CMでも広告でも母娘は〝仲良しで当然〟かのごとく描かれるばかり。身近な友人でさえSNSで〝いかに母と仲良しか〟を強調するポストをしていたり。ですが、本当に母娘は絵に描いたような仲良しじゃないといけないのでしょうか?いいえ、無理しなくていいんです。人には人の、母との距離。
「あなたのためを思って言っているのよ」という母の言葉が重いです
【相談者】Aさん 33歳・既婚・子供あり
母が思う幸せ=私にとっても幸せだと思い込んでいて困ります
「自分がしたかったのにできなかったこと、自分が幸せに思っていることを〝それだけが正解〞と言わんばかりに押しつけてくる母にうんざりしています。自分の喜怒哀楽=私も同じように感じると思っていて、自分に経験がないことで私が幸せだと思っていることについては『そんなようじゃ心配よ』と言い出し、しつこいんです。自分の成功体験と理想しか正しくないと思えるってある種幸せだなと思うけど、それ以外のものを選んで生きる私を認めないのは勘弁してほしい。否定はしてこないけど『もっとこうしたら?あなたのためを思って言っているのよ』と、正解を教えるつもりで説いてくるんです。結婚して自分の家庭ができたらそうしたことから解放されるかと思ったら、今度は家庭のあり方や子育てについても意見を言ってきて困っています。この先もこれが続くのかと思うとしんどい。認めてくれなくてもいいから、そろそろ本当に干渉するのをやめてほしいんです。どうしたら母からの見当違いの意見を減らせるのか教えてください」
【先生からのアドバイス】残念ながらお母さんが変わることはないので上手に受け流して
「自分が果たせなかった夢を子で果たすことを『代理満足』と言い、歴史的にも親子関係に多く見られる話です。戦前、女性が大学まで行くことが珍しかった時代に〝それだとこれからの時代に苦労するから娘を大学まで行かせた〞と発展性のある代理満足はそれで美談になった。ところが今は世の中の状況や価値観が刻一刻と変わっていく社会。親世代にいいとされていたものが子世代にとってもいいとは限らず、それを判断できない親は問題です。現実が見えていなくて、現代では自分が生きてきたようにはいかないことに気づいていない。浮世離れしたお母さんなのだと思います。
残念ながらお母さんはそういう人だと受け止めて、意見されてもハイハイそうだねとやり過ごし、覚悟を持って一定の距離を置くべきです。黙っていられないようであれば『それってお母さんの考える私のためだよね。でも私の考える私のためはちょっと違うかもしれない』と返すくらいにとどめておくのがいいでしょう。そこで自己主張を加えるといい結果にならないことが多いんです。『誰の犠牲のうえで生きていると思うの?』なんて言われたりして、最初に感じた嫌な気持ちより10倍くらい傷つくことになる場合もあるので、上手にあしらって」
一緒に考えてくれるのは…
公認心理師・臨床心理士/信田さよ子先生
原宿カウンセリングセンター顧問、NPO法人RRP研究会 代表理事。カウンセリングのほか、親子関係、DV、虐待を扱う著書も多数。最新著『アダルト・チルドレン』(学芸みらい社)
イラスト/ヤチナツ 取材/野田春香 再構成/Bravoworks.Inc