恒例の意外と読めない漢字記事、前回に続いて、漢字学習の目標となり、到達度をはかることのできる「日本漢字能力検定(漢字検定)」の2020年度に実際に出題された過去問からの出題です。さて今回は、訓読みを選びました。それでは、紹介していきます。
1.「弄ばれる」
最初は、「小舟が大波に弄ばれる」の問題文で出題された「弄ばれる」です。さて、何と読みますか?
「翻弄(ホンロウ)」などの熟語があるように、音読みは「ロウ」ですが、もちろん「ロウばれる」ではありません。正解は「もてあそ・ばれる」でした。「弄」の字が持つ意味は、「もてあそぶ・思いのままに操る・なぶる」です。
なお、この漢字を含めて、漢字一文字の場合でも音読みをする場合はあるので注意が必要です。たとえば、「詭弁(キベン)を弄する」です。漢字「弄」にサ変動詞「する」が結合した複合動詞ですので、これは「弄(ロウ)する」と音で読みます。「詭弁を弄する」は、「道理に合わないことをもっともらしくこじつけて主張する」という意味で、よく使われる言い回しでもありますので覚えておきましょう。
2.「嘲る」
次は、「世間知らずの若者をさんざんに嘲る」の問題文で出題された「嘲る」です。さて、何と読みますか?
「嘲笑(チョウショウ)」などの熟語が思いついた人もいるでしょうが、「チョウる」ではありませんね。正解は「あざけ・る」でした。「嘲る」とは、「言葉に出したり笑ったりして、人をばかにする」ことですから、先に例に挙げた熟語「嘲笑」も、同じ意味になるわけです。
なお、常用漢字表に記載された訓読みは「あざける」だけですが、「嘲う」または「嘲笑う」と書いて、「あざわら・う」と読む「表外読み」があります。
3.「綻ぶ」
最後は、「庭の梅の花が綻び始めた」の問題文で出題された「綻ぶ」です。さて、何と読みますか?
問題文がかなりヒントになったと思いますが、「綻ぶ」だけでは読めない人も多いのではないでしょうか。正解は「ほころ・ぶ」です。「綻ぶ」とは、この問題文のように、「花のつぼみが少し開く」という意味以外にも、「袖が綻びる」のように、「衣服の縫い目がほどける」意味でも使います。「綻」の字は、1981年に常用漢字表が最初に決められた時には含まれていなかった字ですが、2010年の改定で新たに付け加えられました。ですから、この「ほころ・ぶ」の読みも、常用漢字表にきちんと記載されているわけです。
なお、この「綻」は音読みも注意です。「破綻」は読めますか?「ハジョウ」と読んだ人はいませんか?これは「ハタン」です。同じ「旁(つくり)=漢字の右側の部分」を持つ「錠」につられて、「ジョウ」と読む間違いが多いのですが、「綻」の音読みは「タン」です。熟語としては、この「破綻」くらいしか、ほとんど目にすることはないと思われますので、これを覚えておきましょう。
正答率はいかがでしたか?「高校卒業・大学・一般程度」という「2級」レベルでも意外と簡単、という声も聞こえてきそうですが、主催者から発表されているデータによると、「2級」問題の中でも、一番正答率が高いのが「読み」の設問であり、受験者全体では85%以上という最も高い数値です(逆に低いのは「誤字訂正」「四字熟語書き取り」)。ですから、2級合格(正答率80%以上)のためには、「読み」はミスを避けたい設問と言えます。では、今回はこのへんで。
《参考文献》
・「漢検過去問題集2級」(日本漢字能力検定協会)
・「新明解国語辞典 第七版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)