小島慶子さんにぶつけてみた!思わず涙、大人の人生お悩み相談【フリーランスで将来が不安】
7月30日にオンラインで開催された『ウェルビー女子の日』。その5限目のゲストに来てくださった小島慶子さんのお悩み相談は、聞き役の堀田茜ちゃんもスタッフも、思わず涙ぐんでしまうほど心に刺さるものでした。その温かく実感のこもったアドバイスをぜひ誌面でも!と実現したこの企画。CLASSY.Collegeのライター講座受講生たちから、それぞれのキャリアの悩みを募集しました。
CLASSY.College生のリアルな声をぶつけてみました
【お悩み】フリーランスでいつも心配
《お悩み》
フリーランスです。仕事とプライベートの境目が曖昧で、自分で時間管理ができて自由がきくのはメリットです。でも心配性の自分としては、何かやっていないと、万全に準備をしないと心配になってしまい、いつも仕事の事を考えてしまいます。
なぜ不安か、大切にしたいことは何か。それがわかっていれば未来予想図と違っても、きっと大丈夫
――次の方はフリーランスで働いていらっしゃいます。自由だけど心配性で、仕事に終わりがない…という悩み。
小島さん:そうですね…この方もなぜ自分は心配性なのかを考えてみてほしい。その心配はどこから来ているのか。来る仕事は全部やらないと…100求められたものには110、200で応えないとと…と常に追いまくられる気持ちってフリーランスの人はみんなあると思うんです。私の場合は、子どもの学費を私一人で稼がなくちゃ、しかも日本よりも生活費の高いオーストラリアでの家族の生活を、私一人で支えなきゃ、と。とにかく稼ねばならないっていう強い不安があるんです。
でも冷静に税理士とお金の出入りを見たりすると「いや、明日にでも食えなくなるっていう状況でもないから、もっと健康に投資した方がいいな」とわかる。…それでもやっぱり、一人で夜中に考えていると不安に飲み込まれちゃう時があるんです。やばいやばい、私この先どうなるんだろう!?みたいに。もう1秒たりとも怠けちゃいけない、という気分になるんですね。そんな時は深呼吸して、原点に戻るようにしてます。この不安は、24時間365日ずっと仕事で頭の中をいっぱいにすることによって解消できるのか?と。
この方も、今は不安が「仕事をしなくちゃいけない」っていう気持ちに変換されているけれど、実は仕事とは関係ないものが答えかもしれないですよ。
―たしかに、仕事の心配とプライベートのあれこれがごっちゃになっちゃう時、あります。仕事の不安と思っていたら、よくよく考えると、プライベートなことが尾を引いていたり。
小島さん:そうなんですよね。CLASSY.世代の30代だと早い方はいわゆる〝ミッドライフクライシス(中年の危機)〞に陥ることもあるかもしれません。先ほどの昇格にこだわる方もそうですけど、自分はまだ何者でもない、それでいいのか?!という不安です。仕事を頑張ればこの不安から逃れられるんじゃないのかと思うけど、不安の根源はそこにはないのかもしれない。本当にね、私も苦しかった。仕事を頑張れば、楽になるはずだと思ってたんですけどね。
20代はがむしゃらに頑張るとそれなりに1歩2歩前に進めたから、それで済んできた。だけど30代以降は仕事だけでは解決できないかもしれません。私の場合は、仕事以外の人間関係が救いになりました。例えばNPOで社会課題に取り組んでいる友人たち。彼ら彼女らを通じて「私のわずかな人生経験でも、誰かの役に立つことがあるんだな」とか、「同じようなしんどさを抱えている人がこんなにいたんだな」って思えるいろんな出会いがありました。で、だんだん「自分は不完全だけどここにいてもいいのかな」と思えるようにもなりました。人によってはそれが推し活かもしれないし、そういうサードプレイスで仕事人脈とは違う人間関係を増やしていく。そこで見えてくる、新しい自分があると思います。
CLASSY.世代の妹たちへ――
「CLASSY.世代のみなさんは、悩み多き年頃ですよね。私はもう二度と戻りたくないくらいです(笑)。30代は特に、人生が変化するとき。働き方とか、結婚や出産をするしないとか…だから正解がわからなくなると思う。20代までは横並びだった友達とも差が付いた気がしてしまったりね。でも、今年50歳になった私が当時の自分を振り返って言えることは、「いま考えた自分の未来は、いい意味で裏切られるんだよ」ってこと。
どんなに正確に未来予想図を描いているつもりでも、思いがけない出会いや変化が起きて、同じ自分ではいられない。だからまだ、この路線でいくとか強みはこれだとか、って固めなくていいと思います。まだ、まだ変化しますよ。私なんて40代の10年間で激変しましたから!オーストラリアで子育てするとも、大黒柱になるとも思ってなかったです。
CLASSY.世代は悩み多き時期だから、先のことを考えて「自分はこの流儀で行く」って決めたくなる気持ちはわかるし、それは決して無駄ではないですけど、将来のためでなくて、今大切にしたいことを優先していいいんですよ。目指すべき生き方・働き方って何だろう?自分の強みを活かすにはどうすれば?もっと成長したい、高みを目指したい。できるはずだ…そう考えることができるのは、キャリアや経験を重ねてきた30代だからこそです。でも考えすぎないで。
何かを決める時には、自分の不安や喜びという根本的な部分を考える習慣をつけるといいと思う。「私はこれを大事にするんだ」という原理原則がわかっていると、何が起こったとしても変化に合わせて判断ができる。これがちょっとだけ長く生きた私の、実感ですね。
人は誰しも年齢を重ねるし、大抵は若い時に期待したほどドラマチックな人生にはならない。だけどそのありふれた人生の中に幸せとか喜びは確かにある――30代はそこに辿り着くまでの、なくてはならない迷子期間なんだと思います。」
【小島慶子さんのキャリア年表】
1995年:TBSにアナウンサー職で入社
2000年:仕事で出会った方と結婚
2003年:長男出産。産休育休を取得
2005年:次男出産。産休育休を取得
2010年:TBSを退社。フリーランスに
2014年:オーストラリアとの二拠点生活をスタート
小島慶子(Keiko Kojima)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。執筆、講演、メディア出演など幅広く活躍し、夫と息子2人が暮らすオーストラリアと日本を行き来する生活を続けている。新刊対談集「おっさん社会が生きづらい」(PHP新書)他著書多数。雑誌「VERY」で小説連載も。
撮影/水野美隆 ヘアメーク/藤原羊二 スタイリング/荒木里実 取材補助/岩本亜有美 再構成/Bravoworks.Inc