【大空ゆうひさん】スペシャルインタビュー!出演舞台『オイディプス王』がまもなく開演!

ギリシャ悲劇の最高傑作『オイディプス王』に元宝塚歌劇団トップスターの大空ゆうひさんが出演! 大空さんご自身もリニューアルオープン後に既に2度も出演されている「パルテノン多摩」の再開館1年を記念する今回の公演への思い、そして〝ウェルビーイングなこと〟について2回にわたりインタビューをお届けします

――ギリシャ悲劇『オイディプス

――ギリシャ悲劇『オイディプス王』出演の話が来た時の気持ちを教えてください。
私はオイディプス王の妻のイオカステを演じるのですが、女優を始めた頃からいつかはやってみたいと思っていた役だったので、このタイミングで出会えたのがとても嬉しかったです。でも、ギリシャ悲劇は初めてで…どう取り組めばいいのだろうと心配にもなりました。期待と不安の両方が一気にきた感じです。

――〝このタイミング〟というのは大空さんにとって、どんなタイミングだったのですか?
今年で女優を始めてちょうど10年になります。女優を始めた頃はいっぱいいっぱいで演技の引き出しを探すのに必死だったんですけど、最近は楽しむこともできるようになりました。なので、今でよかったなと思っています。

――イオカステについて「描かれていない部分が多いので自分で役を膨らませないといけない」「試行錯誤中」とコメントされていました。お稽古も始まり、初日も近づいてきましたがイオカステ像は定まってきましたか?
日に日にイオカステの血が濃くなっている感覚はあるのですが、ここに定めようという段階ではまだないと思っています。現代の日本に住んでいる女性では考えられないようなエネルギーを持っている役なので、いつでも爆発できるようにするのは揺るぎないことなのですが、オイディプス王ありきのイオカステなので、どこにでもいけるようにしたいと思っています。まだ決めないことを楽しんでいる時期という感じですね。初日までには定まると思いますけれど。

――ギリシャ悲劇を代表とすると

――ギリシャ悲劇を代表とするとても重い内容の作品ですが、どういうプロセスで役に取り組まれていますか?
プロセス…正解があるなら、私も知りたいです(笑)。私はどの役にとりかかる時も毎回、未知数で、どうなっていくんだろうという気持ちでいっぱいです。明確なプロセスというわけではありませんが、自分のアンテナを常に役に向けるようにしています。そうすると、日常のふとした瞬間に何かが降りてきたり、ふつふつと湧いてきたりするんです。お稽古に行く道や帰り道などの歩いているとき、「感情をつかめたかも」と思うことがよくあります。肌に触れる湿度や温度、耳から入る音、目に入る光がひらめきを与えてくれるんでしょうね。それを逃さないために、五感を研ぎ澄ませて敏感でいることはとても大切だと思っています。また、考え方を柔軟にして決めつけずにいろんなことを疑うことも大切です。理解したと思っている台詞も間違っていることがあるかもしれませんから。できたと安心せずに、作っては壊して新しいものを試す、そんな日々をお稽古中に過ごしています。

――演出の石丸さち子さんとのお

――演出の石丸さち子さんとのお仕事は4回目で、大空さんも石丸さんもお互いのことを「信頼している」とコメントされています。
石丸さんと初めてご一緒させていただいた時の台本がとても詩的で心情がわかりにくく、理解するのが難しかったんです。3ページくらいに渡る長台詞もあったのでどう取り掛かったらいいのかわからず、正直手も足も出ませんでした。でも石丸さんは私の台詞に限らずすべての台詞の一語一語を読み解き、どんな心情なのか内実の理解があったのでとても頼もしく思いました。すぐに答えはくださらないけれど、役に近づけるヒントをたくさんくださいます。ぐいぐい引っ張ってくれる指揮者のようで、引き込まれていくことで自分の演奏も見えてくるといった感じです。ただ、石丸さんが私のことを「信頼している」とおっしゃってくれるのはとても嬉しいのですが、プレッシャーを感じます(笑)。期待に応えなければと勝手に自分を追い込んでしまうんですよね(笑)。

――石丸さんの作品4回目の出演にしてわかった、新たな気づきはありますか?
今回の石丸さんが今までと全然違うんです。今までは音楽を一小節ごとに区切るように細かく演出されていましたが、今回の私と三浦涼介くんとのシーンはフリーセッションのような感じで最後までやらせてくださいます。石丸さんと三浦くんの信頼関係もあると思いますが。

――大空さんと三浦さんのことを信頼しているからなんでしょうね。
私と三浦くんの性格的に、途中で止めるよりは流れで最後まで体感させたほうがいいみたいなところを理解していらっしゃるのかもしれません。最後までやらせてくださってから、ちょっと方向性を変えようとか、次はこっちを試そうかなど提示してくださいます。性格的なことだけでなく今回はとにかく台詞の量が多くて集中するのが大変なので、途切れさせることなく続けさせてくださったり、体力のことも考えながら慎重に演出してくださっている印象があります。

――初共演の方が多いそうですが

――初共演の方が多いそうですが、カンパニーはどんな雰囲気ですか?
今回はコロスの方達が重要な役割を担っていて、私達を俯瞰で見ている人、助言する人、時代を表す人などを演じてくださいます。16人のコロスの方達がいらっしゃるのですが、私達の顔合わせの前に皆さんがワークショップをされていたので、すでにこの作品のチームワークのようなものができあがっていました。皆さんのエネルギーに引き込んでいただいたことで、カンパニーが一丸になれた感じです。熱量は高いですが大人な人が多いので冷静さも持ち合わせた、とてもバランスのいいカンパニーです。

――今作は「パルテノン多摩」リニューアル1周年を記念する作品でもありますが、大空さんにとってどんな存在の劇場ですか?
リニューアルオープンしてから私が最多出場なのでは?というくらいご縁のある劇場です。都心からは少し距離がある印象ですが、それが日常を離れた感じにしてくれるので、作品にうまく入り込めると思います。京王線特急に乗れば遠い感じはしませんし、駅から真っ直ぐのびたパルテノン大通りの先の劇場建物の横に大階段があるのですが、私はこの素敵な階段が大好きなんです。劇場はもちろんですが、階段の素晴らしさも皆さまに堪能していただきたいです。

――今回の舞台を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。
CLASSY.読者の方はギリシャ悲劇というと、自分とはかけ離れたお話だと感じるのではないでしょうか? でも、触れてみると意外と今の私たちと共通することがあるんです。たとえば、オイディプス王が流行り病で苦しんでいる民衆を救おうとしたところから話が始まるので、ここ数年の状況とも重なりとても共感できると思います。神々に近いような登場人物たちの話ですが、人間の避けられない宿命や業など、2500年前の話なのに自分と重なる部分があるので演じていると心を動かされます。こんなにも古い戯曲がずっと上演されていることには何か意味があると思うんですよね。2500年もの長い間皆の心を動かし続けているものは何なのか、観劇することで紐解けるのではないかと思います。私達は稽古に励みますので、劇場に足を運んでいただけると嬉しいです。


パルテノン多摩リニューアルオープン1周年記念『オイディプス王』

ギリシャ悲劇の最高傑作『オイディプス王』を三浦涼介、大空ゆうひ、新木宏典、今井朋彦をはじめ期待の出演陣で上演。【作】ソポクレス【翻訳】河合祥一郎【演出】石丸さち子【出演】三浦涼介 大空ゆうひ 新木宏典(荒木宏文改め) 浅野雅博 外山誠二 吉見一豊 今井朋彦ほか【東京公演】7月8日(土)~ 17日(月祝) パルテノン多摩 大ホール【兵庫公演】8月19日(土) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

大空ゆうひ
宝塚歌劇団宙組トップスターとして数々の話題作に出演。‘12年に退団、’13年『唐版 滝の白糸』から現在に至るまで舞台を中心に活躍。近年の主な出演作は『アンナ・カレーニナ』『お月さまへようこそ』『お勢、断行』『マーキュリー・ファー』『楽屋~流れ去るものはやがてなつかしき~』『羽世保スウィングボーイズ』『キオスク』『鎌塚氏、舞い散る』など。映画『カイジ ファイナルゲーム』、ドラマ『家政婦のミタゾノ』など映像作品にも出演。

撮影/杉本大希 ヘアメーク/春山聡子 スタイリング/SAKAI 取材/よしだなお 構成/中畑有理(CLASSY.編集室) 衣装協力/printemps

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表紙モデル:山本美月

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