女性が一生独身だった場合のお金の問題|①やっぱり老後に2000万円必要?

男女ともに「一生一度も結婚しない人」の数が増えている中で、もし自分がずっと独身で生きていくなら、どれくらいのお金が必要なのか知っておいて損はありません。今からどんな準備をすればいい?という疑問を、全3回にわたって専門家にお聞きしました。

女性が一生独身だった場合のお金の問題|①やっぱり老後に2000万円必要?

女性が一生独身の場合も「老後2000万円」必要?

よく知られている「老後2000万円」という数字は「世帯主が65歳以上の無職の夫婦」のある1年間の平均的な収入と支出を元に金融庁が算出したもの。この場合、収入より支出の方が月約55,000円多く、仮に30年分で計算すると約2000万円の赤字になります。つまり「老後2000万円」は夫婦の場合の金額であり、女性が一生独身だった場合には必ずしも当てはまりません。また、この数字の元になっている’17年は1カ月の赤字の金額が約55,000円でしたが、’19年は赤字が月約28,000円、’20年は約2,400円と年によって数字に振れ幅があることから、老後に必要な金額は2000万円とは必ずしも言い切れないのです。一番大切なのは、実際に自分自身が受け取れる年金の金額を「ねんきんネット」などで確認することと、「老後これくらいは欲しい」という金額を計算しておく=収入と支出のシミュレーションをしておく必要がある、ということです。欲しい金額が年金より少ないなら、その金額を今から準備しておく必要があります。

「老後2000万円」の問題提起を行った当時のレポートには、世帯主が60代後半の2人以上世帯の平均金融資産は2000万円を超えているというデータも併せて紹介されていました。ということは、蓄えのある人がそのゆとりの資金から旅行やレジャーなど生活の潤いに必要な支出を行ったり、2000万円の赤字を補填していた可能性もあるわけです。つまり、老後にゆとりのある暮らしをするには生活費が赤字にならないというだけではダメということ。老後のマネープランには生活費以外の楽しみにかかるお金も含めてシミュレーションするのがお勧めです。

独身女性が老後に必要な生活費は?

それでは実際に女性が一生独身だった場合、老後にどれくらいのお金が必要なのでしょうか。総務省が’20年度に調査した家計調査では「65歳以上・女性・単身者」の支出の平均は月に約14万円。一方、収入は会社員だった場合の厚生年金だと月の受取額の平均が約10万円(注※令和元年度 厚生年金保険・国民年金保険事業の概況)。支出との差額が4万円の赤字となるので30年間で計算すると1,440万円不足となります。フリーランスなどの国民年金の場合は女性の月の受取額の平均は約5万円(注※上と同じ)、差額が9万円なので30年間で3,240万円の赤字となるため、セカンドライフの対策がより重要となってきます。

ちなみに月14万円の生活費のうち、主な内訳の平均額は食費35,000円、住居費13,000円、光熱費13,000円、家具家電の経費が6,000円。住居費が少ないのは持ち家の人が9割で、維持費のみとなっているためだと考えられます。なので賃貸ならば、さらに住居費がかかると予想されます。

「いつか結婚するかも」と思っている人のほうがお金の計画が甘い?

「一生独身かもしれない」と思っている人は、将来のお金の対策がしっかりとできている人も多く、実際にそれほど困らないことも多い印象です。むしろ気をつけたいのは、「いつかは結婚するかも」と思っている人。「一生独身で生きていく」という将来をリアルに考えていないため、お金の見積もりが甘いことがあります。結婚か、一生独身か、どちらになっても困らない対策をしておくことが重要で、「一生独身で生きていく」ことを前提にシビアに見積もっておいたほうが安心。それでもし結婚したとしても、余裕があるぶんには問題ないですよね?

また、結婚したとしても離婚する可能性もあります。厚生労働省がサンプルとして出す夫婦2人の年金受給額は月約22万円ですが、妻が専業主婦だった場合、自分名義の年金は月6万円程度になることも。つまり離婚したら、自分の手元のお金は一気に少なくなってしまいます。「一生独身」「結婚」「離婚」、どの選択になったとしても安心して暮らしていくために、女性は自分自身の収入をしっかりと持っておくことが大切です。女性は寿命も長く、高齢女性の貧困はすでに社会問題となっています。会社員の人は自分名義の年金をより多く受け取れるよう、少しでも現役時代の収入を上げていくこと(年収だけではなく働く期間を延ばし累積収入を増やすことも含む)が大切。フリーランスの人は年金額が収入で変わることがないぶん、NISAやiDeCoなどの税制口座など使える制度をフル活用して自分で手厚い老後対策を備えることが重要になります。こちらは第2回、第3回の記事で説明していきます。

支払った年金は約7年で元が取れる! 70歳から受け取り開始にすれば42%増!

若いうちは年金を払うのがもったいないと感じたり、負担に思う人も多いと思いますが、実は年金の支払総額と受給額を比較すると元が取れることも多いんです。会社員の場合の厚生年金なら元が取れるまで7年と意外に早く、フリーランスなどの国民年金の場合は10年程度の計算になります。また、年金の受け取りを1カ月遅らるせごとに受給額は0.7%増加し、最長で70歳まで5年間遅らせることで42%増となります。さらに’22年の4月からは75歳まで遅らせることができるようになり、10年遅らせた場合はなんと84%増!

「私は長生きしそう」という人はこの制度を利用してもよいかもしれません。ちなみに前倒しでの受給開始も可能で、その場合はひと月前倒しするごとにマイナス0.5%となり、5年間でマイナス30%に。’22年4月からはひと月マイナス0.4%になるので5年でマイナス24%となります。前倒しで受け取りを始めた場合は、その時に減額された金額が一生続くので要注意。前倒し、後ろ倒し制度はともに1カ月単位での申請が可能です。

お話をお聞きしたのは



風呂内亜矢さん ファイナンシャルプランナー

26歳の時、貯蓄80万円しか持たずマンションを衝動買いしたことをきっかけに1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®を取得。現在は株式、外貨預金、投資信託、不動産の家賃収入で資産を運用。テレビ、新聞、雑誌のほか『つみたてNISAの教科書』(ナツメ社)などの書籍や、vlogを交えたYouTubeチャンネル『FUROUCHI vlog』にてお金に関する情報を発信。

監修/風呂内亜矢 イラスト/二階堂ちはる 取材/加藤みれい 構成/中畑有理(CLASSY.編集室)

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表紙モデル:山本美月

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