小島慶子さんにぶつけてみた!思わず涙、大人の人生お悩み相談【転職すべきか、留まるべきか】

7月30日にオンラインで開催された『ウェルビー女子の日』。その5限目のゲストに来てくださった小島慶子さんのお悩み相談は、聞き役の堀田茜ちゃんもスタッフも、思わず涙ぐんでしまうほど心に刺さるものでした。その温かく実感のこもったアドバイスをぜひ誌面でも!と実現したこの企画。CLASSY.Collegeのライター講座受講生たちから、それぞれのキャリアの悩みを募集しました。

【お悩み】転職すべきか、留まるべきか

《お悩み1.》
現在27歳。結婚が決まりました。このタイミングで、仕事を変えたいなと思っています。ただ、今後産休・育休を取得することを考えると、今のタイミングじゃないのかなと思い留まっています。出産後の転職について小島さんはどうお考えでしょうか。

《お悩み2.》
新卒で入社し今年10年目の32歳です。ずっと同じ部署で働いてきたので、他の部署で経験を積みたいという気持ちが年々強くなっています。昨年思い切って、上司に伝えたところ「異動させたくない!」と言われました。社内では異動希望が正式に出せる制度はないため、転職するしかないのかなと思います。

―ライフステージの変化とキャリアのタイミングで迷う女性が多いのですが、いかがでしょうか。
小島さん:今27歳なんて、まだだいぶ若いですよね!とにかくまずすべきことは、今の職場の制度を調べ尽くすこと。私は実際にそうしました。TBSの場合は育休制度が比較的整っていたのですが、私は独身の時から労働組合の執行委員をやっていたので、制度の改善を進めていました。のちに妊娠したときに、その成果を自分も使いました。丸15年TBSで働いて、すべての制度を使い切ってから辞めましたよ(笑)。この方は出産したいようなので、出産・育児関連の制度が今の職場でどれくらい充実しているのかをまず調べてみる。そしてもしここだと安心して産めないなと思うんだったら、もっと制度が整っている会社に転職するのがいいんじゃないでしょうか。

―その場合は、妊娠する前に転職活動をしたほうがいいと。
小島さん:安心できる環境に転職してから、妊娠・出産したほうがベターではありますよね。逆にもし今の会社が「実は結構いい制度あるんじゃない?」とわかったら、たとえ仕事が退屈でも、その制度を使い切るまでは辞めないっていうのも手ですね。私も仕事が嫌になると何度も思いました「もう会社辞めたいな…」って。でも冷静になって、こんなにお給料が高くて制度の整った会社を辞めるのは本当に得策か?今フリーになって、果たしてこれだけの好条件が手に入るか?と自問自答して。この環境を手放すのはもったいないぞと、何度も気持ちを立て直しましたよ。それから、結婚相手がですね、こんなことを言うのはアレですけど、結婚してみないと本当のところどういう人物かはわからないのですよ。いざ結婚してみたら共稼ぎなのに「やっぱり家のことは、君の仕事じゃない?」なんて言い出すかもしれない。たとえばですが、結婚を機に彼の希望に合わせて仕事をセーブしようと、減収覚悟で正社員を辞めて非正規雇用の仕事に転職したとしますよね。その後、夫がモラハラだったということが判明するかもしれない。それで離婚しましょうとなったときに、「じゃあ元の仕事辞めなければよかった…一人で生きていくの、めちゃ大変ですけど!」ってことになる可能性もゼロではない。

―たしかにそうですね…。よく聞く話でもあります。
小島さん:今言ったようなことを慎重に検討してみてください。会社はいつでも辞められます。キャリアを積んだらそれが武器になるから、転職は若ければ若いほど有利というわけではないし。そこそこの待遇が得られていて産休育休制度もそれなりに整っているのであれば、とりあえずそれを使う。時間をかけて転職の準備も進められるなって考えてみてもいいかもしれませんね。

―そしてもうひとつ、転職絡みのお悩みです。上司から異動させたくないと言われ、転職するしかないのかなと。
小島さん:私は会社勤めは15年しかしていませんが、ひとつ言えることがあります。それは、永遠に居座る上司はいないってことですね。オーナー会社ならば別ですけれど。今この方に異動させたくないと言っているその上司もいつか異動するんですよね。そうすると、違う上司が来たら異動願いが通るかもしれない。だから上司が変わるのを待つのもひとつの手。
あと、自分がしたい仕事があるとして、それは今の部署でも思わぬ形でできるタイミングが訪れるかもしれない。たとえば私、2回目の出産終わって、育休から復帰したらレギュラー番組がひとつもなくて、だから毎日アナウンス室で電話取りをしてたんですよ。「はい、アナウンス部、デイリーデスク小島です」とか言って、他のアナウンサーに来る仕事をずっと受注していたんです。知ってるディレクターがいろんなアナウンサーを発注してくるけど、誰も私の名前は言わないという…結構メンタルやられる仕事です。で、ある日、後輩の男性アナウンサーに「小島さんこの先一個も仕事ないかもしんないのに、いつまで会社にいる気ですか」って面と向かって言われたんですよ。

―とてもストレートなマタハラに聞こえますが…
小島さん:ひどいですよね。今なら完全アウトの発言です。でも当時はマタハラという言葉もありませんでした。頭にきたから「誰かが電話取らなくちゃいけないんだよ。で、私は電話を取ってる。だったら堂々と給料もらっていいでしょ」って言い返しました。でも正直、私アナウンサーとしてはこのまま終わるのかな、だったら他にどんな仕事がやりたいかなと考え始めて、人事部のアンケートには希望する異動先として人事労政部や教育研修部と書いていたんです。私がやりがいを感じるのはとにかく有名になることじゃなくて、なんであれ「人と関わる」仕事なんだなってことがわかったから。
でもね、そのあといろんな巡り合わせで、ラジオの番組が始まったり、報道系の番組にも縁が出来たりした。あの時に腐らなくてよかったなと思いますし、何なら、その時電話を取った経験がすごく自分の視野を広げてくれました。今ではマタハラという言葉が浸透して法律も改正されていますが、そのニュースを見た時も「ああいうことだよね、あれはしんどいよね」と自分ごととして考えることができました。今となってはあの電話とりの期間はすごくたくさんの気づきがあったって、本当に思うんですよね。あの経験が、ジェンダーや働き方についてのコラムを書く原動力にもなっています。だから、長い目でキャリアを見れば不本意な仕事をやっているときが無駄な時間とは限らない。あまり焦らなくていいと思います。

【小島慶子さんのキャリア年表】

1995年:TBSにアナウンサー職で入社
2000年:仕事で出会った方と結婚
2003年:長男出産。産休育休を取得
2005年:次男出産。産休育休を取得
2010年:TBSを退社。フリーランスに
2014年:オーストラリアとの二拠点生活をスタート

小島慶子(Keiko Koji

小島慶子(Keiko Kojima)
エッセイスト、タレント。東京大学大学院情報学環客員研究員。昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員、NPO法人キッズドアアドバイザー。執筆、講演、メディア出演など幅広く活躍し、夫と息子2人が暮らすオーストラリアと日本を行き来する生活を続けている。新刊対談集「おっさん社会が生きづらい」(PHP新書)他著書多数。雑誌「VERY」で小説連載も。

撮影/水野美隆 ヘアメーク/藤原羊二 スタイリング/荒木里実 取材補助/岩本亜有美 再構成/Bravoworks.Inc

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