韓国、フランス、オーストラリア、マレーシア…「実際に海外で働くアラサー女子4名のリアルな感想」

「このまま日本で働き続けていいのかな」。そうぼんやり思っているCLASSY.世代も多いかもしれません。でも実際、アラサーが海外で働くってどういうこと?一歩踏み出した世界各国の4人に、それぞれの経験を聞きました。

海外移住 in「韓国」

韓国はライター&コーディネーター激戦区。どの分野に詳しいかが重要

20歳から付き合っていた韓国人

20歳から付き合っていた韓国人の彼の就職を機に24歳で渡韓。21歳で立ち上げたネットショップは、日本以外でも運営できたので、拠点を韓国に移しました。ただ、彼に金銭的には絶対に頼りたくなくて。韓国に行く前も後も、経済的自立は意識していました。

移住当初はほとんど韓国語が話せず、仕入れも見よう見まね。最低限の数字だけを覚えて仕事していたので、上手くいかないこともありました。アポイントを取ってオーダーした服を取りに行っても一向に出てこなくて…。思い切って「そういう態度なら、もう取引しません」と伝えたら、すぐにバックヤードから商品が出てきたんです。自己主張をしないと優先順位が下げられる、という学びになりました。韓国ではどんな仕事相手でも関係は対等。下手に出るよりも堂々としているほうが、ビジネス相手として見てもらえると感じています。そして、韓国は野心家が多い。日本では「いい車に乗りたい」とか「いい家に住みたい」と思っていても実際に口にする人は少ない。でもこちらでは野望を耳にすることがたくさんあって、刺激にもモチベーションにも繋がっています。

ライターの仕事を始めたのは、移住してすぐに以前働いていた『ELLE Japan』の編集部から声をかけてもらったのがきっかけ。編集部時代の先輩エディターが『Harper’s BAZAAR』の編集長に就任した記事を読んだのも、ちょうどその頃。『Harper’s BAZAAR』は、いつか仕事がしたい、と憧れていた媒体でもあったので、これはチャンスだと思い、自分からアプローチ。今はSNSエディターとして携わっています。記事執筆から撮影コーディネート、ショーの取材、韓国美容の市場調査のアテンドやレポート作成……と最近は依頼される仕事の幅が広がっています。

自分のキャリアを振り返ると、海外で働く上では、語学以上に自分には何ができるか、が重要だと感じます。韓国で活躍している人たちは、語学とは別のスキルを持っている人がほとんど。料理やカフェ事情に詳しかったり、韓国ファッションでも特定の分野に精通していたり。私自身は『ELLE Japan』での経験があり、モードの世界を理解しやすかったという点が強みになったのかな、と。海外で働く=語学の勉強になりがちですが、それに終始してしまうと日本を出てから戦う武器がなくなってしまいます。語学を完璧にするよりも、自分だけのスキルを伸ばすことが大切だと思います。

海外移住 in「オーストラリア」

メルボルンはウェルビーイングな都市。マインドも変わりました

海外で働くことが夢だったので、

海外で働くことが夢だったので、就活も外資系企業を中心に活動していました。P&G JAPANは部署ごとの採用で、私は営業職として入社。当時はそこまで海外転勤が頻繁ではなかったのですが、社内でも英語と中国語が話せることをアピールして、赴任の機会を窺っていました。若手活躍の取り組みが始まり、メルボルン赴任の話が出たのは4年目のとき。自ら志願して海外生活をスタートさせました。

メルボルンに来て感じたのは、社内でも得意先でも自分と同世代の女性が圧倒的に多いこと。日本でスーパーやドラッグストアの営業に行くと取引相手は大抵、親世代の男性でしたが、こちらで接するのは同世代の女性ばかり。ビジネスシーンでは女性だからとか若いからと特別扱いされることもなく、常にフラットなところも印象的でした。同じような苦労を彼女もしているんだろうな、と同世代だからこそ共感する場面もあり、刺激にもなりました。

それから、仕事関係の飲み会がほぼないのも日本と異なる点。営業という仕事柄、日本では会食やお付き合いが多く、気疲れしたり負担になることもあって……。メルボルンでは得意先との飲み会自体が一度もなく、社内で出席必須の食事会は勤務時間中に開催されます。子育て中のメンバーはお迎えにも間に合うし、すごくいい気遣いだな、と感じました。オーストラリア自体が多民族国家ですが、特にメルボルンは多様な価値観を受け入れる都市。アジア人が差別を受けることもなく、とても暮らしやすいです。赴任して4年経ったあたりから、営業以外の仕事にも惹かれるようになりました。

同僚だった彼との結婚を機に退社したのは29歳。同時期に彼もネクストステップに向けて独立。夫の夢をふたりで叶えるために起業しました。今は、健康的な生活やマインドセットする、ヘルス&ウェルネスコーチングのビジネスを展開しています。私は前職を活かして営業をしながら、オペレーション業務から雑務まで幅広く担当。慌ただしい毎日ですが、安定したビジネスに育て上げ、よりたくさんの人を助けるのが目標です。

オーストラリアは日本に比べて遥かに実力主義でフラットに競争するしかないから、自分の成果をアピールしたり、逆にできないこともきちんと伝える必要があります。英語力はあるに越したことはありませんが、完璧な英語よりも伝える姿勢のほうが大事。文法が間違っていようと、オープンマインドで向き合うことで、周りも受け入れてくれます。

海外移住 in「マレーシア」

堪能な英語より、相手にどう話したら伝わるかを考える力が求められます

結婚や出産などのライフステージ

結婚や出産などのライフステージの変化と、海外赴任のチャンスが重なったら嫌だなと、新卒時から「早いうちに海外で働いて、後悔のない選択したい」と思っていました。2年目から海外で勤務するプログラムが決め手となり、JTBアジア・パシフィックグループへ入社。1年間の研修を経て配属されたのは、バンコク。法人営業として、タイ国内のイベント運営や日本への団体旅行の企画提案、添乗が主な仕事内容でした。

バンコクに来て4年半が経った頃、コロナのパンデミックが始まり、旅自体が困難に。そのタイミングでシンガポールの本社へ異動。リスクマネジメントを行う内部統制や日本とアジア・パシフィックを繋ぐ人材運用に携わりました。

クアラルンプールへ来たのは3ヶ月前。新卒の求人活動をはじめ、社員の特性や各社の状況を見極めて配属先を検討したり、ローカル社員も含めた研修を提供したり、管轄エリア内にて人事の業務に従事しています。タイ・シンガポール・マレーシアの3拠点で働いて思うのは、その国の文化をリスペクトして、理解しようとする気持ちが大切だということ。自分が外国人として働いている以上、現地のやり方に戸惑うこともありますが、まずは一回受け入れてみる。特に印象的だったのは、3カ国ともランチはきっちり一時間、チームで行くこと。メンバーとの食事をコミュニケーションの場と捉えていて、みんなそれを強制と思わず楽しみにしているんです。実際にチームワークが機能していて、誰かが急に休んでも誰かが必ずフォローする。そこはヨーロッパやアメリカ圏とは違うマインドかもしれません。

また、子どもがいても働くことが当たり前の社会なので「あ、あの人子どもいたんだ」くらいの感じ。働くママは特別ではありません。子どもがいてもいなくても、夜は早く帰って家族とごはんを食べるのが当たり前な環境です。英語が話せるともちろんスムーズですが、英語が堪能なことより、相手にどう話したら伝わるかを考える力が求められます。例えば、英語が苦手なローカルの人には、メールの文面を長く書かずに箇条書きにしたり、大事なことはメールだけでなく直接確認したりしています。

海外で働くことを視野に入れているなら、深いことは考えずトライすることが大事かな、と思います。実際に働いて違うなと感じたら、帰国して転職してもいい。何歳までに結婚とか出産とか、今でも考えることはありますが、外国に出るとライフイベントに対する捉え方も多様で、新たな発見ばかり。私は逆に気持ちがラクになりました。

海外移住 in「フランス」

仕事が見つからず、鬱っぽくなったことも。自らビジネスを始めました

商社に務める夫の辞令がきっかけ

商社に務める夫の辞令がきっかけで、5年前にパリに移住。早く仕事に就きたくて、渡仏してすぐに就職活動を開始しました。フランス語ができないのに、どうしてもパリのアパレル業界で働きたくて、英語で履歴書を書き、複数のブランドにアタックしたものの、ことごとく不採用。だったら自分で何かを始めたほうが早いかもと思い、前々から興味のあったバイイングの仕事をスタート。今はバイヤー経験を活かして、アパレルブランド「aLORS」とオンラインのファッションコミュニティ「insigne」の2軸でビジネスを展開。

この春、駐在員だった夫は会社を退社。腰を据えてビジネスがしたいので、夫とともに会社を設立しました。パリで働き始めて驚いたのは、日本では考えられないくらいミスが頻発すること。バイヤー時代から、発注数を間違えられたり、化粧汚れのついた商品が納品される、ということが多々ありました。しかも100%相手が悪くても「C’est pasma faute.」(セパマフォ)=「私のせいじゃない」と言い返される。日本人同士だと「ごめんね」って言いながら解決策を探るところを、こちらでは議論の余地がないくらいバサッと切られることに衝撃を受けました。パリで仕事をする中では、この言葉を言われた後にどう切り返し戦っていくかが大事。同時に日本ではあり得ないミスを想像し、先手を打つ努力をしています。パリで働きながら、日本のお客様を相手にしているので、日本が求めるサービスの高さとフランスの適当さの板挟みには頭を使います。私は4年間、この言葉にしごかれて心が強くなりました(笑)。ただ、自分のミスに甘いぶん、他人のミスにも寛容なのはいいところだと思っています。日本だと小さい間違いや失敗も気にしがちですが、フランス人は「どうってことないよ」とさらっと流してくれて救われることも。

海外で働くためには、意思を主張し通す強さと流せる寛容さのバランスを上手く取ることが求められると思っています。「海外で働いてみたい」という相談をよく受けます。海外の人はアグレッシブで主張も強く、雰囲気に圧倒されることも少なくありません。海外でどんなことがしたいのか、やりたいことがうまくいかなかったとき、どう切り替えるか。海外に行く前に、自分の価値観と向き合ってみるといいかもしれません。SNSでたくさんの情報が拾える今、他人の生活が目に入って、しんどくなることもあります。そんなとき、自分の価値観が確立していたら、〝私なりの海外での生き方〞がしっかり描けると思います。

取材/坂本結香 再構成/Bravoworks.Inc

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表紙モデル:山本美月

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