連続ドラマの原作となった小説『サバイバル・ウエディング』の著者が、婚活してみたら…。Over40こじらせ男子の奮闘記をお届けします。
結局、結婚できませんでした…
残念ながら今回が最終回となります。とうとう運命の女性が現れて、ついに結婚が決まりました!本来であればそんな終わり方をしたかったのですが、結婚できないどころか、その兆しすら見えないまま終わってしまいました。期待していただいた読者の皆さま大変申し訳ございません。このこじらせ奮闘記を始めて一年と数カ月がたちましたが、先日、朝起きたら肩が痛くなり、近所の整骨院に行ったら「五十肩」と診断されました。精神だけでなく肩までこじらせる始末です。今は五十肩に効能のある温泉を探しております。「男子」どころか「おじいちゃん」です。
さて、そんな最終回ですが、僕から女性読者のみなさまに、ぜひ、伝えておきたいことがあります。それは、僕以外の男、ほぼ全員が結婚しているということです(少なくとも僕の周りでは)。結婚という制度は、はるか昔に作られた制度 で、現代においては、自由を奪い、責任を課せられ、わずらわしいことがたくさんあります。さらに、いくらでも先延ばしにできてしまいます。にもかかわらず、みな結婚しているのです。「恵比寿王に、俺はなる!」と言って、恵比寿横丁を練り歩いていた友人でさえも、今では「嫁と子供とイオンに行くのも楽しい」と言っておりました。着てる服もすべてイオンでした。意外に男は、倫理観、責任感を持ち合わせているのだと、独り身の僕は思うのです。なので、もしあなたが結婚できず困っているのであれば、男はなんだかんだ言って結婚するということを覚えておいていただければ幸いです。しかしながら、僕がこういうことを言うと、女性のみなさまは「(婚活しても)もう、ヤバい男としか出会わないんだよ!」とブチギレるかもしれません。
そんなあなたに「ヤバイやつ日本代表」の僕から言わせていただくと、男は恋愛を学ぶ機会が少ないということを、ぜひわかってほしいと思います。義務教育に「恋愛」の授業はありませんし、兄弟が男しかいないと、話せる女性はお母さんのみになってしまいます。学校で恋愛の話をできるというのは、学校のヒエラルキーの中でも特権階級の人のみに許されるので、女性とのコミュニケーションは、自称モテる先輩がAVや漫画から仕入れた間違った情報を吹き込まれることになるのです。
さらに、男は女性をリードしなければいけないという思想も遺伝子へプリインされています。そんな環境に育ったら、女性とどうコミュニケーションしていいかわかりません。そんな男性が、たくさん生み出される社会構造になっているのです(文科省に改善してほしいです)。ですから、婚活をしていて、誰か男性に会ったときに「こいつ自慢ばかりするな」「こいつ生理的に受け付けない」と恋愛対象からばっさり切らずに、どうかその生理を少し遅らせてもらって、「ああ、コミュニケーションを習ってこなかったのね」「教えてやろうじゃないの」と、あたたかい気持ちで受け入れてやってもらえないでしょうか。そしてもうひとつお伝えしたいのは、もうみなさんわかっていると思いますが、結婚したら誰もが幸せではないですし、結婚しなかったら不幸とも限らないということです。どうか「結婚=幸せ」という、古い価値観の社会的刷り込みによる、思考停止の罠にはまらず、人生を選択していただければと思います。どっかのえらい先生が「人間だけが自分の人生を変える意志を持った生物」だと言っておりました。
ですから、誰かが決めた価値観で生きるのではなく、より良い人生にしようと自分で行動を起こし、前に進む。それが、うまくいかずに傷ついたときには、身近な人に悩みを打ち明け、エネルギーを充電する。そのために、普段から自分の周りの人に愛情を注ぐ。これが真の婚活なのではないでしょうか(…と結婚できない男が言っております)。
さて、そんなわけで、最後になりましたが、読者のみなさま、僕のような者の駄文を読んでいただきありがとうございました。またどこかでお目にかかれる日を楽しみにしております!
この記事を書いたのは「大橋弘祐」
『文庫版 サバイバル・ウエディング』文響社¥680
大橋弘祐(おおはしこうすけ)
作家、編集者。 立教大学理学部卒業後、大手通信会社を経て現職に転身。初小説『サバイバル・ウェディング』が連続ドラマ化。
『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』はシリーズ40万部を超えるベストセラーに。
撮影/小田駿一