私たち人間は、一日の中で「歩く」「座る」「食べる」「寝る」など、意識する、しないにかかわらず、さまざまな「動作」を行っています。今回は、そんな「動作」を表わす漢字の中から、読めないかもしれないものを集めてみました。いずれも、常用漢字外の漢字の訓読みになりますが、ヒントとなる例文を手掛かりに読んでみてください。
1.「躓く」
最初は、「躓く」です。何と読むでしょうか? ヒントとなる例文を提示します。「石に躓いて思わず転んでしまった」。これでいかがですか?
正解は、「つまずく」でした。「躓(音読み=チ)」は、そのまま「つまずきたおれる」ことを表わす漢字です。したがって、「歩行中に足元を物に当てて前のめりになる」時に使いますが、「大学受験に躓く」のように、「物事の途中で、思わぬ障害に突き当たって行き詰まる」時にも使えます。
なお、平仮名にする時の現代仮名遣いは、「つまずく」(現代語の意識では「つま」と「つく」に分解しにくいと考えるため)が正しいのですが、「つまづく」の表記も「許容」とされています。
2.「頷く」
次は、「頷く」です。何と読むでしょうか? ヒントとなる例文を提示します。「彼は満足げににっこりと頷いた」。いかがですか?
正解は、「うなずく」でした。漢字「頷(音読み=ガン)」は「あご」を表わす漢字ですので、「頷く」とは「同意・納得などの気持ちを表すために、首(あご)を縦に振る」ことですが、「大臣の答弁に頷く人はいなかった」のように、「単に同意・納得する」時にも使います。
なお、「うなずく」の平仮名表記も「うなずく」が正しく、「うなづく」が「許容」扱いとなります。
余談ですが、ある年齢以上の方々の中には、かつての漫才ブームの際に、有名漫才コンビの「~じゃないほう」の三人を組ませた「うなずきトリオ」を思い出す人もいるでしょうか。
3.「跪く」
最後は、「跪く」です。これも「足偏(あしへん)」ですから、足の動きに関係していますね。さて、何と読むでしょうか?ヒントは「祈りを捧げるために神前で跪いた」。いかがですか?
正解は、「ひざまずく」でした。漢字「跪(音読み=キ)」は、そのまま「ひざまずく」ことを表わしています。つまり、「両ひざを地面や床に付け、腰と腿(もも)を真っすぐに伸ばし、姿勢を高くして座る」ことを表しますが、このような姿勢を取ることから、単に「相手に屈服する」時にも使います。
難しいのは、「ひざ+つく」だから、さすがにこれは「ひざまづく」が正しいでしょう、と思った方もいますよね。実は、これも「ひざまずく」が正しく、「ひざまづく」は「許容」扱いです(「稲妻」だって「いなずま」が正しく、「いなづま」は許容なんですよ)。
いかがでしたか? また、いつか続編をと考えております。では、今回はこのへんで。
《参考文献》
・「広辞苑 第六版」(岩波書店)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
・「できる大人の漢字大全」(三笠書房)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)
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