堀田茜さん&aviさんモヤモヤ対談「作品の意図に沿う正解の感想を持たなければ〝わかってない人〟になるのが怖くて…」

堀田茜が「30歳になってなんだか気になる…」と感じるタイムリーな話題を、今会いたい識者に直接聞きに行く連載8回目。この話、ほったらかしにしなくて良かったと思える日が必ず来るはず!

作品の意図に沿う正解の感想を持たなければ〝わかってない人〟になるのが怖くて…

今回のゲストは...耳で聴く美術館・aviさん

【今月の茜のモヤモヤ案件】 今

【今月の茜のモヤモヤ案件】
今アートが身近なものになってきていますが、気軽にアートが好きだと言い出しにくい敷居の高さを感じます。作家や作品について理解を深めていないと語ってはいけないですか?一歩踏み込んで学びたい気持ちもありますがどう深めていけばいいのかもわからず周りにアートの話をできないままです。

「作品に込められた意図と違う感想だったらどうしようって不安なんですよ。」(茜)

茜:ここ数年でアートが身近になりましたよね。仕事でもプライベートでも美術館に行く機会は増えているのですが、もう一歩踏み込んでアートを見られる人になりたい。aviさんの耳で聴く美術館の解説動画は初心者の私にもわかりやすくて「こういうの待ってた!」とうれしくなる内容でした。もっと難しいこともお話しできるのだと思いますが、どうして初心者向けに配信をすることにしたんですか?

avi:アートって正直敷居が高くないですか?

茜:はい。少し構えてしまいますね。

avi:私は総合大学の美術教育の学部だったのですが、当時から「なんでこんなに敷居が高いんだろう」と思ってたんです。美術ってすごくおもしろいのに、敬遠されるのはもったいない。その気持ちが社会人になってからもあって、美術に縁のない人にも楽しさを伝えたくて活動をスタートさせました。

茜:アートって作品の感想を言うのも難しいけど、aviさんの説明を聴いておけば、自分でも何か話せるかなって思わせてくれる。主観だけだと、作品に込められた意図と違う感想かもしれないじゃないですか。以前、私の目には幸せそうに映った絵が、解説を読んだら実は死を描いていたものだったことがあって、私違う解釈をしていたんだって恥ずかしくなって…。

avi:作品に抱く感情は人それぞれ。それを誰も咎めることはできません。まず死に対するイメージも人それぞれだし、死がテーマの作品を見てみんなが悲しい気持ちにならなければいけないわけじゃないので、それはそれでいいんですよ。作家の意図と違ったのなら、なんで私はこれを見てそう解釈したんだろうって考えてみればそれはまた豊かな時間ですよね。私はそうしてます。美術は答え合わせではないですから。

茜:意図と違う感情を抱くのは間違っているのかと不安でした。作品を鑑賞しに行くと誰に頼まれたわけでもないのに理解しなきゃと焦って、作品より説明文を読んでいる時間のほうが長くなっちゃうんですよ。

avi:この間台湾のある美術館の館長さんのお話を聞いて「なぜ私たちは理解しなければいけないと思い込むのだろうか。感じるだけでいいんじゃないか」と仰っていて。理解したい気持ちはみんな少なからずあると思うんですけど、作品を見て自分がどういう感情になったかだけでも新しい発見があるわけだし、それだけでも十分ですよ。

茜:ということは、作品や作家を好きな理由も、これがキレイとか可愛いとか単純なことでもいいんですか?

avi:全然いいと思います。だって、服も「素敵なデザインだな」くらいで着るじゃないですか。デザイナーの意図を汲んだから着るってことはしないですよね。背景を知った上でしか好きと言えないなんてことはないです。

茜:服や音楽は気軽に「これが好き」って言えるのに、アートはそうであってはいけないのかと構えてました。よかったぁ。とはいえ、もう少し知識がほしい気持ちはあって。今より楽しむためにはどうしたらいいですか?

アートインフルエンサー/耳で聴く美術館・aviさん
1992年・大阪府生まれ。大学で美術教育を学ぶも一般企業に就職。その後美術の自由な世界観と魅力を伝えるべく独立し「心が震えるアートの話をしよう」をテーマに各動画サイトやSNSにて〈耳で聴く美術館〉を展開。美術をもっと身近に感じてほしいという想いから、初心者にもわかりやすい作品解説や展覧会情報動画を発信する。2023年8月時点でTikTokフォロワー17万人、YouTubeフォロワー16万人を誇る。

【茜】ベスト¥16,500(マイストラーダ)ブラウス¥26,400(Sov./フィルム)ピアス¥28,600(ete)
※aviさんの衣装は私物です

撮影/杉本大希 スタイリング/阿部絵莉香 取材/野田春香 再構成/Bravoworks.Inc

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表紙モデル:山本美月

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