「よく目にするけれど実は読めない言葉」とか、「よく聞くけれど実は意味がわからない言葉」ってありませんか? 人に尋ねるのはちょっと恥ずかしいし、あとで調べようと思っていても結局はそのまま、ということになりがちです。そのような言葉の多くは、専門用語や学術用語を別にすれば、「教養が試される大人の言葉」というくくりになるのではないでしょうか。そんな言葉を集めてみました。
1.「須く」
最初は、「学生は須く勉学に励むべきだ」のように使う「須く」です。これは漢文由来の言い回しなので、高校時代の漢文の授業が思い出されるという人もいるのではないでしょうか(そう、「再読文字」です!)。常用漢字「須」には「必須」のように音読み「ス」がありますが、ここでの訓読み(表外読み)は何でしょう?
正解は「すべからく」でした。見出しには「須く」を挙げましたが、「須らく」と送る場合もありです。問題なのは意味です。似た副詞「すべて」にひかれて「全部・ことごとく」という意味だと誤解している人はいませんか? 「須く」という副詞は、必ず「……べし」という助動詞とセットで使いますので、「当然のこととして……すべきだ」という意味になります。注意しましょう。
2.「然は然りながら」
次は、「犯行には同情の余地がある。然は然りながら、罪は罪だ」のように使う「然は然りながら」です。まず、何と読みますか?
正解は「さはさりながら」です。どういう意味だかわかりますか? まず、「然(さ)=そのように」という副詞があります。「さほど悪くはない」「さぞかし楽しかったでしょう」の「さ」です。これに動詞「あり」が結びつくと、複合動詞「然(さ)り」となり、「そのようである」という意味を表わします。助詞「ながら」は「~ではあるが」と逆接の意味を加えますので、「然は然りながら」となると、「それはそうだが」と肯定しつつ、「とはいえ、こうとも言える」と異論を付け加える時に使います。つまり、肯定の後に否定を加えるための「前置き」です。覚えておくと、使える言葉ではないでしょうか。
3.「吝かではない」
最後は、「協力するに吝かではない」のように使う「吝かではない」です。さて、何と読みますか?
正解は「やぶさかではない」でした。「吝」は常用漢字にはありませんが、「吝嗇(リンショク)=ひどく物惜しみすること・けち」という言葉を聞いたことがあると思います。この「吝」ですから、「吝嗇」という熟語意味は同じ。これを「ではない」で打ち消すわけですから、「事をするにあたって、その努力を惜しまない・思い切りよくする」」という意味になります。「しぶしぶ・いやいや」ではなく、「喜んで・積極的に」する意思があるケースで使う言葉ですので、使い方を間違うと誤解を受けます。気を付けなければならない言葉の一つと言えるでしょう。
いかがでした、読めてはいても、正確な意味を知らなかった言葉もあったのではないでしょうか?読み方や意味がわかるようになったら、そのうち自分でも会話の中に使ってみましょう。格調の高い「大人の会話」になりますよ。
では、今回はこのへんで。
《参考文献》
・「知らない日本語 教養が試される341語」(幻冬舎)
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「古語林」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)