【凰稀かなめ&紅ゆずるスペシャル対談】宝塚時代、2人の〝初出しエピソード〟! 

ともに元宝塚トップスターである凰稀かなめさんと紅ゆずるさん。お2人が共演する舞台『ホロー荘の殺人』上演を前にお届けしているスペシャル対談、後編ではお2人が考える〝ウェルビーイング〟について、また歌劇団時代のお2人のエピソードについても話していただきました!

―― CLASSY.ではウェル

―― CLASSY.ではウェルビーイングなライフスタイルを発信しています。心身両面で自分を高めたりハッピーになることで周りの人や社会も一緒にハッピーにしていきたいというスタンスですが、2人が実践していたり、意識している〝ウェルビーイングなこと〟はありますか?
 トレーニングしています!
凰稀 宝塚のときもやっていたよね。
 私が宝塚時代にトレーニングしていたのは、かなめさんが星組にいらっしゃったときだけです(笑)。あとはまったくしていなかったのですが、退団してからまた始めたんです。
凰稀 私が終演後にトレーナーさんを呼んでいたので、べに子ちゃんも便乗して一緒にやっていたんだよね。でもあの時しかやっていなかったんだ(笑)。またやろうと思ったきっかけは?
 男役時代はゆったりしたシルエットのトップスとズボンしか着なかったのですが、退団してスカートなど締め付けられる服を着ることになり、「どうしたらいいの、こんな体じゃ着られる服がない!!」となったんです(笑)! 「これはヤバいぞ、体を改造しなければ女優としてやっていけない」と思い、トレーニングを始めました。
凰稀 退団したばかりの頃はいろいろ戸惑うものです(笑)。
 そうですよね。トレーニングをしたら体のラインが整ったのはもちろんですが、これだけ頑張ったという達成感が自信につながりました。
凰稀 いつものべに子ちゃんに戻ったのね!
 はい、体も心も元気になりました! 元気な人といるだけで楽しくなりますよね。相手から元気をもらうだけでなく、自分が元気になって周りのみんなをハッピーにしたいと思っています! あとは、電車でいつも席を譲れるようになりました!
凰稀 足腰が強くなっているから(笑)!
紅 いつでもスッと立って「どうぞ!」です。かなめさんのウェルビーイングはなんですか?
凰稀 「人のために芝居をする」ということを常に心がけています。
 いつ頃、意識したのですか?

凰稀 雪組だった下級生時代にお

凰稀 雪組だった下級生時代にお芝居についてすごく悩んでいたんです。そんなとき、演出家の正塚(晴彦)先生から「芝居はみんなで作るものだから、自分をアピールする我の強さは必要ない」と教えていただきました。「とにかく相手がやりやすいように芝居をしなさい。そうすれば、相手だけでなく自分もよく見える。その関係性のよさは観ている方にも伝わって、お客様の気持ちもよくなる」と指導してくださったんです。この教えが舞台人としての私を作ったのはもちろんですが、舞台以外にも当てはまる言葉だなと思っています。先ほどべに子ちゃんが「元気になってみんなを楽しませる」と話してくれましたが、どちらも相手を思うというところは同じですね。
 そうですね。そして近頃は人と巡り合せてくれたご縁に感謝しています。宝塚時代は家族よりも長い時間を過ごしている同じ仲間と毎回、舞台を作っていましたが、卒業した今は初めてお会いする方と舞台を作って舞台が終わったらお別れです。最初は「作り上げた関係性もこれで終わり。寂しいけどこういうものなのか」と思っていましたが、最近は「私たちの関係性は終わらない!」と思っています(笑)。これだけたくさんの人がいる中で出会って築き上げた関係性は、千秋楽がきたから終わるようなものではありませんから(笑)!
凰稀 「またね!」って言いたいよね。
 そうです! また巡り合いたいという願いを込めて「またね!」って。

――前回のインタビューで話題に

――前回のインタビューで話題に出た〝双子コーデ〟のお話もぜひお願いします。
 かなめさんが星組時代に『宝塚GRAPH』の対談企画で私を指名してくださったことがありました。ツーショット撮影もあるので「何を着よう?」となったんです。
凰稀 宝塚時代は撮影の衣装は全部、自分で用意しますから。
 「今度の休み、一緒に梅田に見に行こう」と行ったのはいいんですが、私たち身長もあるし腕も脚も長いので、合う服が見つからないんです。
凰稀 「男役っぽく決めちゃう!?」なんて言っていましたが、そもそも服がないんですよね。
 そんな中、すごくカジュアルなチェックのシャツが色違いであって。「これいいじゃん!」となりましたが、先輩とお揃いは着られないから却下だなと思っていたんです。
凰稀 先輩とカブるなんて、絶対にやってはいけないことでしたからね! 服の色も髪形もすべて! でも、先輩の私が「お揃いにしよう!」と言ったら…。
紅 「まじですか??」となって。「先輩がOKならお揃いにしたい!」とノリノリでコーディネートしました (笑)。
凰稀 チェックシャツは私が赤でべに子ちゃんが青の色違い。ボトムはデニム、靴はブーツと、全部お揃いにしたんだよね。
 すごいオシャレに仕上がったから2人とも気に入っちゃって! 撮影の後、その双子コーデのまま月組さんを観劇しました(笑)。
凰稀 お客様は撮影後だと知らないですからね。
紅 「え、お揃い? 何で?」って思っていたはず(笑)!

――とても仲良しだったのですね

――とても仲良しだったのですね。凰稀さんが宙組に組替えになったときはどんな気持ちでしたか?
 悲しかったです。「あなたはまた行ってしまうのねー」っていう感じでした。
凰稀 ふらーっと来て、ふらーっと去った感じ(笑)?
紅 すごく仲良くなって、こらからもっと仲良くしたかったのに…。行ってしまうのが何よりも悲しくかったです。そして、私は後輩なんですけど「かなめさん、宙組に行って大丈夫?」と勝手に心配していました。星組に組替えでいらしたとき、「どうしよう…」となっているかなめさんを見ていますから。かなめさんの同期が宙組にいらっしゃらなかったので、私の同期に「かなめさんをよろしく!」と頼みました!
凰稀 初めての人とすぐに打ち解けられるタイプではないので。でも星組で過ごして、だいぶ人見知りは改善されたんですよ。
 星組にいらしたとき「なんだ、ここは!?」と思いました(笑)?
凰稀 雪組は大人な感じでしたけど、組によって雰囲気が全然違うんだなと思いました(笑)。
 私もうるさいですけど、星組は他にもわんぱくな子が揃っていてキャーキャー騒いでいましたから(笑)。かなめさん、「ここは動物園か?」みたいな顔をされていましたよ(笑)。
凰稀 (笑)。そんな中、最初に声をかけてくれたのがべに子ちゃんでした。
 「何かわからないことありますか?」ってね。
凰稀 「皆の名前を覚えたい」と言ったら「一緒に覚えましょ!」って全員教えてくれて。それ以外もすべて、べに子ちゃんが教えてくれました。最初に声をかけてくれたときから、ずっと一緒にいたよね。
 私のほうが二期後輩なのですが、同い歳なんです。なのにかなめさんは組替えしていきなり二番手になられたので。「いきなり、あんなことさせられてる! こわっ!!」と思いながら見ていました。
凰稀 星組に行くまで銀橋渡りとかしたことなかったですから。

紅 かなめさんが初めて銀橋渡り

 かなめさんが初めて銀橋渡りした後、お話ししましたよね! かなめさんが「銀橋ってこのくらいなんだよ!!」って両手で幅を作って、どんなに細いか教えてくださって。私が「えーっ、こんだけ!?」って(笑)。
凰稀 「これしかないの!!」と。実際の幅より細く教えていたと思いますけど(笑)。
紅 「うそっ! 怖いですねー」って、ホラー話するみたいにキャッキャ話していました(笑)。
凰稀 べに子ちゃんは私が銀橋を渡っているのをいつも観に来るんですよね(笑)。
 いっつも袖から観ていました!
凰稀 忙しいでしょ? 「来なくて大丈夫だよ」って言っても来るの(笑)。
 好きだし、気になるからいっつも行っちゃうの(笑)。私も役がつくようになったときに、かなめさんが星組にいらしていろいろなことを急にやっていたすごさに改めて気づいて。「かなめさん、そりゃビビりますわな! 協力できることがあったら何でも言ってください!」って、結局かなめさんを観に行っているの(笑)!
凰稀 あの頃、いちいち2人でビビッていたよね(笑)!
 ビビッてた! 「えー、かなめさん、そんなことするの! 震えるーっ」って(笑)。でも「一緒にビビっているだけではいけない、安心させなければ」と思ったので、後半は「できますって、大丈夫ですよ」と余裕みせておいて、心の中では「恐ろしっ!」と震えていました(笑)。楽しかったですよね、あの頃。なのにあなたは…。
凰稀 「また行ってしまうのねー」だったから。
 宙に組替えしても、最初は一緒に遊んでいたんですよね。でもトップさんになったら、そんな時間はありません。私もトップになったときは大変でした。
凰稀 べに子ちゃんがトップになった公演、観に行ったよね!
 観に来てくださいました!
凰稀 「べに子が、べに子が…大きくなったね、べに子ちゃん!」って!
 感慨深いです。
凰稀 そして、12年ぶりにまた巡り合えたね!
 かなめさんとべに子はご縁で繋がっているんです!
凰稀 ヘンリエッタとガーダが仲良くなりすぎないようにとしないと(笑)。
紅 「やるときはやる子たち」だから大丈夫です!

ノサカラボ舞台『ホロー荘の殺人』
世界の名作ミステリを舞台化・上演する長期プロジェクト、ノサカラボ。今回はアガサ・クリスティー『ホロー荘の殺人』を野坂実の演出・構成で上演。ロンドン郊外に住むヘンリー・アンカテル卿とその妻ルーシーのもとに親しい人々が集まった翌日、銃撃事件が起こり…。愛と憎しみが渦巻く中、真犯人と事件の謎が明らかに――。5月3日(水・祝)~8日(月)東京・三越劇場(東京都中央区日本橋室町1-4-1日本橋三越本館6階) 原作・脚本:アガサ・クリスティー 演出・構成:野坂実 翻訳:小田島雄志、小田島恒志 キャスト:凰稀かなめ/紅ゆずる/林翔太 高柳明音/旺なつき/綾凰華 佐々木梅治(劇団民藝) 河相我間/細見大輔 松村優/中尾隆聖/長沢美樹(声の出演)

凰稀かなめ
‘00年に宝塚歌劇団に86期として入団。雪組、星組を経て’12年に宙組トップスターに就任。『風と共に去りぬ』のレット・バトラー、『ベルサイユのばら』のオスカル等を演じ、‘15年退団。退団後も舞台を中心に映像でも活躍している。

紅ゆずる
‘02年に宝塚歌劇団に88期として入団。華やかさとコメディエンヌとしての才能が支持され、’16年に星組トップスターに就任。‘19年退団。退団後は舞台出演のほか、特技の俳句に関す分野にも活動の幅を広げている。

撮影/平井敬冶 取材/よしだなお 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)

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最新号 202412月号

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表紙モデル:山本美月

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