世界で最も知られている、激しくもたった5日間の恋を描いた舞台『ロミオとジュリエット』に高杉真宙さんが挑みます。タイトルロールにかける思いに加え、高杉さんが考える〝ウェルビーイングなこと〟まで、2回に分けてインタビューをお送りします。
――舞台『ロミオとジュリエット』で主演を務めることへの思いを教えてください。
最近のやりがいが、僕のお芝居を観た方達に少しでもいいので影響を及ぼせたらということなんです。お時間を作って舞台を観に来てくださっているので、いただいた時間をその方の人生の中で大切なものになるようにしたいと思っています。もともとは「誰かの人生に影響を与える」なんて、責任が大きすぎると思っていました。でも、(過去の舞台で)僕の台詞の間や声の大きさなどから、僕が伝えたかったことをくみ取って感想をくださった方がいたんです。それを知ってからは「こんなふうに感じてくれる方がいるのなら人の人生を変えるのも悪くないな」と思うようになりました。今回も、何かを感じていただけるように演じたいと思っています。
――『ロミオとジュリエット』は舞台や映画などで数えきれないほど多く演じられていますが、実際に観た作品はありますか? また、その時の印象を教えてください。
現代風に書き換えられた映画作品を観たことがあります。舞台に置き換えたら違うものになるだろうと思いましたし、同じ舞台でもミュージカルとストレートプレイでしたら違うでしょうし…。そもそも演じる人によってまったく違うものになると思っています。誰もがストーリーを知っている演目ですけれど、今回の『ロミオとジュリエット』の台本を読んで見つけたものを、皆で出し合って作っていきたいなと思っています。
――ロミオにはどんな印象を持っていますか?
映画を観たときの印象は 〝やんちゃボーイ〟ですね(笑)。今回の台本は詩的な台詞が多いので、あまりやんちゃにならない気がしていますが(笑)。台本を読んで一番共感したのは、盲目さです。でも、僕はあんなに盲目になっているかな? 傍から見たら迷惑だけど、夢中になったときの客観視って無理だから、盲目になっているんでしょうね。
――大人になりきれていない若さゆえの盲目さを自身が演じることについて、どう思っていますか?
ギリギリかなって思っています(笑)。僕の中でロミオの印象は〝若い〟というのも強いですし。14歳という設定なので。それくらいの年齢って常に熱を持って走り続けていますよね。年齢が上がると、それを維持することが大変になってきて…。ロミオより年上の僕が、無条件に燃えているロミオを演じるのは大変だというのはわかっています。でも、純粋に興味がありますし、やりがいがあるなと思っています!
――台詞が詩的というお話が出ましたが、いつもの台詞と違うと感じるのはどんなところですか?
詩的な台詞は口に出すのは楽しいのですが、覚えるのが大変です(笑)。早く覚えて自分のものにして話したいです。詩的でなかったとしても台詞覚えがめちゃくちゃ遅いんです、本当に(笑)。「覚えられるのか? やれるのか?」と自分に聞きながら、毎回不安と共に進む感じです。台詞を覚える前の取材では、いつも「憂鬱です」というコメントばかりしています(笑)。
――舞台に対するプレッシャーを感じているようですが、それでも舞台のお仕事を続ける理由はなぜでしょうか?
なんなんですかね? やりたくてやっているのですが、何が好きなのかわからないんです(笑)。稽古は好きです! 毎回、たくさんのことを教えていただけますから。わりとぼろくそに言われても平気ですしめちゃくちゃ欲しがりなので、どれだけ吸収して持って帰れるのかを楽しみにしています。そうやってたくさんの時間をひたすら向き合い、「大丈夫だよ」と送り出してもらう感じです。作ったことに満足して終わりなのではなく、作品は観てもらうことで意味をなすと思いますから、すごく緊張しますがそうやって舞台に出るという感じです。
――初日には、やっと自身でも「大丈夫だ」と思えるんですね?
いいえ、思えないです(笑)。今まで一度も思ったことはないですね。舞台は何が起きるかわからないですから。ようやく一息つけるのは幕が下りた瞬間です。でもまた次の公演があるので、千秋楽の幕が下りるまで緊張は続きます。今回は長丁場で1カ月半あるので、ずっと続くでしょうね。(緊張が)途切れたら失敗するんです。途切れなくても失敗しますが、途切れてはいけないんです。一番緊張するのは幕が上がるまでの時間。暗くなって幕が上がるぞ、というときは怖さと闘っています。
――最後に今回の舞台を楽しみにされている方へメッセージをお願いします。
幕が上がる前に会場が暗くなると思うので、そのときに目をつぶって深呼吸してください。音楽か台詞が聞こえたら目を開けてください。そうすれば、舞台により一層入り込めると思います。僕が舞台を観るときは、毎回こうしています。舞台だけでなく映画もドラマもですけど、どれだけ作品に入り込めるかが重要だと思っているんです。突っ込みどころを探すなんてナンセンス。今回は休憩を入れて約3時間の予定ですが、集中して頭で考えて心で感じて思いっきり楽しんでいただきたいと思っています。僕は皆さまが目を閉じているときに一番緊張し、幕が下りたときにやっと一息つくことでしょう。そして、その後に皆さまの心に何かが残っていることを願っています。
有楽町よみうりホール×シーエイティプロデュース ステージシリーズ
ロミオとジュリエット
シェイクスピアがこの作品を執筆していたといわれている頃のロンドンでは、ペストが流行し、人々は不自由な生活を強いられていた。そのような時代にシェイクスピアがこの作品に託した夢とは? 作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子 演出:井上尊晶 出演:高杉真宙 藤野涼子 矢部昌暉 新原泰佑 三浦獠太 佐伯大地ほか 9月13日(水)~24日(日) 有楽町よみうりホール 大阪・富山・愛知・福岡・仙台でも上演
高杉真宙
‘96年7月4日生まれ・福岡県出身。’09年より活動開始し、ドラマ、映画などで幅広く活躍。最近の主な出演作は舞台『カリギュラ』『ライフ・イン・ザ・シアター』、ドラマ『PICU 小児集中治療室』『わたしのお嫁くん』、NHK朝ドラ『舞いあがれ!』、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』など。’24年大河ドラマ『光る君へ』に出演予定。
【衣装】コート¥96,800(エイク/エイクショップ info@eyck-tokyo.jp)Tシャツ¥7,990(アンフィーロ/オンワード樫山 03-5476-5811)パンツ¥41,800(エスロー/エンケル 03-6812-9897)
撮影/木村 敦 ヘアメーク/堤 紗也香 スタイリング/菊池陽之介 取材/よしだなお 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)