CLASSY.ONLINEでは、「読み間違いが多い言葉」のシリーズを紹介しています。あなたは、今週も間違えずに読めますか?
1.「押印」
最初は、「押印」です。「おしいん」ではありません。では、何て読むでしょうか? 例文は「契約書類の必要箇所に実印を押印する」。
正解は、「オウイン」でした。「押」の訓読み「おす」は、読み書きでもよく使いますが、音読み「オウ」のほうは、この「押印」以外ではあまり見かけませんね。
ところで、「押印」とよく似た言葉に「捺印(ナツイン)」があります。この「捺」は常用漢字外ですので、読めなかった方もいるのではないでしょうか。
問題は「押印」と「捺印」の違いです。どちらも「ハンを押す」という点では共通していますが、厳密には違います。「押印」は、「記名押印」の省略形で、「自署ではない(たとえば印刷など)記名箇所(記名のない箇所も含む)に印鑑を押すこと」です。それに対し、「捺印」は、「署名捺印」の省略形ですので、「本人が自筆署名した箇所に印鑑を押すこと」です。ご存じでしたか?
2.「割愛」
次は、「割愛」です。「わりあい」ではありません。例文は「字数の関係で文章の一部を割愛する」。
正解は、「かつあい」でした。「惜しいと思いながら思い切って捨てること」ですが、なぜ「愛」? と思いますよね。「割愛」という言葉は、もともと仏教用語で、「愛着」の気持ちを断ち切ることから来ています。したがって、「不必要だと思うものを切り捨てる」という意味で使うことは誤りですので、注意しましょう。
3.「著す」
最後は、訓読みで「著す」です。これは、かつて私自身も間違えた経験があるので、自省の気持ちを込めて取り上げます。例文は「高名な作家が自叙伝を著す」。
正解は、「あらわす」でした。「書物を書く。また、書物の形にして世に出す」の意味です。ところが、私は「あらわす」という読み以外に、「書き記す」という意味で、「しるす」の読みもある、と勝手に勘違いしていました。書物の「序文」や「あとがき」で、「著者しるす」というフレーズをよく目にします。あの「しるす」は「著す」だと思ってしまったのです。この記憶の定着を後押ししたのは、「著しい(いちじるしい)」という形容詞です。この語は、古語の「著し(しるし)」から来ています(「いち」は意味を強める接頭語)。この同じ読みからの連想もあって、「著す=しるす」がインプットされてしまいました……冷や汗ものですね。
そういえば、先週11月8日は「立冬」。11月になっても「夏日」の記録を更新する今年ですが、暦の上では「冬」となりました。寒くなると、食事で欲しくなるものはあったかい「汁もの」ですね。先日、友人のSNSで「豚汁」を作った投稿が上がったので、「何て読む?」と書き込んだら、「とんじる(音+訓)」とのこと。私は「ぶたじる(訓+訓)」派だったので、気になってネット検索すると、北海道や九州の一部を除いて、「とんじる」優勢でした。でも、「豚丼」だって「ぶた+どん(訓+訓)」じゃないですか<と、書いてから、「豚肉」は「ぶた(訓)+ニク(音)」の組み合わせだということに気づきました>。難しいですね。では、今回はこのへんで。
《参考文献》「広辞苑 第六版」(岩波書店)/「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)/「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)/「難読漢字辞典」(三省堂)/「古語林」(大修館書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)