意外と読めそうで読めない漢字を紹介しているCLASSY.ONLINEの漢字連載。今回も、漢字学習の目標となり、その到達度をはかることのできる「日本漢字能力検定(漢字検定)」で、2020年度に実際に出題された過去問から、いくつか問題をピックアップしていきます。
1.「漸次」
最初は、「景気は漸次回復している」の問題文で出題された「漸次」です。さて、何と読みますか?
「ザンジ」と読んでいませんか。これは漢字検定に限らず、入試問題などでも誤読の多い「定番」問題。正解は「ゼンジ」で、「しだいに・だんだん」という意味で使われます。ちなみに、「ザンジ」と読む熟語に「暫時(=しばらくの間)」というのがあって紛らわしい。「斬」「暫」が「ザン」で、「漸」は「ゼン」。これは要注意です。
さらに、「漸」と「暫」の二つは訓読みでも、「漸く」と「暫く」になって、送りがなが「く」とともに同じことから、これがまた読み間違いが多いのですが、正しく読めますか?
「漸く」が「ようやく」、「暫く」が「しばらく」と読みます。
2.「遊山」
次は、「連れだって物見遊山に繰り出す」の問題文で出題された「遊山」です。さて、何と読みますか?
「ユウザン」「ユウサン」と読んだ人はいませんか。正解は「ユサン」です。「遊山」とは、「野や山に行って遊ぶこと・気晴らしに遊びに出かけること」の意味で、問題文のようにほとんど「物見遊山」と四字熟語の形で使われます。
なお、「遊」の音読みと言えば、もちろん「ユウ」(これは「漢音=中国の唐の時代の発音」)が一般的ですが、この「ユ」(これは「呉音=日本に最も古く伝わった発音」)も、常用漢字表にたしかに入っています。ただし、「遊山」以外だと、目にするのは「遊行(ユギョウ=僧が教化や修行のために各地を巡り歩くこと)」くらいでしょうか。正月の箱根駅伝ファンは「遊行寺の坂」を思い出されることでしょう。
3.「疾病」
最後は、「医療需要の度合いを疾病別に調べる」の問題文で出題された「疾病」です。さて、何と読みますか?
恐らくは、「シツビョウ」と読んだ人が多いのではないでしょうか。「疾」も「病」も常用漢字ですが、「疾」のほうは「疾走」や「疾患」などよく目にする熟語があるので、これは「シッ(シツ)」と読めるとして、「病」の読みが正解のカギを握っていますね。現在の一般的な音読みは「ビョウ」(これは呉音)ですが、もう一つ、常用漢字表には「ヘイ」(こちらは漢音)」の読みも記載されています。「やまいだれ」の中に「丙(ヘイ)」がありますね。
ということで、正解は「シッペイ」でした。ちなみに「疾」「病」のどちらの漢字も「病気」の意味ですが、手元の漢和辞典では「疾」のほうは「急性の病気」、「病」のほうは「重い病気」と違いを説明しています。
いかがでしたか?「高校卒業・大学・一般程度」という「2級」レベルでも意外と簡単、という声も聞こえてきそうですが、主催者から発表されているデータによると、実は、「読み」の問題は一番正答率が高く、2級合格(正答率80%以上が合格ライン)のためには、ミスを避けなけなければならない設問です。では、今回はこのへんで。
《参考文献》
・「漢検過去問題集2級」(日本漢字能力検定協会)
・「新明解国語辞典 第七版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)