私たちの日常をザワザワさせる〝うらやましい〟気持ち。リアルな世界だけにとどまらず、ネットの世界でも私たちの心を乱す〝うらやましい〟気持ちについて、その正体や付き合い方を話題の脳科学者、中野信子さんに教えていただきました。
どうして〝うらやましい〟と思ってしまうの?
脳科学者・中野信子さんが解説!
ただモヤモヤ、イライラしてしまうだけで自分でもうまく説明できず、持て余してしまう〝うらやましい〟気持ち。そもそもなんでうらやましいと感じてしまうの?脳科学者の中野信子さんにお話を聞きました。
〝うらやましい〟気持ち、実は2つの種類があるんです
「嫉妬=jealousy」
もともと自分が持っていたものを奪われそうな時に感じる
嫉妬とは「自分が持っているものを誰かが奪いにやって来るのではないか」と感じる時に起こる不快な感情です。哺乳類の赤ちゃんが母親のお乳を取り合う場面で自分を有利にしようとする働きがこの情動の原型とされ、人間を含む哺乳類に先天的に備わっていると考えられています。たとえば「結婚寸前の彼を誰かに取られるのではないか」とか「入社してきた若くて仕事のできる後輩に自分のポジションが奪われるのではないか」という状況が生じた場合、多くの人には嫌な感情が起こるでしょう。そして、そのリスクを最小にするため、相手をけん制したり、必要な情報をわざと与えなかったりという行動をしてしまうことがあるでしょう。
「妬み=envy」
自分と近い属性で「自分より上」と思っている存在に感じる
「自分がそうなってもいいはずなのに、なぜかあの人だけいい思いをしている」という感情が妬みです。妬みは人間だけが持っている感情で、より社会的で関係依存的。みなさんが友人や同僚に抱く〝うらやましい〟という気持ちはこちらに分類されます。妬みの気持ちを強めるのは同期、年齢が近い、性別が同じなど、要素が近かったり、類似性が高い場合。「相手が手に入れているものが、自分にも手に入りそうだ」「私にもあれくらいできたのに」という気持ちが起こると、妬みを強く感じます。逆に手の届かない存在だったり、あり得ないほどすごいものを手に入れている場合は妬みは起こりにくく、憧れという感情になります。
お話をお聞きしたのは…
中野信子さん
脳科学者、医学博士、認知科学者。脳や心理学をテーマに人間社会に生じる事象を科学の視点からわかりやすく解説した著書やコメントが多くの支持を集める。嫉妬する感情について取り上げているヤマザキマリ氏との共著『生贄探し 暴走する脳』(講談社+α新書)をはじめ、著書多数。
イラスト/島 タイガー 取材/加藤みれい 再構成/Bravoworks.Inc
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