気なうちから準備しておけることがあるならやっておきたいと思っています。高齢化社会と言われる今ですが介護のリアルな情報は耳に入って来にくかったり、友達間でも話題にしづらいと感じます。
「自分が親の介護をするときはみんなが納得のいく形にしたい」(茜)
茜:私は両親と離れて暮らしているのですが、たまに会うと「年取ったな」と感じたり、切なくなることが増えました。まわりでも親が体調を崩したと話す人が増えてきているんですよね。いざというときのために、介護や終活について親と話しておいたほうがいいのかなと思っているのですが、元気なうちにそんな話をすると嫌がるじゃないですか。でも何もしないわけにいかないので、今お母様の介護もされているにしおかすみこさんにどうされているのかをお伺いしたくて。
にしおか:認知症の母の介護もあって実家で家族と暮らしているんですけど、私も親が元気なうちはそういう話はしなかったですよ。嫌がりますよね。
茜:「もうそんなこと考えてるなんて早く死んでほしいの?」と思われてしまうのではないかと心配で…。でも母が祖父母のことでたくさん悩んでいたのを知っているので、自分が親の介護をするとなったときはみんなが納得のいく形にしたくて。今のうちから準備できることってありますか?
にしおか:介護にまつわる具体的な情報を知っておくとか、財産をどうするか話し合っておくことも大事ではあるし、話しておくに越したことはないんですけど、情報があってもなくても振り回されるには違いない。だから「心の準備」が一番かなと思います。大事な家族の介護だから、これやってあげたいあれやってあげたいって自分も欲が出るし、それに比例してどんどん疲れていくんですね。だから私は自分の幸せが第一であることだけはブレないようにしています。そういう信念を今のうちから持っておくのが大事。
茜:自分のことも親のこともきちんとやろうって完璧主義になるとしんどくなっちゃいますもんね。
にしおか:本当にめっちゃ疲れますから。介護経験の先輩方からも「できることをちょっとずつやればいい」とアドバイスしてもらいました。だからその日できなかったことがいっぱいあったとしても、全部解決すべきだと私は思ってなくて。私が実家に戻ったとき、母の認知症の影響で実家がゴミ屋敷になっていたんですけど「私はそれを片づけて人が清潔に暮らせるまで最低限のことはやった。それだけでも実家に戻った意味はあっただろう」と思うようにしていて。
茜:心の準備が大事、と言いつつにしおかさんご自身は準備されていたことはありましたか?
にしおか:なかったです。さっきも言った通りそういう話し合いもしなかったし覚悟もしていなくて、ある日一年ぶりに実家に立ち寄ったらゴミだらけの部屋に母がいたので…介護は突然やってきたことでした。ただ、母は私と離れている間にかかりつけ医を自分で決めていて、最後はその先生にお世話になりたかったみたいで。それを私に伝える前に認知症になったから、私はそれを知らずにネットで調べただけの精神科に連れて行ってしまって。後々母がそういう動きをしていたことを知ることになるんですけどね。母は母で自分の老後を見据えて色々考えて行動していたんだろうと思います。
茜:今だからこそ「もっとこういう覚悟を持っておけば良かった」と思うことはありますか?
にしおか:心の準備と似ていて、母が好きなこと、自分が好きなことを見つけておくのがなにより大事だったなと思います。
茜:自分が好きなこと?
にしおか:さっき言った「自分の幸せが第一であること」からブレないためのこと。私は書くことが好きで、書く仕事が今少しずつ増えてきてるんですけど、好きな仕事ができていると他のこともちょっと楽しく思えたりしんどいことを乗り切れたりするじゃないですか。
茜:それ、深いですね。介護に携わるなかで自分の人生とも向き合うということですよね。自分は何を好きだったっけとか、息抜きに何をすれば満足できたんだっけとか。
にしおか:そう。息抜きに高いランチを食べに行ったり、友達と遊びに出かけたりもするんですけど、その間に家がぐちゃぐちゃになろうがもういい。後ろめたさを感じないって言ったら嘘になりますけど、後ろめたさを感じるから我慢するのかっていうと、私が犠牲になることを親も望んでいないだろうから、そこはもう割り切ります。それにもし家族がこの先みんな亡くなったとしても、私の人生は続いていくじゃないですか。そのときに私は私で幸せに生きられるようにしておきたいから、自分第一でいようとは早めの段階で決めました。堀田さんはきっと優しくて真面目な方だと思うので、もうちょっと不真面目でいいと思います(笑)。あれしなきゃこれしなきゃって考えなくても十分なんですよ。親のことを思っていれば。
茜:いえいえ。でも自分の生活を充実させていていいんだなと思えると安心できます。自分ががんばらなきゃいけないんだろうなと思い込んでしまうので…。
芸人・エッセイスト にしおかすみこさん
1974年生まれ、千葉県出身。2007年、日本テレビのお笑い番組「エンタの神様」で女王様キャラのSMネタでブレイク。現在ではテレビ東京「なないろ日和!」など、リポーターとしても活動。著書に『ポンコツ一家』(講談社)。認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父、一発屋の自分と「全員ポンコツ」と語る家族と介護の物語が話題になり、各メディアでたびたび介護について語っている。趣味はフルマラソンで2019年に3時間05分03秒を記録。Instagram@nishioka_sumiko
ボウタイブラウス¥24,500(シーニュ)スカート¥25,300(ソーノ/ミラク)ピアス¥7,700 バングル¥7,569(アビステ)※にしおかすみこさんの衣装は私物です。