登場するたびにツイッタートレンドとなった朝ドラ『おかえりモネ』のりょーちんこと、永瀬廉さん。母を亡くした癒えない悲しみを抱えながら、不幸から立ち直れない父を支え懸命に前に進もうとするりょーちんに日本中が涙したのも記憶に新しいところ。永瀬さん本人の魅力も全開だった『あさイチ』出演とともに、辛酸なめ子さんに振り返っていただきました。
永瀬廉めあてで見続けた『おかえりモネ』
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』を永瀬廉めあてで、5月から毎朝のように観ていました。金髪で赤い服を着がちな及川亮は、太陽のような存在感で見るたびにまぶしくて目が覚めます。初登場は第2週。漁師として漁港で働いている亮が主人公・百音の妹、未知と立ち話している時、車が近付いたらさっと未知を引き寄せる、気配りシーンに琴線が震えました。
亮はイケメンなうえ、視野が広くて優しくて、適度にチャラくて色気があってとにかくモテる青年、という設定。未知にも好意を持たれていて、幼なじみの明日美からは幼稚園から年1で告白されています。亮にとって未知は妹のような存在で、明日美はただの幼なじみのようですが……。ドラマの中で誰かと恋が芽生えることはあるのでしょうか。
第3週「故郷(ふるさと)の海へ」で百音が祖母の初盆で故郷に帰るターンでは、永瀬廉演じる亮がたびたび登場。20歳前後の幼なじみが集まるシーンには青春のリア充エネルギーがうずまいていました。それにしてもこの幼なじみのグループ、女子がヒロインの永浦百音(清原果耶)をはじめとして、明日美(恒松祐里)、未知(蒔田彩珠)、と性格もルックスもレベルが高すぎです。そんな中誰とも付き合わず、色気を振りまいているだけの魔性の青年、亮。彼の一挙一動から目が離せません。百音の家に集まって、ただラフなハーフパンツ姿で座っているだけなのにオーラがすごい……。明日美には「色気ダダ漏れ」と言われていました(それがツイッターのトレンドワードに)。中学校の吹奏楽部時代の回想の場面も良かったのですが、何よりドキドキしたのは百音の家に皆で泊まった(雑魚寝とはいえ男女ゾーンは離れていて治安は乱れず)、翌朝のシーン。早く起きた百音が縁側に座っていたら、気づいたら横に亮がいて「どしたの」とささやいてきたのです。寝起きでこの距離感……絶対好きになってしまいますが、淡々と受け答えしている百音。それ以前に2人とも寝起きで顔が大丈夫な状態なのは若さ故の特権……。もし自分だったら、朝起きて人に見せられる顔になるまで20分はかかるかな、と思いを巡らせてしまいました。縁側で「浜、行かない?」と亮に言われて百音は浜辺へ。他の幼なじみも集まってきました。その後しばらく浜辺で遊んだりして、海風についてさり気なく知識を披露する亮が素敵でした。
金髪=りょーちんかと思いきや…
毎回、永瀬廉に出てほしいところですがストーリー展開上そうもいかず、出ない間は亮の幻影を追い求めてしまいます。たとえば赤いポロシャツが映ったので亮かと思ったら、百音の祖父(藤 竜也)だったり。金髪が見えたので、もしかして?と思ったら幼なじみの寺の息子の三生(前田航基)だったり、金髪キャラはほかにも百音がお世話になっているサヤカ(夏木マリ)もいて、金髪フェイントが多いです。亮が出ない間、何度も期待しては違ったというシーンがあって訴求力が高まりました。
亮の父、及川新次(浅野忠信)は人生の不幸があってから酒に溺れるようになります。酔って暴れて時々、警察沙汰に。そんな時に駆けつけるのは亮でした。父に酒を売らないように居酒屋に頼みに行ったりと、父親思いの亮。新次が何かやらかすと亮の登場シーンが来るかもしれない……と、いつしか浅野忠信頼みになっていました。
永瀬廉と別れると坂口健太郎に出会う世界線
気仙沼の実家から就職先の登米へと戻る百音が、途中で亮と遭遇。父のことで悩んでいるようなシリアスな表情の亮に「なんもできないけど、メールとか電話とか聞くから」と百音が声をかけると、「そういうの、おれやっぱいいわ」と断る亮。観ていて、勝手に軽く失恋したかのような気持ちになってしまいましたが、自分のことは自分でなんとかする、という男気だったのでしょうか。その時の百音のリップが、いつもとは違うグロッシーな輝きだったのが印象的でした。色気ダダ漏れ男子と遭遇したことによる、身体反応だったのかもしれません。それにしてもせっかくの連絡を取り合うチャンスを……とモヤモヤしましたが、百音が乗り込んだバスには登米のクールなイケメン医師、菅波(坂口健太郎)が。永瀬廉と坂口健太郎、どちらを選ぶかという究極の夢の選択肢が広がっている百音が羨ましいです。
第8週、ついに〝亮フラグ〟が立ち…
第5週「勉強はじめました 」、第6週「大人たちの青春 」、第7週「サヤカさんの木」は森林組合の仕事や気象予報士試験に奔走する百音の様子が描かれ、亮の気配はありませんでした。イケメンの穴はイケメンでしか埋められないので坂口健太郎との勉強シーンで心を癒しつつ、永瀬廉の登場に備えます。このドラマの中で百音は何カ月も亮に連絡を取っていなさそうですが、あんなイケメンが身近にいてそんなもったいないことがあるとは……。幼なじみなのでしばらく会っていなくても、会えばすぐ距離感が縮まるのかもしれません。
歓喜の足音が聞こえてきたのは、第8週「それでも海は」。2015年の年末 、3度目の気象予報士試験の準備をしながら久しぶりに故郷に帰る百音。亮の父、新次が複数の借金を抱えたうえに酒浸りで、百音の実家に厄介になります。亮フラグが立った……と思ったらついに庭先に現れた亮! 赤いトレーナーで佇んでいて、窓越しでもオーラがダダ漏れです。亡くなった妻を思いメソメソしている父を見て「よっしゃあ、一曲歌うか!」「なあ、おやじ!おやじ!」と励ますように声をかけ、生前母が好きだった歌を歌おうとする亮。King & Princeとは全く違うテイストの曲ですが、心にしみ入る力強さがありました。その日、百音の家に泊まった亮。翌朝、また縁側で「おはよう」と寝起きトークする亮と百音。縁側プレイにときめきつつ、亮のワイルドな寝グセに萌えるシーンです。幼なじみが集まると、精神的に誰よりも達観している亮は「俺らが! 前を向くしかないんだ! 」と、大人の入口で迷う仲間たちを励ますのでした(この時は黒髪にチェンジ)。
性格と新陳代謝、両方の良さを感じた『あさイチ』
続いて、及川亮を演じる永瀬廉が『あさイチ』に出演。今回の役はオーディションで勝ち取ったこと、全角度国宝級イケメンと称されていること、ドラマの幻のメイキング映像(使われなかった未知への頭ポンポンシーンなど)などが紹介されました。常に優しくて気配りを忘れない亮のことを「僕自身はそういうタイプの人間ではないので……」「すごいっすよ、りょーちんは。羨ましいくらい人としてできあがってる」などと語っていた永瀬廉。「浅野さんが腰が低すぎて地面に埋まりたかった」など、ご本人も十分謙虚でしたが……。番組中、照明に反応してか顔に汗が流れていて、活発な新陳代謝を感じさせました。リクエストに応え、全てのカメラに向かってキメ顔をするというサービス精神も発揮。視聴者の「最近ハマっている食べ物は?」という質問には「ひじきです」と答え、1日3~4パック食べたりすることもあるそうです。これでひじきはしばらく売れまくりそうですが、ミネラル豊富なひじきを食べると新陳代謝が活発になり、長生きすると言われています。日本の元祖スーパーフード。永瀬廉に長生きしてほしいのはもちろんですが、ファンの女性たちが彼の影響でひじきを積極的に食べることで皆健康になれるという……。やはり彼は世の女性を心身ともに幸せに導く存在です。
辛酸なめ子
イケメンや海外セレブから政治ネタ、スピリチュアル系まで、幅広いジャンルについてのユニークな批評とイラストが支持を集め、著書も多数。近著は「辛酸なめ子の世界恋愛文学全集」(祥伝社文庫)、「女子校礼賛」(中公新書ラクレ)、「電車のおじさん」(小学館)、「新・人間関係のルール」(光文社新書)など。