CLASSY.ONLINEで連載している「実は読めない漢字」記事。今回はニュースでもよく耳にした漢字を中心に紹介していきます。
1.「領袖」
最初は「領袖」です。ここのところニュースでよく登場した言葉ですから、耳にしたことがあるはずですよ。例文は「彼は派閥の領袖として存在感を増している」。
「リョウソデ」と読み間違えた方はいませんか? 常用漢字「袖」は、たしかに「そで」という訓読みを持ちますが、音読みは「シュウ」です。したがって、正解は「リョウシュウ」でした。
ところで、「領袖」は「団体などを率いて、その長となる人」のことですが、どうしてこの意味になるのか、おわかりですか? 「領」は「襟(えり)」のことなんです。「襟」と「袖(そで)」は、「目立つ」部分であることに由来しています。
2.「歪曲」
次は、「歪曲」です。基本的に、よい意味には使わない言葉ですが、ニュースなどでよく目にします。何と読むでしょうか? 例文は「事実を歪曲して報道していたことが発覚した」。
「セイキョク」あるいは「フキョク」と読み間違えた方はいませんか? 正解は「ワイキョク」でした。実は、漢字「歪」は常用漢字外です。この「ワイ」が音読み。この「歪曲」でしかお目にかからないでしょう。それに対し、訓読には、「ひず(む)・ゆが(む)・いびつ」などがあります。「歪む」の時は、「ひずむ」「ゆがむ」で迷いますね。
この「歪曲」、大学入試の漢字問題でも定番の一つです。私事ですが、大昔に受験生だったころ、漢字問題を落とすことは滅多になかったのに、模擬試験に出たこれをミスってしまいました。悔しい思いは勉強の原動力にもなります。
3.「相好」
最後は、「相好」です。これは聞き慣れないかもしれません。何と読むでしょうか? 例文は「吉報が届き、彼は思わず相好を崩した」。
たぶん、「ソウコウ」と読んだ方多いと思います。常用漢字「相」の音読みは、「ソウ(呉音)」と「ショウ(漢音)」がありますが、ここでは、「顔つき」の意味ですから、「人相」などと同じく「ソウ」です。問題は「好」の読みです。音読みは「コウ」ですが、濁って「ゴウ」となるのがポイントです。
正解は「ソウゴウ」でした。「相好」とは、「顔つき・表情」のこと。したがって、慣用句「相好を崩す」の形で使われると、「にこやかな表情になる」の意味になります。
先日テレビのニュース番組を見ていたら、前日の放送で使用した用語に関する謝罪がありました。数年前に起きた不幸な事故に対する裁判の結審が近づいたという報道でしたが、「裁判が佳境を迎えている」という表現が使われました。これ、つい使ってしまいがちです。「佳境」とは「最も興味深いところ」を意味し、「話が佳境に入る」などのように使われますが、「裁判(捜査)が佳境を迎えた」のように、「大詰め・ヤマ場」の意味で使うのは間違いとされています。改めて、勉強になりました。
では、今回はこのへんで。
《参考文献》「広辞苑 第六版」(岩波書店)/「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)/「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)/「新字源」(角川書店)/「難読漢字辞典」(三省堂)/「古語林」(大修館書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)