コロナ2回目の夏も終わろうとしています。間もなく2学期が始まり、大学受験を目指す高校生にとっては、受験勉強の後半戦がスタートすることになります。今回は、これまでにも何回か特集した、「大学受験によく出る漢字」からの出題です。入試頻出語ではありますが、日常生活でも目や耳にする機会があり、かつ読めなかったり、読み間違いをしやすかったりするものを選んでみました。
なお、大学入試で出題される漢字は、原則として「常用漢字2,136字」の範囲内ですので、今回の出題もその範囲内に限っています。それでは、もう何年か前に、受験を「卒業」した皆さんも挑戦してください。
1.「言質」
最初は、「言質を取る」のように使われる「言質」です。ビジネスや政治の世界ではよく聞く言葉ですね。「あとで証拠となる約束のことば」という意味です。さて、何と読みますか?
正解は「ゲンチ」です。「ゲンシツ」「ゲンシチ」と読んだ人はいませんか。一部の辞書によっては「慣用」と表示しているものもありますが、これは、誤読(間違った読み方)から生じたものです。やがて広く認知されるかもしれませんが、現時点では誤読と判断されるケースが多いと考えられますので、正しく「ゲンチ」と読みましょう。
2.「寡聞」
次は、「寡聞にして存じ上げません」ように使われる「寡聞」です。さて、多くは謙遜(けんそん)して、「知識や見聞が狭い」という意味で使います?
正解は「カブン」でした。「寡」も「聞」を読み間違える可能性がありますね。「寡」は「少ない」の意味を持つ漢字。反対の意味の漢字を重ねた熟語「多寡(タカ)」もよく使いますね。「寡」の字は「募集」の「募」と似ているので、書き取りのミスの定番です。下の部分が「刀」と「力」と違うので、ここがポイントです。「聞」の音読みは、呉音の「モン」と漢音の「ブン」がありますが、古い読み方の「モン」のほうが少数派で、「前代未聞」や「奏聞(ソウモン=天皇に申し上げる)」など特定の語に限られます。
なお、「カブン」のよく聞く同音異義語に、「過分のおほめにあずかる」の「過分」があります。覚えておきましょう。
3.「建立」
最後は、「寺院を建立する」などと使う「建立」です。普段自分で使うことはなくても、観光地で訪れた寺社仏閣などのガイドや、説明看板などではよく見かけますね。意味は、もちろん「寺院・堂塔などを建てること」ですが、さて何と読みますか?
恐らく、読み間違いは、「ケンリツ」のみではないでしょうか。学校のテストではそうです。正解は「コンリュウ」です。
「建」の音読みは、呉音「コン」と漢音「ケン」の二つがあります。呉音は日本にもたらされた経緯から、仏教関係の言葉に多い読みですので、「寺院・堂塔」とくれば「コン」ですね。また、「立」の音読みには「リュウ」と「リツ」の二つがありますが、実は、「リュウ」のほうが本来の正しい読みで、現在ほとんどの熟語で読まれる「リツ」は、日本での「慣用」の結果に生まれた読みなのです。「粒」「笠」などの漢字の構成部分には「立」が含まれますが、その「粒」「笠」の音読みは「リュウ」であることから、もともと「立=リュウ」であったことがわかります。
ちなみに、「建て直す」という意味の「再建」という熟語は、一般的には「サイケン」と読みますが、仏教建築での「再建」は、この「建立」と同じく「サイコン」と読みます。
では、今回はこの辺で。
《参考文献》
・「新明解国語辞典 第八版」(三省堂)
・「明鏡国語辞典 第三版」(大修館書店)
・「新字源」(角川書店)
・「頻出入試漢字コア2800」(桐原書店)
文/田舎教師 編集/菅谷文人(CLASSY.ONLINE編集室)