ジャニーズのアイドルたちのバックステージに密着する人気ドキュメンタリー番組『RIDE ON TINE』。新シーズンでは大ブレイク中の「なにわ男子」のデビューコンサートツアーをフィーチャー。最高のステージを届けるために挑戦を続けるメンバーたちの姿にせまったドキュメントの模様を辛酸さんと一緒に追ってみました。
なにわ男子のデビューコンサートツアーに密着
選ばれたチケット運の持ち主しか観ることができないジャニーズのコンサート。舞台上ではキラキラした姿でお客さんに夢の時間を与えてくれます。そんなコンサートの舞台裏が見られたら……今まで妄想の余地しかなかったゾーンにカメラが入って撮影したのが『連続ドキュメンタリー RIDE ON TIME』。エンターテインメントの世界に生きる人々に密着する番組です。
11月にスタートしたのは、デビュー1年目の7人組グループ、なにわ男子の特集。デビュー後初の全国ツアーに密着します。今、かなりチケットが取れない大人気グループなので、テレビでコンサートシーンと舞台裏を同時に観られるこのチャンスを逃すわけにはいきません。
第1回ではコンサート直前まで演出について模索したり、練習に励む7人の姿が映し出されました。ツアーの演出を担当するのは西畑大吾。「ライブが作ってくれる全ての時間が好き」「恩返しに近い感覚なんですよね」などと、次々と名言を放っていました。
そんな西畑が演出に悩んだとき、そっと寄り添い、ダンスの提案などをしてサポートする道枝駿佑。隣り合って体育座りするシーンに萌えました。
「この7人じゃなかったら、なにわ男子ではないですよね」とグループへの愛を表しつつ「今、ジャニーズだけじゃないじゃないですか、アイドル」「よりいっそう安心してられないですね」と、冷静に語っていました。慢心とは無縁のストイックさがあります。
自分たちで片付けもする謙虚な姿が印象的
衣装担当はファッションに詳しい長尾謙杜。大西流星はツアーのグッズデザインを考案。ハートをモチーフにした、かなりセンスあるデザインでした。歌では大橋和也がリードしていて、低音ボイスを武器に歌唱力を高めているのが高橋恭平。藤原丈一郎はメンバー紹介の映像制作と、全員個性を生かし合っています。
合間に肩を組んだり、とにかく仲が良さそうなのが伝わってきて心が温まります。激しいダンスのあと床に倒れ込み「ものを食わせろ~」と訴えた大西流星のシーンにも癒されました。休憩になると目にも止まらぬ早さで食べ物に向かってダッシュ。若者ならではの瞬発力です。この回の終盤、撮影の衣装の片付けをメンバー自身で行なっているシーンも印象的でした。この謙虚さと初心があれば、長く愛されるグループとしてやっていけそうです。
秒単位で厳密に構成されるコンサートに期待が高まる
第2回は大橋和也が新型コロナ陽性になってしまい、コンサートの東京公演が延期になってしまう不測の事態からスタート。「大橋のせいじゃない」と語るメンバーの友情に胸が熱くなります。
会議室でスタッフも混じっているシーンで気になったのが、ジャニーズ以外の人の顔がぼかし処理されている、ということ。男女問わずぼかされていました。一般の人としての配慮でしょうか。もしくはジャニーズと一緒の仕事は嫉妬されたり、チケットを頼まれたり大変なので、ぼかし処理を頼んだのかもしれないと妄想。
そんな中、着々とコンサートの準備は進みます。西畑は構成に頭を悩ませていました。その時の「無理に6秒削らなくても……」という言葉に驚かされました。秒単位で緻密に構成されているコンサートだったとは……ますます期待が高まります。
コンサートの大がかりな演出としては、ハート形の花道と飛び出す飛行機のセットなどがあるようでした。デビューの日、大阪から飛行機でやって来た思い出をファンと共有するための、粋な演出。デビュー日の映像を覚えていたら泣けそうです。
また、新たな試みとして大西流星のピアノと道枝駿佑のギターのコラボ企画が。初心者の大西流星は、最初うまくいかなくて不協和音を奏でてしまいます。「盛大にやらかした」「最初に間違えたらどこから入ればいいのかかわからなくなる」と、本音を漏らす場面も。ファンは不協和音も暖かい笑いで受け止めてくれそうですが、甘んじず地道に練習を重ねる大西。ついに成功した時の、誇らしく嬉しそうな表情が良かったです。
そしてついに開幕したコンサートツアー。稽古着からキラキラしたアイドル衣装に着替え、ステージに立つと瞳がさらに輝きを増していて、オーラも倍増していました。大西流星と道枝駿佑の合奏も無事に成功。画面ごしにコンサートを少し観られてお得な気分です。
血行がよくなる『 RIDE ON TIME』はもはや健康番組
第3回はさらにディープな舞台裏が。若いとはいえ1日2公演もあり、体に負担がかかって不調が出るメンバーも出てきました。
「マッサージ行っていい?」と、マッサージ師さんが待機する部屋に行く道枝。ジャニーズのコンサートにはマッサージのプロが帯同している、ということを知りました。腰が痛いという西畑大吾もマッサージルームへ。マッサージのアシスタントとか募集していないでしょうか……そんな邪心が芽生えます。
体がキツくても、お客さんを楽しませるためにさらに派手な演出を考えるメンバーたち。「オープニングのブロックは盛り上げるのに徹してほしい」「『シンシア』では走る」といった演出の提案が。疲労も見せず、走ったりジャンプしたり叫んだりして、全身全霊でお客さんを盛り上げる7人はプロだと感じ入りました。お客さんからエネルギーをもらっている部分もあるのかもしれません。ポジティブな循環がありそうです。
今度は長尾謙杜が新型コロナ陽性になってしまい、静岡公演から福井公演まで6人で開催されることに。フォーメーションが変わってしまい、また新たな段取りを覚えなければなりません。そんな試練もプロ意識と若さで乗り越えるメンバー。療養を終えた長尾謙杜が帰ってきたら、コンサート会場の壁にレーザーで「おかえり謙杜」と描くという演出に心温まります。最後までステージをアップデートし続け、走り回る量も増え続け、青春とは挑戦の連続なのかもしれない、と感じ入りました。
コンサート映像の合間に、ときどき楽屋で誰かが半裸になっているシーンがサブリミナル的に入ってきて、おかげでさらに血行が良くなりました。『 RIDE ON TIME』は健康番組かもしれません。
辛酸なめ子
イケメンや海外セレブから政治ネタ、スピリチュアル系まで、幅広いジャンルについてのユニークな批評とイラストが支持を集め、著書も多数。近著は「辛酸なめ子の世界恋愛文学全集」(祥伝社文庫)、「女子校礼賛」(中公新書ラクレ)、「電車のおじさん」(小学館)、「新・人間関係のルール」(光文社新書)など。