カンヌで話題の映画『PLAN 75』|磯村勇斗さんは脚本にひとめぼれだった

『今日から俺は‼』の超ヒール役、『きのう何食べた?』の小悪魔・ジルベール、放送中のドラマ『持続可能な恋ですか?』の幼なじみ男子など、作品によってまったく違う魅力を見せてくれる磯村勇斗さん。カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品され、今話題の映画『PLAN 75』の公開を前に、2回にわたりインタビューをお届けします。

――75歳を迎えた人々に〝命の

――75歳を迎えた人々に〝命の選択〟=自らの生死の選択権を与える制度が実行された社会を描く『PLAN 75』。自らの生死を選ぶ権利を保障する制度に翻弄される人々を描いた衝撃作ですが、オファーを受けたときの率直な感想は?

「まず脚本をいただいて読んだのですが、自分の感性と内容がマッチしたと言いますか、監督の早川(千絵)さんの描く脚本の世界観が面白いなと思って。いわば、ひとめ惚れでした。扱うテーマも興味深いなと思いましたし、セリフじゃないところの描き方も丁寧でこの世界観が好きだなと思いましたね」

――完成作を観たときはいかがでしたか?

「脚本を読んでいたときはずっと緊張感や不安な感じがあったんですが、できあがった映像にも同じような感覚がありました。画がすごくキレイだし、切り取られた構図も好きだし、色味も含め全体を通して不安定なものが感じられて――。クライマックスに向けて加速していくところもよかったし、ラストシーンの光景もすごくキレイだなと思いました。僕は〝画〟とか〝切り取り方〟とか、とても大事だと思うんですよね。映像が好きなので、そういう目線でも観てしまうんですけど。倍賞(千恵子)さんのお芝居はできあがってから見たんですが、倍賞さんの生きている姿が切なくもあり、力強いものを感じて、倍賞さんの映画だなと思いましたね」

――個性的な役、クセのある役も

――個性的な役、クセのある役も多い磯村さんですが、今作では<プラン 75>の申請窓口で働く市役所職員・岡部ヒロムを演じています。真面目で優しく、言葉は少ないけれど心情が変化していく表情の演技に引き込まれます。

「単純にヒロムを演じることだけを考えていました。公務員がどんな仕事なのかを調べたりもしましたが、扱ってる内容が<プラン75>という架空の制度なので、そこをヒロムがどうとらえているかを考えながら演じていました。物語の前半は<プラン75>を推進する立場として、淡々と優しくご年配の方に伝えていく役割でしたが、思いがけず叔父さんに会ったのをきっかけに内側の心情が変わっていくところをどう感じながらどう見せていくか――。前半との違いを見せなければいけなかったので、そこは監督と逐一、話しながら集中してやっていた気がします」

 

――撮影現場で印象的だったこと

――撮影現場で印象的だったことはありましたか?

「叔父さん役のたかお鷹さんが嘔吐してるシーンでは、たかおさんが実際に手を口に突っ込んで嘔吐していたんですよ。ベテランの方が体を張ってリアリティを追求している姿を見てすごいなって思いました。また、それを受け入れ、現場でリアルに生まれるものを大事にする監督だったので、すごく刺激を受けた現場でした」

――コミック原作ものから社会派の作品まで幅広く出演し、演じる役のふり幅の広さでも有名な磯村さんが出演したいと思うのはどんな作品でしょうか。決め手になるのは?

「脚本ですね。作品にとって一番大事なのは脚本だと思うので、脚本がどれだけ素敵なものになっていて自分を刺激するかが、オファーを受ける一つの大きなポイントになっていると思います。あとは、監督ですかね。自分が好きな作品を手がけている監督のお仕事はやりたいと思いますし、興味のある監督さんや面白いなと思う監督さんと組んでやってみたいという思いがあるので、それも大きなポイントですね」

――磯村さんと同世代のCLAS

――磯村さんと同世代のCLASSY.読者に向けて、今作を通じて伝えたいことや注目してほしいところは?

「『PLAN 75』を通して、生きることや命を考えるきっかけになる気がしています。これからの自分が生きる道すじを考えるきっかけになるかもしれないし、日本社会の現実や世界のことにまで視野を広げてもらえたら嬉しいなと思います。自分たち同世代のひとりひとりが考えを持って行動できるところまで、いろいろ考えてほしいですね。僕自身、高齢化社会の問題についてずっと疑問に思うところがあって、そのタイミングで今作のお話をいただいたんですね。このまま高齢者が増えていく日本で、若い世代が何のために働いて何のために生きていくのか、考えなきゃいけない時期なんだろうなと思ってます」

磯村勇斗

‘92年9月11日生まれ 静岡県出身 血液型A型● ‘17年連続テレビ小説『ひよっこ』でヒロインの相手役を演じ注目される。最近の主な出演作は映画『ヤクザと家族 The Family』『東京リベンジャーズ』『ホリック xxxHOLiC』、映画&ドラマ『今日から俺は!!』『きのう何食べた?』、ドラマ「サ道」シリーズなど。ドラマ「持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜」放送中。初主演映画『ビリーバーズ』が7月8日(金)公開。

『PLAN 75』

高齢化問題に対処するため、75歳以上の高齢者に自ら死を選ぶ権利を保障し支援する制度<プラン75>が実施された社会を描く。命の選択を迫られる主人公・角谷ミチを演じるのは倍賞千恵子。磯村勇斗は市役所の<プラン75>申請窓口で働く岡部ヒロムを演じる。他の出演/たかお鷹、河合優美ほか。脚本・監督/早川千絵 ●6月17日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開

撮影/イマキイレカオリ ヘアメーク/佐藤友勝 スタイリング/齋藤良介 取材・文/駿河良美 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)  ジャケット ¥178,200シャツ ¥85,800パンツ ¥125,400シューズ ¥50,600(すべてMARNI/マルニ ジャパンクライアントサービス 0800-080-4502)

Magazine

最新号 202412月号

10月28日発売/
表紙モデル:山本美月

Pickup