皆さん、年賀状の準備は始まりましたか? 年賀状書きの合間に、恒例のCLASSY.ONLINEでの漢字記事で、どうぞ一息入れてください。
1.「遡上」
最初は「遡上」です。12月の上野アメ横の「新巻鮭(あらまきざけ)」と言えば、季節の風物詩でしょう。その「鮭」にも関係する言葉です。何と読むでしょうか? 例文は「秋の北海道の河川では、鮭が川を遡上する姿が見られる」。
「サクジョウ」と読み間違えた方はいませんか? 常用漢字外ですが、月の初めの日を意味する「朔」が「遡」の構成部分にありますね。「朔日(サクジツ=ついたちのこと」「萩原朔太郎(ハギワラサクタロウ=著名な詩人の名)」などから、これを「朔(サク)」と読める人ほど、「サクジョウ」と読みがちではないでしょうか。正解は「ソジョウ」でした。実は、こちら「遡」は常用漢字。音読み「ソ」と訓読み「さかのぼる」を持ち、この「遡上(ソジョウ=川の流れをさかのぼる)」以外だと、「遡及(ソキュウ=過去にさかのぼって影響を及ぼす)」を見かけるでしょうか。
そう言えば、「新巻鮭」って最近見かけなくなりましたね。
2.「夜の帳」
次は「夜の帳」です。小説などでは今でも見かけますが、何と読むでしょうか? 例文は「行き先もわからぬまま、夜の帳の中へ走り出す」。
正解は「よるのとばり」でした。常用漢字「帳」は、表では音読み「チョウ」のみが掲載されていますが、「とばり」と訓読みすることができます。この「帳」は「帷」とも書き、かつて「室内の仕切りや外部との隔てとして使った垂れ衣(たれぎぬ)」のことです。つまり「夜の帳(とばり)」とは、真っ暗な夜の「闇」を「カーテン(のようなもの)」にたとえ、「夜の帳が下りる」とか「夜の闇に包まれる」のように使います。
3.「直箸」
最後は「直箸」です。コロナも一段落(「ひとだんらく」でなく「いちだんらく」です)して、忘年会も復活したところが増えてきたのではないでしょうか。そこで、気になるのが「直箸」です。何て読むでしょうか? 例文は「宴会で出された大皿の料理を、直箸で取り分けてしまった」。
「直」はもちろん、「箸」も常用漢字ですが、問題は「直」のほうです。漢字表の「直」の訓読みは「ただちに・なおす・なおる」が記載されていますが、これ以外の表外訓として、「じか」があります。「直箸」は「(取り箸を使わずに)直接に自分の箸で取る」という意味ですので、「じかばし」と読みます。この「直箸」以外で、「直」を「じか」と読む熟語には「直火(じかび)」や「直談判(じかだんぱん)」などがありますね。
これから忘年会の方、日本の料理では基本的に「直箸NG」ですから、「取り箸」がない時には、お店の人にきちんとお願いしましょう(ちなみに「逆さ箸」もダメですよ)。
ちなみに年賀状は12月15日(金)から受付開始です。ここで、以前取り上げた「気を付けたほうがよい年賀状あるあるの間違い」として「新年あけましておめでとうございます」と「一月元旦」を改めて紹介します。それぞれ重複表現となってしまいますので、「新年おめでとうございます」「元旦」で十分です。では、今回はこのへんで。
《参考文献》「広辞苑 第六版」(岩波書店)/「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)/「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)/「新字源」(角川書店)/「難読漢字辞典」(三省堂)/「古語林」(大修館書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)