大人気コミックが原作のアニメ映画『BLUE GIANT』で声を担当した俳優の山田裕貴さん、間宮祥太朗さん、岡山天音さん。映画公開を前に、数々の話題作に出演し、支持を集めている大注目の3人にインタビュー! 前編では作品への思いや演じたキャラクターについてのお話に加え、お互いの印象などを伺いました。
――世界一のジャズプレーヤーを目指す青年・宮本 大を中心としたストーリーが感動的な『BLUE GIANT』。原作にはどんな印象を持っていますか?
山田 僕は4年前くらいにSNSで「泣ける!」みたいなことをつぶやいていて――。『BLUE GIANT』とはそのころ出会いました。大は〝自分を信じる〟という、人間が生きていくうえで一番難しいことを体現している。どこか不安を抱えたり、ダメかもしれないって思ったりすることが一切なく、「俺はやれる」って心底、自分を信じている大の人生とその強さに感動しました。かといって大はワンマン・アーミーではなく、ちゃんと出会った人や仲間と関わって、上というより前にひとつひとつ進んでいる感じがものすごく魅力的でしたね。
間宮 俺が好きなのは、大の人生がすごく感じられること。マンガではあるけれど、大にはマンガの主人公っぽさがありつつ、意外とリアリティが強い気がして。サッカーには全然詳しくないけど、ワールドカップでメッシが優勝したとき、メッシって大みたいなのかなと思ったんですよね。世界一のサッカープレイヤーになるって信じてないと、あそこまでたどり着けないだろうし。自分が信じていることへの強さというか、「俺はなりたい!」じゃなくて「なる!」っていう人の眩さを、僕の演じた雪祈や周りにいる人間は感じていて――。サクセスストーリーではあるけれど、どこかリアリティを感じられる作品ですね。
岡山 僕ももともと原作が好きで読んでました。大っていう稀有な存在がいて、出会った人たちが大のサックスに向けた情熱にあてられて、それまでの自分じゃしなかったような選択をしていく。玉田もその一人で、あれだけ短期間でこの二人と同じステージに立てるようになったのはドラムに向ける尋常じゃない情熱があったからで、その情熱に火をつけてくれたのは大。そういうマンガのキャラクターたちと近い純度で、自分も表現や創作活動のスイッチを大に入れられて、大に背中を押される感覚がありました。僕はもともと劇場アニメが好きでいつかその仕事をしてみたいと思ってたから、今作で初めて長編アニメの声優を務めさせていただけたことはうれしいこと尽くしでしたね。
――映画『BLUE GIANT』では山田さんがテナーサックスの宮本 大、間宮さんがピアノの沢辺雪祈、岡山さんがドラムの玉田俊二の声を演じています。それぞれ演じた役の好きなところを教えてください。
山田 大の「強さ」ですね。仲間を、サックスを、自分を本気で信じている強さ。観てくれる人には、それが当たり前に聞こえてほしいと思ってます。
間宮 雪祈の、大や玉田とはまた違った素直さですかね。言葉にとげがある部分もあったりするけど、演奏が下手な人に本当に「下手くそ!」って言えるかって思うと…。「下手くそ」ってハッキリ言うことには責任が伴うと思うし、それによって軋轢を生むこともあるけれど、思ったことを素直に言えるところはすごく好きな部分です。玉田が成長したことも受け入れたくないふうに言うけれど、実は素直に受け止めていてその姿に心打たれてる部分もある。他人をよく見ているからこそ自分のことも素直に見れていて、自分の圧倒的に足りてない部分がわかってるのもいいなあと思いますね。
岡山 玉田は、生命力を宿してるキャラクターだと思うんです。大と雪祈という常人離れした二人と一緒にジャズをやっていくことで、常人の玉田はたくさん挫折もするし傷つくし。でも同じステージに立つところまで毎回、立ち上がる。その生命力には憧れますし、自分もそうありたいなと思いますね。
間宮 玉田に関しては、どんな会社に入っても大丈夫そうだよね。
山田 確かに。
間宮 雪祈と大は自分に合った環境じゃないと無理そう。玉田ってどこにいても、
山田 立ち上がる。
――アニメ映画の声優は山田さんが5作目、間宮さんと岡山さんは初ですが、声の演技の面白さと難しさはどんなところでしたか?
山田 何回か声の仕事をやらせてもらったとはいえ、何が得られてどんな成長ができて、それを今回フルに使えてるかどうかもわからないくらい難しさを感じました。普段だったら目線や表情、動きのすべてを使って伝えられるけれど、聴覚に訴えかけるしかない。あとは絵を頼りにキャラクターの表情に合わせて声を乗っけるんだけど、声だけじゃなく心も伴ってないと成立しないし、浮いて聞こえちゃう。大だったら「そんなのハートだべ!」って言うんだろうけど(笑)、僕はそういうタイプじゃないのでいろんな方面から考えて、「どう聞こえるのが大なんだろう」ってずっと探し求めている感覚でした。何より二人の声を聞いた時にはピッタリ!って感じたので、「俺、大丈夫かな?」って。後々、二人もそう感じていたって知ったのですが、アフレコしてる時はそう思ってました。
間宮 ほとんどのことが難しかったですし、今でもそう思ってます。大丈夫だったのかなあって。二人に関しては、裕貴くんが大の声を演じることが自分がこの作品に参加するひとつの大きな要因でもあって。大と山田裕貴には親和性があると思っていたので、一緒にアフレコしたときは「そうだよな、すごく合ってるよな」って思いましたね。天音はもちろん玉田に合ってるんだけど、「本当に初めて? 嘘ついてない?」って思うくらい、最初から上手くて。「やってた?」って言ったよね?(笑)
岡山 「やってた?」って何?(笑)。僕は面白い部分と難しい部分が表裏一体だなと思いました。大きくくくったら、お芝居をすることでは同じなのかもしれないけど、いちいち新鮮なことばっかりで。10年ちょっと仕事してますが、そのなかでもこれだけビビッドで新鮮なことが降り注ぐことってあまりないので、本当に非日常で面白かったです。まあでも難しい。全部難しいし、全部面白かったって感じです。お二人に関しては、大だし雪祈だし絶対大丈夫!(笑)
間宮 (笑)。ありがとう!
岡山 俺が保証します!
山田 ありがとう。
岡山 仮の映像を見させてもらったとき、なんか運命的なものを感じるキャスティングだなってより強く思いました。
――山田さんはお二人より3~4歳年上ですが、ほぼ同世代の皆さん。今まで共演されたこともあると思いますが、それぞれ他のお二人の印象と好きなところを教えてください。
岡山 間宮くんは、自分と一番遠い星の出身の人(笑)。
間宮 ずっとそれ言う(笑)。
岡山 あらゆる意味で一番対極にいる人かな。だから好きなところというか、憧れみたいなものはずっとあるかな。同世代で年齢も一つしか変わらないんですけど、カッコいい先輩ってイメージがずっとありますね。星って遠いけど、同世代で共演させていただく機会も多いんで、一番近くにある星ってイメージですね。山田さんの印象はね…。
山田 ない?(笑)
岡山 なんか不思議なバランスの方ですよね。すごく美しいというか…なんか人間っぽくない感じがありました。
山田 言われるね、よく(笑)。
岡山 だけどすごく泥臭い部分もある気がしていて。ものすごく血が通ってる人という気がするんですよね。そんなギャップのある人ってあまりいないなって。人っぽくなさと全開の人っぽさが、一つのなかにある感じが不思議で形容しがたい方だと思います。好きなところは、本当に真摯に物を見つめるところです。僕、会ったのはトータルで5回くらいしかないので、まだどんな方なのかわからない部分もあるんですけど、現時点ではそう思います。人に対してもそうなんだと思うし、もちろん仕事や自分の役や、もっとミクロで言うと一つのセリフにもフィルターを通さず正面から向き合っている感じがしていて。このペースで働いている人の事柄への向き合い方じゃないなって。苦しくないのかなって心配になるような密度と純度で目の前にあることに相対してるから、そこは好きというよりも魅了されます。
山田 嬉しいね~。間宮くんの魅力は、強さと男らしさと色気。お芝居になると…爆発力がある。
間宮 見てくれた?
山田 もうね、引き込まれるというか、固まってたんですよ。何も考えることなく純粋に作品を観ていた自分がいて、「すげえ!」みたいな。この人はこうやって人を引きつけているんだなっていう印象がありました。今回の雪祈も彼の持ってる色気や性質がピッタリですし、『東京リベンジャーズ』の現場では目から(役を)感じたんですよね。うらやましいなと思って。自分は優柔不断だったりネガティブな部分もあるので、考えて考えて考えないと気がすまないんだけど、そうやってグッグッと進んでいけるのはいいなあと思います。好きっていうのも恥ずかしいんだけど、そういうところが〝好きポイント〟(笑)。天音くんは、お芝居がお芝居に見えないというか。人間ってそういう顔するよねっていう絶妙な表情だったり。自分が相対してても、お芝居のキャッチボールというより本当に会話できてると感じるときがある。それはどんな作品でもそうなんだろうなって感じて、「すげえな、どういう人なのかな~」って思いながらさっきから話を聞いてるんだけど。器用かと思ったら案外、不器用なのかなと。実はそれを隠してるだけなのかもしれないと思いながら…でもそこが〝好きポイント〟(笑)。
間宮 〝好きポイント〟ってなんだよ(笑)。裕貴くんは、実はそんなことはないのかもしれないけど、印象として自分のあられもない姿を人に見せられる人。自分の内臓を人に見せられるというか、自分がもがいててカッコ悪い部分も人に見せられる。言葉ではなんて言ったらいいのかな、泥臭さ?
山田 うん。それも人間じゃん!と思ってるから。
間宮 自分にはできないかなと思うところであって、それがすごく魅力的だし、あの役がいいとかこの役がいいとか言う以前に、山田裕貴が好きっていう人がいっぱいいる理由がわかる気がする。
山田 〝好きポイント〟?(笑)
間宮 うん(笑)。で、天音の〝好きポイント〟は~(笑)、貪欲じゃない?
岡山 貪欲ですか?
間宮 そんな気がするんですよね。その貪欲さというのはストイックな部分に繋がってくるし、こっちが襟を正す気持ちになるというか。なんか天音って緊張感あるんだよね、年下なんだけど。
山田 ちょっと言葉は悪いけど、品定めされてるような感じ?(笑)
間宮 そう! そう!
岡山 言葉悪いな~(笑)
間宮 (笑)。でもそれは人のことをちゃんと見てるってことなんだけど。人を見てるからこそ、自分のこともちゃんと見ていて…。だから緊張感あるんだよね。
山田裕貴
‘90 年 9月18日生まれ 愛知県出身●’11年『海賊戦隊ゴーカイジャー』のゴーカイブルー/ジョー・ギブケン役で俳優デビュー。’22 年にエランドール新人賞を受賞。最近の主な出演作は映画『ヒノマルソウル~ 舞台裏の英雄たち~』『東京リベンジャーズ』『夜、鳥たちが啼く』、ドラマ『ちむどんどん』など。NHK大河ドラマ『どうする家康』、フジテレビ『女神の教室~リーガル青春白書~』に出演中。ニッポン放送『山田裕貴のオールナイトニッポンX』ではパーソナリティを務めている。
間宮祥太朗
‘93 年 6 月11日生まれ 神奈川出身●’08年、ドラマ『スクラップ・ティーチャー~教師再生~』で俳優デビュー。’18 年NHK連続テレビ小説『半分、青い。』に出演し注目を集める。’20 年『殺さない彼と死なない彼女』で映画評論家大賞主演男優賞を受賞。最近の主な出演作は映画『Red』『東京リベンジャーズ』『破戒』、ドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』『ファイトソング』『ナンバMG5』『魔法のリノベ』など。映画『東京リベンジャーズ2』が公開待機中。
岡山天音
‘94年6月17日生まれ 東京都出身●’09 年NHK『中学生日記シリーズ』で俳優デビュー。’18年、『愛の病』にて イタリア・ボローニャで開催された15th ASIAN FILMFESTIVAL 2018 最優秀男優賞を受賞。最近の主な出演作は、映画『青くて痛くて脆い』『キングダム2遥かなる大地へ』『沈黙のパレード』『あの娘は知らない』、ドラマ『最愛』『ミステリと言う勿れ』『恋なんて、本気でやってどうするの?』『やっぱそれ、よくないと思う。』『大奥<3代・徳川家光×万里小路有功編>』など。主演映画『笑いのカイブツ』が公開待機中。
『BLUE GIANT』
世界一のジャズプレーヤーを目指す青年・宮本 大を中心とした感動的なストーリーや、音楽シーンの圧倒的表現力で〝音が聞こえてくる漫画〟とも評されている超人気コミックの初の映像化。主人公・宮本 大の声に山田裕貴、大が東京で出会うピアニスト・沢辺雪祈に間宮祥太朗、大に感化されドラムを始める玉田俊二を岡山天音と人気俳優陣がキャラクターに命を吹き込む。原作/石塚真一「BLUE GIANT」(小学館「ビッグコミック」連載) 監督/立川 譲 脚本/NUMBER 8 音楽/上原ひろみ アニメーション制作/NUT https://bluegiant-movie.jp 2月17日(金)全国公開
【衣装】<間宮さん分>ジャケット¥52,800パンツ¥31,900(ともにアポクリファ/サカスピーアール)シャツ¥25,300(ミューズ/ミューズ ギャラリー)その他/スタイリスト私物
撮影/木村 敦 ヘアメーク/小林純子<山田さん>、三宅茜<間宮さん>、新宮利彦(VRAI)<岡山さん> スタイリング/森田晃嘉<山田さん>、津野真吾(impiger)<間宮さん>、岡村春輝<岡山さん> 取材・文/駿河良美 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)