和田優希・千井野空翔 出演舞台『ナイトメアホスピタル 2024』をレビュー【辛酸なめ子の「おうちで楽しむ」イケメン2023 vol.55】

「SpeciaL」の和田優希さんや千井野空翔さんをはじめ、話題のジュニアが出演した舞台『ナイトメアホスピタル 2024』。病院の一室を舞台に、想像妊娠したチンピラの男性から魔界の王が誕生するというユニークな設定の舞台を辛酸さんにレビューしていただきました。

話題のジュニアが出演するゴシックテイスト・コメディ

和田優希が主演をつとめ、千井野

和田優希が主演をつとめ、千井野空翔、渡邉 心、木村来士などが出演する『ナイトメアホスピタル2024』が北千住のシアター1010にて上演。レジェンドステージの代表が総合監修を務め、劇団ホチキスの主宰者が脚本・総合演出を手がけた話題の舞台です。劇団ホチキスは「感情デトックス演劇。 “笑顔”と“涙”をつくる 感動空間を創造するシアターカンパニー」だそうで、公演のビジュアルは一見ホラーやゴシックテイストですが、コメディ要素もありそうで楽しみです。
幕が開く前には「俺の名前は赤井田祐三です」「途中休憩はなしで突っ走る。ついてこいよ!」と、和田優希の声で城内アナウンスが。上演時間は1時間50分。舞台にはベッドが置いてあり、和田が演じる赤井田祐三が横たわっています。腹部が膨れ上がる謎の症状で入院しているという設定。占い師の妻、恵がお見舞いに訪れますが「うるせえ!」「医者に治せって言え!」と、常に苛立っていて高圧的な態度の祐三。チンピラでクズなキャラという設定です。
その頃、魔界では不敵な笑い声を響かせる男がいました。「ハーハハハ!  アーハハハ!」と、笑っているのは千井野空翔が演じる魔界の王です。素人から見ると、魔王が笑う演技というのは俳優にとって特別なカタルシスが得られる場面だと思わされます。それを17歳にして体験してしまうとは……千井野空翔は今後ますます舞台の魅力にハマっていきそうです。魔界の女王で母親のセリーヌディオンヌ魔蛭によると、「魔界の王は人間界で再び生まれて、そこで試練を乗り越えることではじめて真の魔界の王として認められる」とのこと。魔界の王は想像妊娠状態の和田のお腹を借りて、人間界に誕生することに。

想像妊娠したチンピラから魔界の王が誕生⁉

いっぽう病室では、ふて寝する祐三のもとを謎の神父、上泉順矢(渡邉 心)が訪れ、無表情でシュールなダンスを踊ったり、信仰に目覚めた理由を語ります。それは、トイレで大きいほうをしていて拭こうと思ったら紙がなく、神に祈ったらトイレットペーパーが降りてくるという奇跡体験がきっかけだったそう。神父役の渡邉はそのあとも淡々とシュールなギャグをかましていて、独特な存在感を放っていました。そうしているうちに祐三が激しい腹痛に襲われ、どこから出てきたのかわかりませんが、魔界の王が誕生。千井野空翔が「バブー」と言いながらハイハイする、ファンにとっては萌え度が高いシーンが展開。魔界の王なのですぐに話せるようになり「あ~ダルかった~キツかった~」と不平を言っていました。ちょっとダルそうな声なのでリアリティがあります。父親(?)の祐三は、出産で体力を使い果たしたのか寝ています。公演時間の半分以上ベッドにいるような……。
魔界の王と祐三はへその尾でつながっていて、魔界の王が人間界でのミッションを達成するまでは帰れないという話になりました。それは、傲慢・強欲・嫉妬・憤怒・色欲・暴食・怠慢という「七つの大罪」を祐三に犯させる、というもの。罪を犯すごとに該当するランプが点灯していきます。チンピラなので「このようなクソな人間なら罪を犯させることは簡単」と、魔界の王は楽観視します。目覚めて説明を受けた祐三は、魔界の王に早く帰ってもらいたいので協力することに。魔界の王と、従者の露木魔佐人(木村来士)と祐三は3人で結託し、妻にはビジュアル系バンドの練習をしていると嘘をついてごまかします。
場面転換もなくずっと病室で衣装も変わらないのですが、ビジュアルが充実しているからか不思議と飽きることなく、舞台に集中してしまいます。和田優希の表情や華のある存在感は今後、生田斗真のような活躍を見せそうだと期待が高まります。従者を演じる木村来士の奥ゆかしい演技もよかったです。

意外と低い魔界の「色欲」のハードル

祐三はベッドでセクシー系の雑誌を眺め「この姉ちゃんのおっぱいでけー」とつぶやき、さっそく「色欲」の罪を犯しました。海外版「PLAYBOY」でしたが、そこまで激しい写真は載っていなそうです。これで「色欲」になってしまうとは、魔界の大罪のハードルは低いです。もしかして、現代の性的な表現に対して規制が厳しくなっている状況を表現しているのでしょうか。苛立つ祐三は妻にますますキツく当たるようになり「出てけって行ってんだよ!」「あいつはオレがいないと何もできないダメな女なんだよ」などと言い放って「傲慢」の大罪のランプが点灯。これはぜひ断罪してほしいセリフです。
次第に祐三と魔界の王の間に友情が芽生えて、子ども時代の思い出を語ります。「クワガタやカブトムシの幼虫を捕まえてネットで売る」と遊びと金儲けを兼ねたエピソードを語る祐三は子どもの頃からスレています。魔界の母親に、学習院ではなく公立の学校に入れられたと恨みごとを語る魔界の王の方がピュアに見えてきます。「嫉妬」の大罪は意外なシチュエーションで発生。へその尾でつながっているので、並んでトイレで用を足す2人。祐三が魔王の下半身をチラ見した瞬間に、嫉妬の感情に襲われランプが点灯しました。さらに神父がトイレに入ってきて、それを見た2人がまた嫉妬という……このシーン、客席の反応も気になります。

日々バージョンアップするアドリブの話題に

「憤怒」の大罪を犯させようと策略を練るシーンでは、妻の恵に不倫させて祐三を怒らせるという計画が企てられました。恵は魔力によって、突然他に好きな人ができて「この人が好きになったの!」と、裕三に週刊誌を見せます。「それ、イノッチじゃねえか。そいつ結婚してんだよ」というシーンにはドキドキしました。社長の名前が出てきて「そいつ」とは……。でも観劇した人のコメントを見たら、週刊誌に載っている人の名前は回によって変わって、イノッチ以外にはキムタクだったり城島さんの名前が出ていたようでした。今,事務所は大先輩をいじれる自由な空気なのかもしれません。また、回を重ねるごとにアドリブも多くなっていたようで、会場の反応のよさに成功体験が積み重なっていそうです。
舞台上では役柄になりきっていた出演者たちですが、カーテンコールではアイドルの表情も見せていました。日によっては千井野空翔が投げキッスしたり、飛び跳ねて手を振っていたりしていた、という目撃情報も。「七つの大罪」には該当していないですが、アイドルも十分罪作りです。

辛酸なめ子
イケメンや海外セレブから政治ネタ、スピリチュアル系まで、幅広いジャンルについてのユニークな批評とイラストが支持を集め、著書も多数。近著は『女子校礼賛』(中公新書ラクレ)、『電車のおじさん』(小学館)、『新・人間関係のルール』『大人のマナー術』(光文社新書)など。

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